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chilldspot/PIA SONAR MUSIC FRIDAYインタビュー

各方面から注目を集めるChilldspotの10代のすべてを注ぎ込んだ1stアルバムの中身とは?

特集連載

第14回

「曲はいいはずって自信はあったんです。でもうまくいかない、どうしようかな、バンドだったらいいかもしれないと思い始めて。今のメンバーが集まって一緒に演奏したら楽しかったんです」

── 2019年12月から活動を開始されたということで、その数カ月後にはコロナ禍へ突入して行くわけですけど、影響どころの話じゃないですよね?

比喩根 レコーディングやライブといった具体的な活動を始めたのが1回目の緊急事態宣言以降だったので、コロナの影響を受けていない時がないという感じですね。だからもう、これが当たり前というか、共にあるというか(笑)。

── バンドを始めたばかりだし、止めるわけにもいかないし、自然とタフになっていきますよね(笑)。

比喩根 そうですね。レコーディングももちろん感染症対策をしながらですし、終わった後に普通だったらご飯食べに行こうよってなると思うんですけど。そこでレコーディングを振り返ってディスカッションしたりとか。当然ですけど、そういうのもないですからね。あとは、他のアーティストの方たちと会う機会もほとんどないですね。ライブ自体がそもそもない状況が続いたので。だから、かつては普通だったことに憧れがあります(笑)。

── そういう中で曲作りはどのようにしてやっているんですか?

比喩根 基本的には、まずわたしが弾き語りで曲を作ります。メロディとコード、それと歌詞をデフォルトとして作って、それを各メンバーに送って、どういうふうにするかを話し合った上で、スタジオでセーのでやってますね。

── 結構オーソドックスなんですね。DAWを使ってPC上で打ち込んでいく、とかではなくて。

比喩根 わたし自身が打ち込みソフトをまだうまく使いこなせないこともありますし、生で4人で一斉に音を出してできる感じっていうんですかね、バンドで一斉にやるからこそ生まれるものが結構あると思っているので、今はそういうやり方をしています。

── なるほど。

比喩根 なんて言うんでしょうね、そうやってセーので出したものの方が音に温かみが含まれているような気がするんです。

── あと、そうやって4人が集まってやるからこそ、最初に原型を作る比喩根さんの予想もつかないものが出来上がったりするんですよね。

比喩根 本当にそうですね。だいたいの楽曲がそうで、メンバーがいるからこそいいものになるなって感じています。

── EPやアルバムの最後には弾き語りの楽曲が収録されていますが、あれこそが原型ということですよね?

比喩根 まさにそうで、わりとありのままをそのまま収録しているので恥ずかしいんですけど(笑)。

── その原型を最後に入れているのはどうしてですか?

比喩根 chilldspotの核の部分として、今ある現状とか、こう思ってるんだよねっていうことを、素のまま伝えるっていうのは自分にとっても聴く人にとっても大事かなと思うので、毎度入れさせてもらってます。

── ちなみに比喩根さんはそもそもバンドをやりたい人だったんですか?

比喩根 正直、もともとはソロのアーティストとしてやっていこうと思っていたんです。オリジナル曲も書こうとは思ってなくて、歌1本でやろうとずっと思ってました。でも、自分ひとりで活動していくってなった時に、やっぱりオリジナル曲って必要だなって思ったんです。藤原さくらさんとかGLIM SPANKYの松尾レミさんとか、あいみょんさんとか、いろんな女性アーティストが自作した曲を歌っているのを見たり聴いたりして、カッコいいな、わたしもできるかな? と思うようになって曲を作り始めました。でも、自分で作った曲を自分で演奏しても、ギターもうまくないから、どうしようかなって。曲はいいはずって自信はあったんです。でもだからといってプロのミュージシャンにお願いする手段もないし。バンドだったらいいかもしれないと思い始めて今のメンバーを集めて。一緒に演奏しているうちにバンドがすごく楽しくなっていったんです。

── 比喩根さんの中でそういうプロセスを経てのバンドだったんですね。曲を作り始めたのは何歳くらいの時ですか?

比喩根 『夜の探検』(1st EP『the young youth』、1st AL『ingredients』収録)が最初にできた曲だったので、高1の冬とかですね。

── え、ちょっと待って。『夜の探検』を高1で作ったんですか!? めちゃくちゃいい曲ですよね。

比喩根 ありがとうございます(笑)。

「大人になっていっちゃうと、どんどん納得することが増えていって沸点が低くなる気がしたんですよね」

── 1st AL『ingredients』についてお伺いします。まずタイトルなんですが、「材料」とか「素材」という意味ですね。これはどういうイメージでつけたんですか?

