Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

『テセウスの船』で見せる竹内涼真の真価 持ち前の“共感力”と“熱さ”を武器に一回り大きなヒーローへ

リアルサウンド

20/1/26(日) 6:00

 「俺は、あなたに生きていてほしいんだ」

 日曜劇場『テセウスの船』(TBS系)で31年後の未来からやって来た田村心(竹内涼真)は、父である佐野文吾(鈴木亮平)に向かって懸命に手を伸ばす。主演の竹内涼真は日曜劇場の申し子と言ってもいい俳優だ。2015年の『下町ロケット』にはじまり、『陸王』、『ブラックペアン』と徐々にメインキャラクターを演じ、ついに本作で舞台の中央に立つことになった。

参考:『テセウスの船』“家族の愛”は取り戻せるのか? 竹内涼真と鈴木亮平をつなぐメロディ

 さわやかな魅力で人気の竹内だが、企画ものを経て、2014年に『仮面ライダードライブ』(テレビ朝日系)の泊進ノ介役で本格的にテレビ画面に登場。仮面ライダー俳優の一人として認知された竹内はルックスやアクションもさることながら、何よりもヒーローに求められる共感力を備えている。

 ヒーローにはスタイリッシュさや強さだけではない「愛され力」とも言うべきポテンシャルが求められる。目じりの下がった端正な相好を崩して笑顔になる瞬間の竹内の表情には問答無用の破壊力があり、人なつこさと二枚目の絶妙なブレンドは世代を超えて支持される要因となっている。

 また『仮面ライダードライブ』の泊が、当初、斜に構えたキャラクターだったのが、竹内の性格を考慮してクールさの中に情熱を秘めた主人公に変更された逸話が示すように、役柄ににじみ出る“熱さ”も竹内の特徴だ。自身もプロサッカー選手を目指していた生粋のアスリートである竹内は、陸上選手や技術開発に情熱を傾けるエンジニアなど、熱さを感じさせるキャラクターに抜群の相性を発揮する。熱いけれど暑苦しさを感じさせない個性が竹内を共感されるヒーローに押し上げてきた。

 竹内の共感力を存分に発揮した役柄が『過保護のカホコ』(日本テレビ系)の麦野初である。主人公のカホコ(高畑充希)が思いを寄せ、後に結ばれる「ハジメくん」は世間知らずなカホコの行動に振り回されながらも、カホコの最大の理解者になっていく。感情移入しにくい主人公に代わって、苦労人で世間の目を代表する初の視線からストーリーを展開することで、視聴者が『カホコ』の世界観に入っていくきっかけを作っていた。

 同様に『ブラックペアン』でも、渡海(二宮和也)と佐伯(内野聖陽)という2人の天才外科医の間で患者の命を救おうと悩む研修医の世良を演じ、作品を身近に引き寄せていた。視聴者と視線を共有するような役柄は見る側の感情移入を促し、没入感を高めるという効果がある。共感ポテンシャルの高い竹内の担う役柄は、ドラマを構成する不可欠なピースとして、意欲的なテーマを扱った作品になるほどその真価を発揮する。

 『テセウスの船』で演じる田村心は、無差別大量殺人の加害者家族として癒えない心の傷を負いながら、容疑者である父親の真実を知るために過去の世界で奔走する。大量殺人の加害者家族という設定は、同情されることはあっても世間からは共感されないポジションであり、心自身も父親への葛藤を抱く複雑な人物造形だ。これまで竹内が演じてきたイメージとは対照的なキャラクターであり、ミステリーを軸にした設定で丹念な心理描写が求められる。

 タッグを組む父親役の鈴木亮平は過去に『天皇の料理番』(TBS系)で日曜劇場に出演。結核を患った主人公の兄として体を張った迫真の演技を見せ、後に大河ドラマ『西郷どん』(NHK総合)の主役をつかみ取った。2人の息の合ったコンビネーションは、負の感情に覆われた家族の記憶を塗り替え、視聴者を引き込むことができるのか。持ちまえの熱と共感力に加えて役者としての総合力が問われる、竹内にとって試金石と言える作品だ。今作を通じて、ひと回り大きくなったヒーローに出会えることを期待したい。

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。

新着エッセイ

新着クリエイター人生

水先案内

アプリで読む