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『MUSIC UNITES AGAINST COVID-19』発起人 toe山㟢廣和氏が語る、ライブハウス支援に込めた願い

リアルサウンド

20/5/4(月) 10:00

 新型コロナウイルス(COVID-19)の影響で収益が得られなくなってしまった全国120カ所以上のライブハウスと連携し、支援するプロジェクト『MUSIC UNITES AGAINST COVID-19』が4月19日にスタートした。

 このプロジェクトに伴いローンチした特設サイトでは、全国にある登録ライブハウスの中から、自分が応援したいライブハウスのECストアを検索/選択し、「MUSIC UNITES AGAINST COVID-19 フォルダ」のアクセス権をダウンロード購入することで各ライブハウスを直接支援することができる。価格のバリエーションは500円、1,000円、2,000円、5,000円と10,000円の5種類があり、自分が支援したい金額を選んで購入可能という仕組みだ。フォルダの中にはこのプロジェクトに賛同したバンド、ミュージシャン約70組が提供した楽曲データが収められており、アクセス権を購入した支援者は期間内(2020年6月末日まで)、好きなときに聴いて楽しむことができる。未発表曲や新曲のデモ、ライブバージョンなどアイデアとバラエティに富んだ音源が短期間で集められた。

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 ライブハウスに対して、「できるだけたくさんの現金を集めて素早く手渡す」ことをテーマにした同プロジェクトの発起人・toeの一員である山㟢廣和氏(Gt)にインタビューし、同プロジェクトの特徴や目標などを聞いた。プロジェクトやサイトの仕組み、山嵜氏がライブハウスに抱く思いを話してくれている中で、“アーティストとリスナーが、ライブハウスで会う未来を想像して一致団結できるのが「支援」の意義”なのではないかと感じさせられた。(編集部)

「何か支援の力になりたい」というそれぞれの思いを繋ぐ窓口に

ーーまずはプロジェクト立ち上げの経緯から教えてください。

山嵜:最初はtoeの中でも僕が支援プロジェクトをやろうと決めました。バンドをやっている人のほとんどがライブハウスで演奏をしてきていて、今回のコロナの影響で確実にライブハウスが打撃を受けている現状が目に見えていたし、何かしら支援をしたい気持ちは僕も含めてみんなあったと思います。ただ、ライブハウスという業態自体が横のつながりがなくて、協会や組合もなく一枚岩ではないので、一箇所でクラウドファンディングをしてお金を集めても、分配のしようがないという問題が一番にありました。反応が早い人たちは早い段階からライブハウスごとにクラウドファンディングを立ち上げたり、バンドが懇意にしているライブハウスで投げ銭ライブをすることなどで支援はできていたと思うんですが、僕としてはそれとはまた別にもう少し大きな意味で支援するやり方がないかと模索して始めました。

ーー約70組以上のアーティストにはどのように声をかけていきましたか?

山嵜:バンドも数多くいるので、toeのメンバーで直接連絡を取れるアーティストに限って100組ほどのアーティストに声をかけさせてもらいました。プロジェクトを立ち上げてから発表するまでの期間は2週間ほどしかなかったのですが、楽曲をドネーションするにあたり著作権の問題もあったので、そこの問題をクリアにしてくれたり新曲を作ってくれたり、多くの方々に賛同・協力してもらうことができました。アーティストによっては事務所との契約で個人的な活動ができない方もいましたが、参加してくれた人もできなかった人も含めて、「何か支援の力になりたい」という気持ちが伝わりました。

ーー2週間という期限の中で、アーティストの皆さんも反応が早いですね。

山嵜:そうですね。僕らとしては、声がけの段階から「アーティストのプロモーションにはなりません」と説明していて、特設サイトの各アーティスト名も紹介文はつけずに賛同者として並べているだけなんです。それでもやはりみなさんやるからにはクオリティの高い楽曲を提供してくださって、嬉しいですね。結局アーティストのみんなも、僕が最初に「どうすればいいか」を考えていたように、支援はしたいけど窓口がなかったということが大きかったので、その窓口を今回作ることができたのかなという気はしています。

ーープロジェクトスタート後の1週間での反響をどう受け止めていますか?

山嵜:普段僕たちの情報を発信してくれている音楽媒体のみでなく、新聞なども取材をしてくれていて、反響の大きさは実感しています。オフィシャルのHPやTwitterを作ったんですが、僕は発信するだけで精一杯なので、たくさん質問をいただくんですが、全然応えられていなくて。人手不足なのでケアが足りない状況ですが、SNSは僕らができる唯一の宣伝なので、発信し続けていくことが活動の広がりになっていくと思っています。SNSでは「お金を一カ所で集めて分散すればいいのに」という声をたまにいただくんですが、最初に話したように、ライブハウスは横のつながりがなく分配が難しいため、現状では今の方法が僕たちの理想とする支援の形に近いのかなと思います。

ーーライブハウスごとのクラウドファンディングなども行われていますが、今回の支援プロジェクトの大きな特徴は?

