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ギャスパー・ノエ監督が語る、『CLIMAX クライマックス』の舞台となった1996年と時代の変化

リアルサウンド

19/11/1(金) 18:00

 ギャスパー・ノエ監督最新作『CLIMAX クライマックス』が11月1日に公開となった。『カノン』(1998年)、『アレックス』(2002年)、『エンター・ザ・ボイド』(2009年)、『LOVE【3D】』(2015年)と作品を発表するたびに賛否を巻き起こすノエ監督が今回描いたのは、知らず知らずにLSD入りのサングリアを飲み、集団ドラッグ中毒に陥った、雪が降る山奥の廃墟に集まった22人のダンサーたちのカオスの一晩だ。

参考:音楽やダンスと同じ構造!? 『CLIMAX クライマックス』は観客を「今、この瞬間」へと没入させる

 1996年に実際に起こった事件にインスパイアされているという本作。プロモーションで来日を果たしたノエ監督に、1996年という時代設定の背景や、3度目のタッグとなったダフト・パンクのトーマ・バンガルテルとのコラボについて語ってもらった。

ーー今回の作品は1996年に実際に起こった事件にインスパイされているそうですね。1996年という時代設定にどのような思いを込めたのでしょうか?

ギャスパー・ノエ(以下、ノエ):1996年は今から約20年前ということになるけれど、そんなに昔という感覚にはならないよね。今のように携帯電話が普及する前の時代であるからこそ、このストーリーが際立つんじゃないかと思ったんだ。最近の映画の時代背景は、どれもそんなに違いがあるわけではない。一方、20年前はそこまで昔ではないけれど、今とはもう全く違う感覚。そういうことが、この映画を観た人に伝わるんじゃないかと思ったんだ。今は携帯電話があるから、どれだけ孤立しても、どれだけ危険な状況に陥っても、携帯を使って助けを求めることができる。だけど、1996年はそういう時代ではなかった。この映画は20年前の話だけど、これから20年後がいったいどういう状況になっているのかはわからない。20年後はそんなに遠い未来ではないけれど、人々の生活のあり方は著しく変化していくだろう。そういうことを考えながら、今回は自分が描きたかったものが1996年という時代にピッタリだと思ったんだ。

ーー今回の作品にはもちろん携帯電話は出てきませんが、映画の中で携帯電話を登場させるのにも懐疑的なのでしょうか?

ノエ:携帯電話は今や一般的なものになっているけど、僕は映画の中でそれを映すことにはそんなに魅力を感じない。ただ、時代設定が現代だったら、携帯電話を映さざるを得ないよね。そこはつねにジレンマに感じているんだ。なぜ映画の中で携帯電話を使いたくないかを説明するのは難しいんだけど、僕自身、実生活でも携帯電話をあまり使わないタイプだし、携帯電話をよく失くしてしまうこととも関係があると思う。携帯電話がない生活の方がラクだし、考えてみれば、携帯電話がない時代の方が世の中はシンプルだったからね。

ーーそれこそ今はスマホで映画を観る人も増えていますが、そこに対してはどのような見解を?

ノエ:スマホで映画を撮るのはいいと思うよ。昔のビデオのような感覚だよね。でも、スマホで映画を観るのは嫌だ。作品がかわいそうな気になってしまうんだよね。僕はインターネットは少しやるけれど、家にはテレビがないんだ。スクリーンがあるから、劇場で観て気に入ったものを、Blu-rayやDVDで買ってスクリーンで観たりする。やっぱり映画は大きなスクリーンで観たいからね。

ーー今回の映画は登場人物たちのインタビューシーンから始まりますが、テレビの横には『サスペリア』や『切腹』などの作品のVHSが並んでいましたね。

ノエ:あそこにあるVHSや本などは、1996年近辺に僕自身がよく観た作品や好きだった作品なんだ。僕はスタンリー・キューブリックの『2001年宇宙の旅』が大好きなんだけど、あの作品を初めて観たのは6歳とか7歳ぐらいの頃だった。だから、自分にとっての未来は、あの映画で描かれているものだったんだ。だけど、実際の2001年は、全くあのレベルに追いついていなかった。第二次世界大戦以降、世の中はそこまで大きく変わっていないけれど、“変化に影響を与えたもの”はある。それは、インターネットとピル。地球環境が変わったのも大きいね。その3つが、私たちを取り巻く第二次世界大戦以降の変化に影響を与えたものじゃないかな。30年後の世界がどうなっているかを考えた時に、僕らの世代が責任を取れないような時代になっているのではないかと危惧しているよ。

ーー冒頭の圧巻のダンスシーンをはじめとする動きのあるシーンと、ゆっくりじわじわと進んていくスローなシーンの対比が印象的でした。

ノエ:一番最初のダンスシーン以外は全て即興だった。最初から、今回は即興で静と動の両方を入れ替わり立ち替わり撮っていこうという方針があったんだ。最初のダンスシーンに関しては、撮影の3日前に振付師に現場に入ってもらって、自分が選んだダンサーたちと振り付けを考えて、2日はリハーサルに時間を費やした。その2日間は僕は不在で、振付師とダンサーだけでリハーサルをやってもらったんだ。だから、僕は撮影当日に合流して、そのまま撮影に入ったわけなんだ。僕が現場に入ってからカメラやクレーン、そしてダンサーたちの動きを最終確認して、撮影に臨んだ。冒頭のダンスシーンは結局15テイクぐらい撮ったかな。カメラの動きを含めての映像になるわけだから、最初の10テイクぐらいはあまり満足できなかったんだけど、10テイクを過ぎたあたりからだんだんよくなっていって、最終的にシーンが完成した。だから、あのシーンは僕が関与したのは技術的な面だけで、ほとんどは振付師とダンサーたちによって作られたものなんだ。要するに、彼らたちの集団的なパワーが、あのインパクトなシーンを作り上げたと言っても過言ではないよ。

ーー冒頭のダンスシーンで流れるセローンの「Supernature」もそうですが、『エンター・ザ・ボイド』に続いてのコラボとなるトーマ・バンガルテルをはじめ、ダフト・パンクやエイフェックス・ツインなど使用されている音楽も映画に大きな効果を与えています。

ノエ:ダフト・パンクは本当に大好きだし、今回は自分が好きな曲しか使っていないんだ。特に、ダフト・パンクの「Rollin’ & Scratchin’」と、エイフェックス・ツインの「Windowlicker」は、今まで何回聴いたかわからないぐらいだし、ずっと踊っていられるような楽曲だね。トーマ(・バンガルテル)とは今回が3度目のコラボレーションになるけれど、彼の曲とダフト・パンクの曲が使えなかったらこの映画は完成しなかったんじゃないかな。トーマには、1995年から1996年にかけて作った楽曲で、まだタイトルさえない、世に出ていないものが何曲かあったんだ。それを聴いて僕はすごくいいなと思って、トーマに使用許可をもらったんだ。その時聴いたままの楽曲ではなく、リミックスしてもらったんだけどね。それが今回使った「Sangria」という曲だよ。「What To Do」もすごくよかったから、ぜひ使いたいと思って使わせてもらったんだ。トーマは僕にとって友人の1人でもあるから、今回のようなラッキーな使い方ができたと思っているよ。(取材・文・写真=宮川翔)

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