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いま、最高の一本に出会える

『アラジン』の楽曲を手がけたアラン・メンケン (C)2019 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

あの名曲はこうして生まれ、進化した! 巨匠アラン・メンケンが語る『アラジン』

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19/6/7(金) 7:00

ディズニーの新作映画『アラジン』が本日から公開される。本作は1992年製作の名作アニメーション映画を現代の視点を盛り込んで実写化した作品だが、音楽を手がけた巨匠アラン・メンケンは自作が現代的に再アレンジされることに「大きな満足を感じている」と笑みを見せる。

1992年に製作されたディズニー・アニメーション映画『アラジン』は、『千夜一夜物語』に登場するアラジンと魔法のランプのエピソードを題材にした物語で、孤独な青年アラジンと、美しい女性ジャスミン、そして魔法のランプに宿るジーニーの冒険、友情、ロマンスを描き、現在も語り継がれる名作になった。

しかし、本作の音楽を手がけたメンケンは「この作品は完成するまでに紆余曲折あったのです」と振り返る。「この企画は最初、相棒(バディ)ものになる予定で創作が進められていました。アラジンのお母さんも登場していたと記憶しています。ところがこれがうまくいっていなくて、当時のディズニーのヘッドが“この企画は見直した方がいいね”と言ってくれて、新たに書き直すことになったわけです」

実は当時、メンケンを取り巻く状況も上々ではなかった。彼は作曲家として数々のミュージカルナンバーを手がけ、『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』『リトル・マーメイド』『美女と野獣』などの作品で大成功を収めていたが、長年に渡ってタッグを組んできた作詞家/作家のハワード・アシュマンが病に倒れ、「ハワードはもう長くはないとわかっていましたから、彼にプレッシャーをかけないためにも私たちコンビは『アラジン』のプロジェクトから離脱することになりました」

脚本が書き直されている間にハワード・アシュマンは天国に旅立ち、再びメンケンに声がかかった。「新たな作詞家ティム・ライスがやってきて、楽曲制作が再開されました。しかし私は不安でした。ハワードを失ったことによって私のキャリアやこの作品がどれほどのダメージを受けているのかまったくわからなかったからです」

しかし、メンケンは不安や悲しみを振り払ってメロディを紡ぎだしていった。よりどころになったのは朋友ハワードの遺したアイデアや歌詞だったという。「この映画の音楽の基になる構造をつくったのはハワードなんです。楽曲の重要な部分は彼の遺した歌詞による部分が大きい。ティムはいくつかの曲で“あえて”ハワードの歌詞の型を踏襲してくれました。その上で私とティムが初めて一緒につくったのが『ホール・ニュー・ワールド』です。この曲はこれまでにはないカラーをもった曲と歌詞で、私とティムのコラボレーションの出発点になりました。その後、ブロードウェイ版の『美女と野獣』を創作する際にもこの3人が揃いました。ハワードが遺した歌詞と私のメロディ、そこにティムが加わるわけです」

結果として本作の主題歌『ホール・ニュー・ワールド』は全米総合チャートで首位を獲得。アカデミーでは歌曲賞を、ゴールデングローブでは主題歌賞と映画音楽賞を、グラミーでは最優秀楽曲賞を受賞した。「本作のメロディを書く際に頭にあったのは『千夜一夜物語』の世界、それもハリウッド黄金期の映画が描いていたきらびやかな中東のイメージです。ボブ・ホープとビング・クロスビーがコンビを組んだ映画『モロッコへの道』とか『アフリカ珍道中』とか……あの世界観にオマージュを捧げたいと思いました。『アラジン』の音楽を語る上では1940年代のハリウッド映画のスタイルが非常に重要だと思います」

本日から公開になる実写版『アラジン』ではメンケンのメロディにさらに磨きがかけられ、より現代的なアレンジで鳴り響いている。「監督のガイ・リッチーから楽曲にエッジを効かせ、現代的なものにアップデートしたいとリクエストがありました。私はいつも自分のことを“建築家”だと思っています。私が家をデザインして図面を描きます。そこには様々な装飾が施されて、家具が持ち込まれる。そして、そこで暮らすのは私ではない」

時が経ち、装飾が変わっても、家具が入れ替えられても、そこで暮らす住人が変化しても、メンケンの建築(メロディ)は変化することはない。「そうですね(笑)。ですから私は自分の仕事に誇りを持っています。時々、自分でYoutubeで自分の楽曲名を検索してみることがあるのですが、私の書いた曲がこんな風に演奏されているのか! と驚かされるんですよ(笑)。私は新しい曲を作り出すことも好きですが、自分が作った曲に新しい角度でアプローチすることにも大きな満足を感じているのです。楽曲はまるで子供のようなものですね。いつしか成長して巣立っていき、自身の人生を持つようになるわけです」

ちなみに今日から公開になる映画『アラジン』そのものも、オリジナルの魅力を残しつつ、現代の観客の心に響くようアップデートされている。「主人公のアラジンにストリートっぽいカッコよさがあるし、ジャスミンが典型的なディズニー・プリンセスではなく立体的な若い女性として描かれています。そこがこの映画の大きなポイントですね」

『アラジン』
公開中

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