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サポートミュージシャンが広げる可能性:高井息吹、吉澤嘉代子ら作品でも発揮される君島大空の手腕

リアルサウンド

19/10/22(火) 12:00

 今年も数多くの才能ある若手アーティストが音楽シーンに台頭してきたが、男性ソロアーティストの中でとりわけ印象的だったのが、君島大空の存在だ。3月にリリースされた初音源となるEP『午後の反射光』では、歌とギターをはじめとするほぼすべての楽器、プログラミング、録音、ミックスまでを自ら手掛け、繊細かつドラマチック、幽玄でありながらエモーショナルな独自のサウンドスケープを展開し、その名前を知らしめた。

(関連:【写真】君島大空

 7月にはシングル『散瞳 / 花曇』を発表し、EPとシングルの両方に参加したドラマーの石若駿を含む合奏(バンド)形態でフジロックの「ROOKIE A GO-GO」に出演。また、ハイスイノナサ/Siraphの照井順政がプロデュースを担当し、楽曲の音楽的なクオリティの高さで注目を集めるアイドルsora tob sakanaに作詞・作曲・編曲を手掛けた「消えない呪文」を提供したり、9月には以前から君島にラブコールを送っていた崎山蒼志のシングル「潜水」のサウンドプロデュースを担当し、サイケデリックな世界観を披露するなど、多彩な活動が目立っていた。

 そんな君島の注目すべき点として、数多くの女性シンガーソングライターの作品やライブに関わっていることが挙げられる。その原点とも言うべきが、CMソングの歌唱などで知られる高井息吹が2017年12月に発表したアルバム『世界の秘密』。個人的にも、君島の名前をはっきりと認識したのはこの作品が最初だった。君島は彼女のサポートバンド・眠る星座のメンバーであり、アルバムではギター演奏はもちろん、コーラスからプログラミング、トラックメイクまでを担当して、高揚感と安堵感の同居する作風に大きく貢献。楽曲の軸となるのはあくまで高井の歌声とピアノだが、性差を超越し、光と闇を同時に描き出すような雰囲気は、君島自身の作品とも間違いなくリンクしている。なお、眠る星座のベーシストがKing Gnuの新井和輝であり、彼は君島の合奏のメンバーでもある。

 もう一枚、君島がギターで全面的に参加しているのが、元HAPPY BIRTHDAYの坂口喜咲が昨年6月に発表したアルバム『あなたはやさしかった』。君島は彼女のサポートバンド・シーパラダイスの皆さんのメンバーでもあり、今年9月に配信リリースされたシングル「犬と苺」にも参加。この曲のMVでは、サングラスをかけた、普段のイメージとは異なる君島の存在を確認できる。12月には「坂口喜咲とシーパラダイスの皆さん」としてのワンマンライブも予定されているが、このバンドのベーシストがKIの闇日本5000で、KIのドラマーのナイーブと石若が盟友関係にあるなど、周辺人脈の繋がりも面白い。

 高井と坂口の2人以外にも、7月には「プログレポップピアノ弾き語り」を自称する川﨑レオンの配信シングル『MUSIC / Nikko』に参加し、ここではギター以外に録音、ミックス、マスタリングまでを担当。また、9月に発表されたTAMTAMのボーカリストであるkuroの初のソロアルバム『JUST SAYING HI』では、R&B/ヒップホップ系のトラックメイカーに混ざって、「虹彩」のプロデュースを担当し、作品の重要なアクセントに。さらには、『7RULES』(フジテレビ系)のために書き下ろされた吉澤嘉代子の楽曲にも編曲で参加。2人は8月にライブでも共演を果たしていて、今後のさらなるコラボレーションに期待が募る。

 このように、君島はまだソロとしてのキャリアこそ浅いものの、すでに数多くの女性シンガーソングライターの作品に関わり、音楽家としての確かな手腕を発揮している。その分、自身は歌の力で勝負するシンガーソングライターに対するある種のコンプレックスも感じていたようだが、それでも現在の君島は替えの効かない自らの声と、自らの音を組み合わせることで、「個」としての表現を世に問おうとしている。11月には初の合奏形態でのツアー『君島大空合奏形態 夜会ツアー“叙景#1”』が開催され、石若と新井とともにフジロックに参加し、最近では中村佳穂バンドのメンバーとしても知られる西田修大と、やはり君島が作品に関わっているシンガーソングライターのタグチハナをコーラスに迎えた編成でライブが行われる模様。さらなる表舞台へと歩みを進める、その大きな一歩となるはずだ。(金子厚武)

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