比喩根 前作のEP『the youth night』は結構コンセプトを決めていたんですよ。夕方5時から朝5時までの時間の変遷を7曲で表すというふうに。でも今回は自分たちのやりたいことを1曲ずつやっていったらアルバムができる曲数になっていて、タイトルは後付けなんです。それで、アルバムに収録した11曲を改めて全部聴いて考えてみた時に、メンバー4人とも音楽のルーツも考え方も違うし、だったら4人それぞれが素材で音楽っていうひとつのもので調理したら、こうなるよっていうことを表せたらいいなと思いました。それと、曲のジャンルが幅広いので、そのひとつひとつが素材で、聴いてくださる方がそれらをどう調理してchilldspotを取り込むかというイメージですね。フルコースみたいに11曲全部を頭から順番に堪能してもらってもいいし、これは好きだけどこれはちょっとっていう曲があったら、好きなものだけを楽しめばいいと思うので、そういう意味も込めてタイトルをつけました。

── なるほど。CDのジャケットがないというか、クリアなケースにアートワークが施された盤面が剥き出しで見える仕様になっていますね。これはどういうところからアイデアが出てきたんですか?

比喩根 メンバーのジャスティン(Dr)がデザインとかファッション方面に詳しくて、センスもいいんですよ。なので彼を中心に考えました。パッケージにジャケットがあるっていうのが一般的だと思うんですけど、chilldspotってみんなひねくれてて(笑)、なんかちょっと一工夫ほしいってなったんです。で、ケースはクリアにして中の盤面をジャケットにして見せることで、「chilldspotはこうだぜ」っていう意思表示にも見えるんじゃないかという話になりこうなりました。

── この仕様自体に素材感がありますよね。

比喩根 たしかに! それ、いいですね(笑)。

── 収録曲全体の構成についてですが、M-6『interlude』を挟んで前半5曲がこれまでに発表した曲で、後半5曲がほぼ未発表曲というのは意識したんですか?

比喩根 そこは意識してなくて、今は音楽の聴き方として1曲1曲で聴くのが普通ですけど、もちろんアルバム全体で聴いてほしいという想いもあって、でも11曲の中でジャンルの振り幅も大きいから、どういうふうに並べたら負担なく緩やかに誘導していけるかなっていうのを考えたらこの曲順になったんですよね。それであとから、あれ、後半新曲祭りになってるねって気づいたんです(笑)。

── M-1『Monster』ですが、この曲で始まるというのはすぐにイメージできましたか?

比喩根 そうですね。やっぱりアルバムの1曲目って、その作品を象徴するような役割があると思うので、インパクトが欲しいっていうのと、まずは最初に「これがchilldspotだよ」っていうわかりやすさというか自分たちらしさの出た曲で始まるのがいいだろうなって思って『Monster』にしました。

── 意志をハッキリと示している曲ですよね。

比喩根 この曲は怒ってますからね(笑)。曲を作った背景としては、親から自分の好きなものを否定されるような言葉を受けている友達がいて、話を聞いているうちに、それは違うんじゃないかって怒りがふつふつ湧いてきたのがそもそものきっかけで、自分の意見や価値観を他人に押し付けてしまう人に対して書いていたんですけど、サビの〈あなたは誰なの〉ってフレーズを繰り返しているうちに、その親御さんの考えや意見の根拠も知らないのに勝手に悪者扱いしているわたしが一番誰なの? モンスターはわたしなんじゃないの?っていうふうに思えてきて。自分自身に問いかけている曲でもあるんです。あと、前作のイメージとは少し違って、こういう曲もできるぞっていうのと、このストレートな感情を今出したいと思って、高校在学ギリギリのタイミングでリリースしたんですよね。

── 思春期のスクリーム感がありますよね、この曲には。

比喩根 大人になっていっちゃうと、どんどん納得することが増えていっちゃって沸点が低くなるというか、全部に理由をつけていくような気がしたので、まだ納得できないままでいられる時期に出しておきたいなって思いました。

── そうした歌詞の鋭さに対して、サウンドアレンジはどのようにバンドメンバーとイメージを共有したんですか?

