アングスト/不安
20/7/4(土)
(C)1983 Gerald Kargl Ges.m.b.H. Filmproduktion
これが日本初の劇場公開となる1983年のオーストリア映画。実在のシリアルキラー、ヴェルナー・クニーセクが引き起こした一家惨殺事件に基づく本作が“取扱要注意”の暗黒物件であることは疑いようがないが、単に異常で猟奇的な作品ではない。
数多くのミュージッククリップで名を馳せた撮影監督ズビグニェフ・リプチンスキによるシュールなまでに奇抜なカメラワーク。元タンジェリン・ドリームのクラウス・シュルツが手がけた戦慄の電子音楽。さらに凄いのは、サディスティックな殺人衝動に駆られながらも、その欲求を満たすことができない主人公の焦燥と混乱、とても演技とは思えない不可解な行動が恐ろしいほど生々しく捉えられていることだ。
しかもそれらの描写は偶然撮られたものではなく、いちいち入念な演出が施されていることがうかがえる。重ね重ね“取扱要注意”であることを念押ししつつ、この異形の衝撃作にみなぎっている実験精神とオリジナリティーはただごとではない。
新着エッセイ
新着クリエイター人生
水先案内