Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

ぴあ

いま、最高の一本に出会える

第5回:物語を読み解くヒントは“歌”にあり! 『アナ雪2』の音楽

19/12/6(金) 12:00

なぜ“アナ雪”はこんなにも成功したのか? 多くの人が、物語やキャラクターの魅力、作品が扱うテーマと同時に“音楽”をその理由に挙げるのではないだろうか? 本シリーズは数々の名曲を生み出し、それらのいくつかは早くも“スタンダード”と呼んでいいほど様々な人にカバーされ、子どもたちが楽しく歌っている動画がネットにアップされ続けている。これらの楽曲を生み出したのは、ロバート・ロペスとクリステン・アンダーソン=ロペスのコンビ。夫婦でもあるふたりは“ソングライター”として本作に参加しているが、映画には“ストーリー”の欄にも名前が登場する。なぜ、本作はソングライターがストーリーづくりに参加するのか? 来日したロペス夫妻がその“秘密”を教えてくれた。

“歌う”ことは“物語る”こと。ロペス夫妻が語る。

本連載の第1回でも触れたが、『アナと雪の女王』の創作時、エルサのキャラクター造形を決定づけ、脚本の大幅に書き直しをフィルムメイカーたちに決断させたきっかけが、ロペス夫妻の書いた歌「レット・イット・ゴー~ありのままで~」の誕生だった。通常の映画の場合、脚本が執筆され、ストーリーやキャラクターが決定してから、ソングライターにシーンに“合う曲”が発注される。しかし、本シリーズは違う。エグゼクティブ・ミュージック・プロデューサーを務めたトム・マクドゥーガルは「この映画では製作にかかわるどんな人も、映画の方向を変える役割を果たすことができる」という。「もちろん脚本は監督でもあるジェニファー・リーが書く。でも、音楽担当者も自分たちのスタイルで物語を綴っていくんだ」

物語から歌が生まれ、その歌によって物語がさらに進化する。本シリーズにおいてストーリー部門のメンバーとソングライターは真の意味での“コラボレーション関係”にある。

「それについては何よりも、映画のスタッフに感謝したいと思っています」とクリステンは満面の笑みを見せる。「彼らは私たちをストーリー部門に招き入れてくれて、映画づくりに参加させてくれました。ということは、私たちは良い歌を生み出すだけではなくて、良い物語を語らなければいけないと思いました」。夫のロバートがうなずきながら続ける。「私たちにとって音楽は、映画のセリフと同じものだと思っています。どちらもストーリーを前進させる役割を担っているわけです。ですから、このシリーズでは私たちとストーリー部門のチームが一緒になって創作することが絶対的に必要でした」

そのため、スタジオから少し離れた場所で暮らしているロペス夫妻はビデオ電話をつないでスタジオの人たちと何度も語り合い、時にはスタジオを訪れて共に物語を紡いでいった。フィルムメイカーはセリフと画で、ロペス夫妻は歌詞とメロディを使って。夫妻が仕事をする上でモデルにしているのは『リトル・マーメイド』『美女と野獣』『アラジン』で名曲を生み出したハワード・アッシュマンとアラン・メンケンのコンビだ。

「私たちは彼らの素晴らしい仕事をたくさん目にしてきました。彼らもまたソングライターであるのと同時に優れたストーリーテラーでした。私たち夫婦はそれぞれ、結婚するよりも長い時間、ディズニーと仕事をしていますから、お互いが長い時間をかけて少しずつ学んでいったのだと思うんです。どうやったら曲の中でストーリーを前に進めることができるのか?をね」(クリステン)

「僕は子どもの頃からミュージカルが大好きで、アルバムを聴いて、学校のミュージカルにも出演して、ラジオだってブロードウェイの曲ばかり聴いてきたんですよ(笑)。だから逆に“ヒットしそうな曲を1曲だけ書いてよ”ってリクエストされても……上手にはできないでしょうね」(ロバート)

「セリフでは言い切れないほど気持ちが高まって、感情があふれ出そうな時に、その想いが歌になります。だから歌の中でその感情が歌われ、さらに曲の中で何かを発見したり、決断したり、前に進むことで次のアクションにつながっていく……そんな楽曲を生み出す方法を長い時間かけて学んできたわけです」(クリステン)

ポイントは『アナと雪の女王2』における音楽は“感情の表現”だけではない、ということだ。完成度の低いミュージカルの場合、悲しい出来事が起こると“私がいかに悲しいか”が歌われる。観客も何だか切なくなる。でもよく考えると、歌い終わるまでの間、物語は1ミリも前進していない。音楽は物語を“飾り立てる”効果しかない。

しかしクリステンが語った通り、本作の楽曲はアナやエルサの迷いや葛藤、喜びが歌われ、1曲の中で物語が“前進”していく。歌詞やメロディは感情を表現し、彼女たちは歌いながら決断したり、迷いを断ち切ったり、自分が何を求めているのか発見する。ロペス夫妻はソングライターでありながら、『アナと雪の女王2』を語る上で欠かすことのできないストーリーテラーでもあるのだ。

ロペス夫妻が「イントゥ・ジ・アンノウン」に込めた“個人的な想い”