山嵜:やはり各ライブハウスごとに窓口を作っている“まとめサイト”に近い構造になっているところでしょうか。会場ごとに差はあるかもしれませんが、支援した人は確実に自分が選んだ店舗にお金を届けることができるので、お互い気持ちいい方法かなと思います。自分が支援したいところに自分が選んだ金額を入れるという最後の1ステップを支援者に委ねることで、不透明さを解消したいという気持ちがありました。実際にはマンパワー的な問題もあって、もし僕たちがお金を集めて分配しますといっても結局は人手も足りないし手数料や手間もかかってしまう。あと、今回はクラウドファンディングではないので、支援されている側がリターンをしなくていいんですよね。このプロジェクトにおいてはライブハウスはSTORES.jpでECストアを開設してもらう手間だけなので、その辺りは色々考えた方法の中でもメリットの一つかなと思います。

ーー支援する側にとってもサイトの仕組みなどわかりやすいと感じました。

山嵜:ありがとうございます。観客であるみなさんもそれぞれ「ここは無くなって欲しくない」という思いもありますよね。今はライブハウスが本当に大変で、収入は0だし家賃やスタッフのお給料をどうしようというレベルなんですが、そんなときに「購入されました」という直接のメールを通して支援者の気持ちが届くわけじゃないですか。そうするとライブハウスも、これだけの人がサポートしてくれているんだというのが目に見えてわかるし、お金もどこにこのお金が入ってくるかがしっかりわかれば、何とかそれまで頑張ろうという気持ちにもなってもらえるんじゃないかなと思います。

できるだけライブハウスが潰れないように

ーー現時点での支援者数を教えていただけますか。

山嵜:一人で何件も支援できるシステムなので正確な人数は把握できないのですが、件数でいうと現在は延べ25000件(※4月28日時点)です。僕も初めての試みなので、この数字で凄さが伝わるのかはわかりませんが、ありがたいですね。

ーーオフィシャルコメントにもあった「ライブでしか得られない何か」をもう少し具体的な言葉にするとどんなものになりますか。山嵜さんにとってライブハウスでの思い出深いエピソードなどもあれば教えてください。

山嵜:僕に関して言えば、音楽自体をやりたいかどうかもよくわかっていなくて、ライブがやりたいから音楽を続けているところもあるんですよね。ライブに足を運んでもらうためには音源がないといけないから音楽を作っているし、どちらかというと音楽以上にライブが好きなんです。

 ライブの開催が難しくなってからは、無観客のライブ配信などアーティストもそれぞれ頑張っているけれど、それはやっぱりライブができない代わりに何とかしようと試行錯誤しているんですよね。昔でいう「コンサート」みたいにアーティストとお客さんが、“観る人”と“演奏する人”に分かれるのではなくて、ライブハウスは一つの場所に何百人も集まって、観に来た人もライブを構成する重要な一員で、騒ぐ奴がいれば盛り上がるし、大人しい人たちが多いとまた雰囲気も変わるし……バンドやアーティストだけで作り上げるのではなくて、関わっている人たち全員が関係している空気の中で演奏する空間は特殊だなと思います。若い頃はその空気感にものすごく憧れていたし、ライブハウスでしか起こりえない“グルーヴ”というものが絶対にあると思います。

 これまでのように気軽にライブができないかもしれないという状態で、以前の通常を取り戻せるかどうかもわからないけど、今はみんな本当に大変だから、またライブができる状況になったときに今までお世話になったライブハウスが潰れてしまうということがないように、という思いが一番強いですね。

ーーライブハウスがなくなることでアーティスト活動に及ぼされる影響はどんなことが考えられますか。

山嵜:それは、ライブハウスを元に戻して欲しいこととはまた別の考えですが、最悪の場合を考えると、表現方法は変わってくるのかもしれません。僕たちはバンドで食っているわけではないので(toeはメンバー全員がバンド活動とは別にそれぞれ本業を持っている)、商売を第一には考えていないんですよね。音楽の聴き方も、レコードがCDになったり、CDがデジタルになったり、ミュージシャン側の意向というよりはユーザーの形態やテクノロジーが変わってこそなので、表現方法のアウトプットとしてはミュージシャンが考えることでもないのかなという気はしています。だったら、アウトプットの方法がこれからどうなっていくのかを予想するよりも、自分に今できることは音楽を作って聴いてもらうことだけだし、今後の儲かる方法を考えるよりも、やりたいことの精度を上げていくことにシフトしていくことが大事だと現状は思っています。

ーーこのプロジェクトの最終的な目標は?

山嵜:“できるだけライブハウスが潰れないように”というのが率直な目標ですね。金銭面の支援が増えて、実際ライブができるようになるまではライブハウスに何とか頑張って欲しいし、今回の成果だけで補えるとは思いませんが、公的な補助が出るまでに少しでも力になればいいなと思っています。もちろん、個々のライブハウスやイベント会場でこの先もクラウドファンディングが立ちあがっていくのはいいことだし、僕たちも仲の良いライブハウスと今後できることがあればいいなとも思っていますが、今回に関しては個人的な思いよりも大きな括りでの支援がしたいと思って始めたので、今後もいろんな窓口ができていくといいですね。

『MUSIC UNITES AGAINST COVID-19』オフィシャルサイト

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