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『今日から俺は!!』に続いて『コンフィデンスマンJP』も大ヒット 興行を救ったのは若者だった

リアルサウンド

20/7/29(水) 19:00

 先週末の動員ランキングは、『今日から俺は!!劇場版』が土日2日間で動員38万9000人、興収4億9600万円をあげて2週連続1位。累計では早くも興収20億円を突破していて、コロナ禍の国内興行を牽引する大ヒット作となった。

参考:三浦春馬が『コンフィデンスマンJP』で演じるジェシーが魅力的な理由 ダー子との真の関係は?

 2位は土日2日間で動員28万6000人、興収4億500万円をあげた『コンフィデンスマンJP プリンセス編』。2019年5月に公開された前作『コンフィデンスマンJP ロマンス編』の公開初週土日2日間の成績は動員28万4000人、興収3億8600万円だったので、前作を上回るヒットスタートを切ったことになる。今回の『コンフィデンスマンJP プリンセス編』に関しては、メインロールの一人を務める東出昌大のスキャンダル報道の余波も不安視されていたが、当初の公開予定日だった5月1日から新型コロナウイルスの影響によって約3ヶ月公開が遅れたことも功を奏してか、興行にとってダメージとはならなかった。

 『コンフィデンスマンJP』の製作陣にとっては、東出昌大のスキャンダル報道、新型コロナウイルスの影響、そして出演者の一人である三浦春馬の公開5日前の訃報と、ここ数ヶ月のあいだあらゆる種類の「危機」が重なっただけに、今回の好スタートにほっと胸をなで下ろしていることだろう。特に東出昌大の件に関しては、共演者たちの強い意志もあってのことだろう、ポスターや予告編などから顔や名前が削除されたり、作品のプロモーション活動への参加を見合わせるようなことが起こらなかった。テレビ局製作の作品でありながら、テレビのワイドショーの視聴者に代表される「コンテンツにお金を払わない」人々によって形成される世論に流されなかった、その毅然とした対応を強く支持したい。

 このコロナ禍ではっきりと浮き上がったことの一つは、映画、演劇、音楽をはじめとするエンターテインメント界や芸能界に対する、日本のいわゆる「世間」の人々の冷ややかな態度や視線だ。施政者たちが発し続けている「不要不急」という言葉もきっと加速させたに違いない、「芸事をやってる人間は普段から好きなことをやって楽をして大金を稼いできたのだから仕方がない」といったネットでよく目にするような意見に象徴される、ここ10数年の日本の「世論」において支配的だった自己責任論が行き着いた先のカルチャー全般への無理解。そんな中で、主に若い世代の観客が『今日から俺は!!劇場版』や『コンフィデンスマンJP プリンセス編』に大挙して押しかけて日本の映画興行を救っている事実は、テレビ局による自社製作作品のパブリシティが効いていることを差し引いても、重要なことを示唆しているのではないか。

 日本でコロナ禍を吹き飛ばすような大ヒット作が連発していることは、海外の映画メディアでも驚きとともに報じられている。アメリカの有力メディアVarietyも、「多くのハリウッド大作や国内製作の大作の公開が延期されたことで、日本の夏の映画興行は低迷することが懸念されていたが、若い観客が映画館に戻ってきている」(https://variety.com/2020/film/asia/japan-box-office-life-after-coronavirus-1234717987/)と、やはり観客の年齢層の若さに注目していた。

 近年の日本の映画界、特にメジャー映画会社が製作する作品では、社会全体の少子高齢化も鑑みてのことだろう、中年や高年齢層の観客を想定して手堅くヒットを狙う作品が増加傾向にあった。もちろん、そうした長期的な試みも重要なのだろうが、「コロナ以降」の一連の出来事が示しているのは、若い観客を継続的に映画館に足を運んでくれる「いい観客」に育てることの重要性なのではないだろうか。裏を返せば、これまで日本の映画界が「いい観客」を育ててこなかったことが、この驚くほど冷たい、コロナ禍のエンターテインメントへの「世間」の温度を作ってしまったとも言えるわけだが。(宇野維正)

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