とは言え、『アナ雪2』の音楽もすんなり完成したわけではなかったようだ。そもそも「ミュージカル映画に続編が少ないのには理由があるんだ」とマクドゥーガルは分析する。「ひとつには1作目で最高の曲の数々が出てしまうことだ。キャラクターの紹介もそれらの楽曲で済んでいるし、物語の重要ポイントも歌ってしまっている。だから僕たちは“続編の意味はあるのか?”を考えるだけじゃなくて“ミュージカルの続編をつくることは可能なのか?”についても考えたよ」

マクドゥーガルの分析は一理ある。思い返せば多くの名作ミュージカルには続編がない。そもそも、ディズニー・アニメーション・スタジオは続編映画の製作に慎重で、よほどのことがない限りは続編の製作に着手しない。しかし、彼らは発見した。それはエルサとアナの“成長”だ。

「私たち家族も、監督のジェニファー・リーの家も同じぐらいの年齢の娘がいるんです」とクリステンは語る。「私たちはみんな親として子どもたちが変化を遂げ、成長していく過程を見守っていますから、子どもたちには挑戦する力を与えたいと思いますし、これかの人生で様々なチャレンジがあったとしても、それに立ち向かえるだけの勇気をもってほしいという気持ちをもっています」

そんな想いと、自分にしか聞こえない“不思議な歌声”を聴いたエルサの気持ちが新曲を生み出した。「イントゥ・ジ・アンノウン~心のままに」だ。この曲の中でエルサは現在の幸福な日々を壊したくないと思いながら、自分の過去や能力にまつわる秘密を見つけ出す旅に出ることを決意する。クリステンは「子どもたちに対する想いがあの楽曲を生み出しました。スマートフォンばかり見ていないで、“未知の世界に飛び込みなさい(イントゥ・ジ・アンノウン)!”ってね」と豪快に笑う。

時が経てば、映画の作り手も、物語の中のキャラクターも成長し、変化する。“永遠の幸福”はない。いくつになっても人生には困難があり、チャレンジがある。彼らは自身の経験や個人的な想いを物語や歌に反映させているのだ。

「曲を書いている時は、必死になって一生懸命になって創作しているというよりは、“ある状態”に入って自然と音楽が湧き出てくるような感じなんです。彼女が何か言ったことに僕が反応して、ふたりで演じ合ってみることもあるんですよ(笑)。その中で曲が生まれ、歌詞ができることもあります。僕たちの場合は音楽ですが、ジェニファーの場合がそれが映画のセリフになるんだろうし、アーティストたちは画になるのでしょう。何かを考えているとか、作業しているというよりは“遊んでいる”感覚に近いんです」(ロバート)

人工的に創作された感情だけでなく、自分が感じたこと、身近な人に伝えたい想いを楽曲に込める。ディズニーのアーティストもロペス夫妻も創作に対する姿勢は同じなのだ。『アナと雪の女王2』をさらに深く楽しみ、物語を読み解くヒントは歌の中にもある。

そのメロディは永遠に響く。ディズニーの信念

振り返れば、ディズニー・アニメーションは本当に数々の名曲を生み出してきた。「星に願いを」「いつか王子様が」「ホール・ニュー・ワールド」……これらの楽曲はヒットチャートを賑わしたり、レコードを売り出すために書かれた楽曲ではない。映画のストーリーを語り、キャラクターの内面を表現するために誕生したものだ。しかし、これらの楽曲は映画を知らなくとも一度は耳にしたことのある名曲として歌い継がれている。

「僕はたくさんの映画に関わってきたけど、観客が共感する歌は“キャラクターにとって意味のある場所”から生まれてくるって経験上、知っているんだよ」とマクドゥーガルは力説する。「ラジオで何回もかけてもらえる歌かどうかは重要じゃない。『アナと雪の女王』で2番目に人気のあった歌は「雪だるまつくろう」だったんだけど、もしヒット曲を狙っていたとしたら「雪だるまつくろう」なんてタイトルの歌は絶対につくらないよ(笑)。そんな曲名じゃラジオでかけてもらえなさそうだしね。あの歌が人気を集めたのは、キャラクターのある瞬間をしっかりと捉えた曲だからだ」

実際に楽曲をつくりだすロペス夫妻も“ディズニーの音楽”は特別だと感じている。「私たちが大きなストーリーを語る上で、それぞれの楽曲に役割があります。3分半ほどの楽曲の中で小さなストーリーを描き、それらが連なることで90分ほどのストーリーを描き、それらがさらに連なって……“ディズニー”という大きな世界を描いているわけです!」(クリステン)

では“ディズニーの音楽”の最大の個性・特徴は何なのだろう? マクドゥーガルは「このスタジオには“良い映画をつくれば、それは永遠に残る”という信条がある」という。「通常のポップミュージックは現在起こっていることを捉えようとする。歌手やソングライターは“現在”というタイムスタンプを曲の中に残すんだ。でも、僕たちが目指すのは“永遠”だ。永遠に古びない物語とキャラクターのために音楽を作る。人は今でも『白雪姫』や『ジャングルブック』を観ていることがそれを証明していると思う。僕たちが目指すのは“タイムレス”なものなんだよ」

本作に登場する「イントゥ・ジ・アンノウン~心のままに」「みせて、あなたを」「わたしにできること」などの楽曲は、ロペス夫妻の願い通りディズニーの世界の中で長きに渡って輝き続け、これからも多くの人たちを魅了し続けることになるだろう。

(C)2019 Disney. All Rights Reserved.

アプリで読む