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新垣結衣&田中圭のキスが話題に 『獣になれない私たち』優しさが首を締める恋愛の怖さ

リアルサウンド

18/10/18(木) 14:15

 すべての仕事を1人でこなしていることに業を煮やした晶(新垣結衣)は、クラフトビールバー「5tap」で見かけた“本能のままに生きる”呉羽(菊地凛子)のブランドを身にまとい、武装した形で社長・九十九(山内圭哉)に業務分担の改善要求書を突きつけた。10月17日に放送された『獣になれない私たち』(日本テレビ系)第2話では、九十九が出張の間、晶が有給を取ることになる。

参考:新垣結衣&田中圭【写真】

 今回のエピソードで最も印象的だったのは、やはり話題のキスシーンを含む晶と京谷(田中圭)のなれ初めと、2人が今抱えている朱里(黒木華)の問題だろう。一目惚れができないという晶は、京谷の会社に派遣社員として務めていた際、彼と過ごす時間が増えていくにつれ、京谷に心惹かれていく。

 子供のころに父親から虐待を受け、さらにマルチ商法にハマった母親とは絶縁状態だという晶。子供にとって絶対的存在である親から危害を加えられるのは、「死」と同等の意味を持ち、晶を含む被虐待児は生きるために相手の顔色をうかがう傾向がある。傷つかないように心の周りに、レンガのように厚く重い壁を作っていくのは生きる上で当然のこと。晶の壁は人よりはるかに立派なもので、彼女が人との関係を築くにあたり、石橋を叩いて渡るような慎重さを発揮するのは、幼少期から続く辛い経験が発端にあるのだろう。

 では、なぜ晶は京谷と結ばれたのだろうか。それは、単純接触効果と呼ばれる心理効果が関係していると考える。単純接触効果とは、アメリカの心理学者ロバート・ザイアンスが提唱したもので、何度も接触していくうちに、相手への警戒心が薄れ、好感度が高まっていくというものだ。

 送別会やバーベキューの様子を見ても、晶は周りから愛されてはいるものの、2年間務めた中で、特別仲を深めたのは京谷しかいなかった。愛想はいいが、無意識のうちに警戒心が働いてしまい、踏み込めなかったのだろう。だから晶が、ともに残業を乗り越え、仕事の成功を独り占めせず、晶にもスポットライトを当てる気配り上手な京谷を好きになったことは何も不思議なことではなかった。

 しかし一方で、晶の心の壁を打ち破った京谷の優しさが、彼女を苦しめることにもなっている。まだ晶が派遣社員をやめる前に、京谷が付き合っていた彼女・朱里の存在だ。仕事のせいで心を病んだ朱里が離職できるように、当時、一時的に部屋を貸した京谷。しかし別れてから4年間も再就職することなく、朱里は京谷の部屋で引きこもり状態を保ち続けている。

 でも本作の不思議なところは、各キャラクターのダメなところが妙に共感できてしまう点だ。朱里は、京谷が4年前に放った「仕事が決まるまでここにいていい」という言葉にいつまでも甘えている。しかも、居候させてもらっている身で、京谷から正論を言われると逆ギレし、挙句の果てには悪いのは京谷だと面と向かって言い放つ。ただそんな朱里の言動は「クズ」の一言で終わらせられるものではない気がする。

 社会に出て働いた朱里に何があったかは今のところわからないが、彼女の中に罪悪感というのは必ず芽生えているように見えるのだ。現に、京谷と言い合うときに彼女は涙をこらえながら訴える。どこで道を踏み間違えたのか。行き場のない怒りや悲しみを、優しい京谷にぶつけるのは、自分の精神を保つための一種の危機回避なのだろう。

 そう考えると親からの虐待により人との間に壁を作った晶と、社会の辛さに直面し外界との壁を作ってしまった朱里は、心なしか似ているように思える。どちらも心に弱い部分を抱えている2人。そんな彼女たちを放っておけない京谷の優しさが、2人の首を絞めているのが心苦しい。

 だからこそ、京谷と真逆な毒舌男・恒星(松田龍平)と晶の組み合わせは案外面白いのかもしれない。「5tap」で偶然出会い、日も浅い中で、晶は恒星に武装することなくそのままの姿で物申す。ただ、毒舌とは言え恒星は冷酷なわけではなく、表現方法を知らないだけで人を思いやる心は大きい。出会いからこんなに短期間のうちに、呉羽の言う恋に落ちるときに聞こえる鐘の音を、2人で探しに行く姿を見ると、恋、および信頼関係に重要なのは優しさや時間ではなく、本音でぶつかり合えるかどうかな気がしてくる。前述した単純接触効果にもデメリットがあり、恋に落ちるまではいいのだが、付き合ってからの相手の真の姿に落胆するパターンもあるようだ。

 さて、晶の有給が終わり、九十九も出張から帰ってきたラストシーン。九十九は出張中大いに反省したと謝罪し、晶は期待に胸を膨らませるが、九十九から提案されたのは「特別チーフクリエイター」への昇進だった。業務内容は追々とのことで、またいつもと変わらぬ毎日が始まる予感。給料がアップするだけいいかもしれないが、晶が心の底から幸せだと思える日々はまだまだ遠いようだ。(阿部桜子)

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