比喩根 わたしがみんなに常々話しているのは、歌詞とサウンドのバランスを取りたいっていうことなんです。わりと根がネガティブなので歌詞が重いんですよ、わたし。amazarashiさんみたいな、結構ダークサイドにいるような重い歌も好みなんですけど、自分の声の特性を考えた時に、ちょっと軽やかだったりフェイクが多かったり、そういう雰囲気の方が合うなと思って。歌詞の芯の部分はしっかりあって、説得力がありつつ耳にすっと入ってくるっていうバランスの取れた曲を作りたいっていうことを話して。そしたらメンバーもそれを汲み取って音数を少なくしたりとか、いろいろと試行錯誤をしていい着地点を目指してくれますね。

「誰かに影響を受けたというよりも自分の心の動きによって作られることが多いと思います」

── そして、SONAR TRAXにもなっているM-3『未定』ですが、ディスコポップですね。

比喩根 そうですね。

── 曲作りの段階からディスコポップをイメージしていたんですか?

比喩根 まったくそうじゃなくて(笑)。最初この曲ができた時は、ちょっとイマイチかな〜、作り直そうかなーとか思ってた曲で。でもとりあえずアレンジやってみようかってなった時に、ジャスティンがディスコっぽい感じをやってみたいんだよねーって言っていて、じゃあこの曲でやってみるかとやってみたら、「いいじゃん! いいじゃん!」ってバンド全員がなっていきましたね。ジャスティンは結構アイデアメーカーなところがあるんです。

── 『未定』というタイトルからはディスコポップは想像しにくいですね(笑)。

比喩根 これは、ずっとタイトルが決まってなくて『未定』ってつけてたんですよ。仮タイトルでもなんでもなく、単純に曲名が決まってないっていうことで『未定』のまま放ったらかしになってたんです。もっと言うと、『未定①』『未定②』って2曲がそんな状態であって、『未定①』はタイトルが決まったので、『未定②』が残って、②が取れて『未定』だけになったんです。で、そのまま進んでいって、ある日ふとタイトル『未定』って歌詞のテーマにもマッチしてるしいいんじゃない?ってメンバーに言ったら、「いいね!」ってなって正式タイトルになりました。きっかけは偶然だったのかもしれないけど、後から考えたらこれしかないなって思いました。

── 歌詞のテーマもハッキリしていて、「他人と比較しないで」というメッセージが込められていますが、歌詞はどういうところから着想していくことが多いですか?

比喩根 基本的には先ほど言ったみたいに、暗いところというかマイナスな感情から入っていくことが多くて、誰かに影響を受けたというよりも自分の心の動きによって作られることが多いと思います。だからマイナスなところから始まるんでしょうね。最終的に自分がかけてほしい言葉を自分自身でかけているというか。他人ってそんな便利なものではないので、自分がかけてほしい言葉をかけてほしいタイミングで言ってはくれないじゃないですか。だからライブとかの本番前に「わたしはいける!」みたいな、あれをそのまま歌詞でやってるというか。

── MVは歌詞の世界に沿った内容で鏡を使ったもので、こちらも印象的でした。これはどういうふうにアイデアを詰めていったんですか?

比喩根 比較してるんだけど、それは他人を見て比較してるんじゃなくて他人を経由して見た今の自分を比較している。結局自己嫌悪というか、鏡を見た時に失望する感じがあるんですよねって監督さんに話したんです。そしたらすごくイメージを具体化していってくださいましたね。

── 女優さんが鏡に囲まれた部屋で歌いながらダンスをするシーンのあのダンスは、絶対に他人に見せないダンスのような気がして、そこが曲のテーマにマッチしていると思いました。

比喩根 そうですよね。あのダンスは監督さんもこだわっていましたね。うまい感じというよりも、ちょっと昔風でダサい感じにって(笑)。

── M-6『interlude』を挟んで後半の流れなんですけど、ここからはすごくローファイなUSインディー感が心地よいというか。まずM-7『Weekender』はどういうふうに仕上げていたんでしょうか?

比喩根 chilldspotって「chill」って言葉が入っているんですけど、もちろんそれに縛られないという部分もあるんですが、「ザ・チル」みたいな曲が1曲ほしいなって思って作り始めて、デモができて「チルな感じにしたい」って言ったら、必要最低限な音でローファイっぽい感じに仕上がりました。

── そして、M-10『dinner』。これはジャンルとしてはどのように解釈されているんですか?

比喩根 ジャンルか……。基本的に全曲大まかなジャンルはあるんですけど、自分たちでは区切ってないんですよね。メンバー間ではヒップホップという感覚は何となく共通していて、でもファンクも入ってるし、ギターソロのあとなんかはめちゃくちゃロックだし……何でしょうね? もともとカオスな感じにしてやろうぜっていう意識はありました。

── そう考えると、あえて言うならジャズなのかなっていうふうに僕は受け止めています。

比喩根 まとめるとしたら、そうなのかもですね。

── 歌詞で出てくる〈顔と口に出ていなければ思ってないのと同じだもん〉っていうフレーズは、この曲が不平不満を調理して食べるという面白い内容になっていますね。

比喩根 あははは。特に今はコロナもあってみんな疲れてたり我慢してたり、ストレスとかを溜め込みすぎてると思って。でも溜め込みすぎるとよくないから、口にしてないから思ってないのと同じだもんねってくらいで乗り切った方が明るく消化できるかなと思ったんですよね。キラキラポップみたいな感じだけど歌詞のテーマは、やな奴食べちゃえ! みたいな(笑)。

── 最後にライブのことをお聞きしたいのですが、冒頭にもお話があったとおり、なかなか思うようにできなかったですよね。

比喩根 そうなんですよね。予定していたフェスへの出演もなくなっちゃったりして。だからライブをやった回数はまだ両手で数えられるくらいですね。

── 10月3日(日)にShibuya WWWでワンマンライブがあって、こちらはなんとソールドアウト! で、11月18日(木)Shibuya WWW Xで追加公演が決定しています。

比喩根 本当にありがたいですね、こんな状況の中でもライブに来ていただけるわけですから。初のワンマンライブですし、めちゃくちゃ楽しみにしています。

Text:谷岡正浩 Photo:吉田圭子

リリース情報

ファーストアルバム『ingredients』9月15日発売
価格:3,080円(税込) 品番:REP-057 レーベル:RAINBOW ENTERTAINMENT

<収録曲>
01. Monster
02. 夜の探検
03. 未定
04. Groovynight
05. ネオンを消して
06. interlude
07. Weekender
08. Kiss me before I rise
09. hold me
10. dinner
11. 私

イベント情報

※ソールドアウト※
One man live “the youth night”
2021年10月3日(日)開場 17:00 / 開演 18:00 渋谷WWW

FM802 MINAMI WHEEL 2021
10月8日(金)~10日(日)
※chilldspotは10月9日(土)に出演
詳細は⇒https://minamiwheel.jp/

CLAPPERBOARD -Enjoy the weekend!-
2021年10月18日(月)開場17:15 / 開演18:00 渋谷CLUB QUATTRO
出演:Doul/chilldspot/FIVE NEW OLD
チケット代:前売3,800円(税込)
※入場時ドリンク代別途必要
詳細は⇒https://www.club-quattro.com/sp/shibuya/schedule/detail.php?id=12428

One man live “the youth night” 追加公演
2021年11月18日(木)開場 18:00 / 開演 19:00 渋谷WWW X
チケット代:3,000円(税込)
※入場時ドリンク代別途必要
※全自由席
詳細は⇒https://w.pia.jp/t/chilldspot-t/

プロフィール

chilldspot
東京都出身のロック・バンド。メンバーは比喩根(vo,g)、玲山(g)、小崎(b)、ジャスティン(ds)の2002年生まれの4名。バンド名は“chill”“child”“spot”“pot”を組み合わせた造語。2019年12月に結成。高校在学中の2020年に1st EP『the youth night』を発表。「ネオンを消して」「夜の探検」がバイラルチャートにランクインして話題に。2021年9月に1stアルバム『ingredients』をリリースした。

関連リンク

SNSまとめ: https://linktr.ee/chilldspot

番組概要

放送局:J-WAVE(81.3FM)
番組名:PIA SONAR MUSIC FRIDAY
ナビゲーター:櫻井海音
放送日時:毎週金曜 22:30~23:00
番組HP:https://www.j-wave.co.jp/original/sonarfriday/
番組twitter:https://twitter.com/SONAR_MUSIC_813
ハッシュタグ:#sonar813
番組LINEアカウント:http://lin.ee/H8QXCjW

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