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『なつぞら』がスター俳優揃いの朝ドラとなった理由 広瀬すずを中心としたキャスティングの裏側

リアルサウンド

19/9/28(土) 5:50

 NHK連続テレビ小説『なつぞら』が最終回を迎える。

参考:「支援がなければ、実現できなかった」 朝ドラ100作目『なつぞら』を支えた北海道・十勝の協力

 戦災孤児となり、父の戦友・剛男(藤木直人)に連れられ、北海道・十勝にやってきたなつ(広瀬すず)。大自然と、そこで生きる開拓者の一族の優しさや厳しさに育まれ成長し、当時草創期にあった漫画映画の世界で、アニメーターになることを夢見て上京。そこで出会う仲間とともに、子どもたちを楽しませるためにアニメーションを作り続けてきた。

 リアルサウンド映画部では、最終回を目前に、本作の制作統括を務めるNHKの磯智明にインタビューを行った。異例の朝ドラヒロイン総出演の裏側から、視聴者の話題をさらった千遥(清原果耶)の登場に込めた思いなどを語ってもらった。

■「印象に残るようなキャスティングを」
ーーいよいよ朝ドラ100作目『なつぞら』が最終回を迎えます。

磯智明(以下、磯):朝ドラは100作まで続いてきたドラマなので、女性の成長の物語や、その家族に訪れる変化などといったフォーマットがある程度できあがっています。今回は、そこだけでは収まりきらないものを描きたいと思っていました。“酪農”と“アニメーション”は、ドラマのプロデューサーとして、以前から興味深く感じていた題材です。今まで朝ドラで色々なカルチャーが描かれてきた中で、アニメーションはなかなか手をつけにくい。なぜなら、完成したアニメーションを作るだけでも大変だけど、そこを描くために小道具や絵を1枚1枚を用意するのも、すごく大変な作業だからです。そこをチームとしてやりきったのは、達成感を感じます。もっと掘り下げることはできたと思うし、これからもアニメーションを題材にしたドラマができていってほしいなと。そもそもアニメーションの作り方がわからない人もいると思うので、それも知っていただきたいし、それが昭和30年代の頃から日本の産業としてあったということを知って欲しかったんです。

ーー過去のヒロイン再登場をはじめ、広瀬すずさんと再共演となるキャストなど、キャスティングに関する話題が大いに盛り上がりました。

磯:台本をもらった始めから登場人物が多いなと感じていたんです。その時点では北海道編だったから、その後東京に出てアニメーションを作ることや結婚することを考慮すると、とにかく出演者が多いドラマになるんだろうと。大森(寿美男)さんの脚本は、「1つのポジションに1つのキャラクター」という作りなんです。連続ドラマではよくあるのですが、親友だけど別の側面もあるというような、1つのポジションに2つ、3つのキャラクターを乗せるという作り方をしないんです。

 たとえば、煙カスミと亀山蘭子は普通だったら1つのキャラクターにまとめたりしてキャラクターを多面的に描くこともできるんですけど、大森さんはそういうことをやりたがらない人です。なので必然的に登場人物が多くなるため、なるべく印象に残るようなキャスティングをしたいと思ったんです。視聴者は、登場人物が増えることで区別がつきづらくなるから、役名というより役者で覚えるようになる。主演周りはオーディションで選んだフレッシュな人たちが揃うから、そうでない人はなるべく印象に残るようにキャスティングすることを念頭に置きました。幸いなことに今回台本ができあがるのが早かったんです。そのおかげで、色んな方々に出演をお願いできる時間がありました。

■「時間の経過を感じてもらえる」
ーー歴代朝ドラヒロインを総出演させるという仕掛けはどのように考えられたのでしょう?

磯:朝ドラヒロインの起用について言うと、最初に松嶋(菜々子)さんと小林(綾子)さんのお2人が決まったんです。その時点では、ヒロイン総出演が1つの売りになるとは考えていませんでした。『なつぞら』を作るにあたって、過去の色んな朝ドラを振り返ってみたのですが、ヒロインを終えた後、それぞれの女優さんが辿っていった道がとても興味深く、それが十人十色で、「この女優さんもかつては朝ドラのヒロインだったのか」と発見もあれば、「このヒロインは今こういう人生を送っているのか」という気づきもありました。だから『なつぞら』を作るにあたって、過去のヒロインをその役にはめていくのではなく、まず台本に登場したキャラクターのことを考え、こういう役にフィットする過去のヒロインがいるんじゃないか、というようにやっていきました。

 視聴者の方にも、「実はこの人もヒロインだった!」と知ってもられると面白いんじゃないかと。気づいてもらえればと。初めの頃は『なつぞら』が最終的にどれぐらいのスケールになるのか予想できていませんでしたが、過去のヒロインの方々が演じていただけるような役柄がたくさん出る豊かなドラマになればいいなと思いました。

ーー出演の発表が行われるたびに大きな話題となっていました。

磯:過去のヒロインの方がいると言うことは、その方が出ていた朝ドラをリアルタイムで見ていた世代がいます。例えば山口智子さんの『純ちゃんの応援歌』をリアルタイムで見ていた人は、山口さんと同じ年を重ねており、その人たちが今の山口さんの活躍を見れば、当時を振り返って「自分は、今はどうなんだろう」と考えるきっかけにもなる。そういう時間の経過を感じてもらえると、朝ドラの見方もまた変わってくるんじゃないかなと思います。

ーー広瀬すずさんと過去共演歴のある方々をキャスティングするというのも、意識的に取り組まれたのですか?

磯:広瀬すずさんが「この配役を面白いな」と思う人をキャスティングしたいと思いましたね。それはリリー(・フランキー)さんや中川(大志)さんなど、広瀬さんと共演したことがある、彼女がやりやすい人と、初めて共演する人やチャレンジする人をうまくバランスを取りながら配役できればと思いました。どうすれば彼女のポテンシャルを最大限に引き出せるのか常に考えていましたね。

 過去のヒロインとの共演も、広瀬さんはこれからキャリアを重ねていくので、例えば今回松嶋さんと共演した経験が、広瀬さんが松嶋さんと同じ年代になった時に生きてくるんじゃないかと思ったんですよ。役者さんは、年齢やキャリアによって演じ方や役柄がどんどん変化していく仕事なので、色んな年代の過去のヒロインの人と共演するのは、今後のキャリアをイメージする手がかりになったりもするんじゃないかなと思っていました。

■「マンネリを打ち崩すには、キャスティングが重要」
ーーまた、アニメーション編では、山寺宏一さんをはじめ実際の声優さんを起用しています。

磯:声優さんのように全く異なる才能を持った人が入れば、それに対応しなきゃと俳優さんも芝居を考えます。その芝居が面白くなればライブ感に繋がって、新鮮な空気感が生まれる可能性もあるんです。朝ドラは、非常に広い世界を描きながら、映像はこじんまりとしたセットで展開していくので、その空間の広がりを見せたり、マンネリを打ち崩すには、キャスティングが非常に重要な要素です。

 柴田家のセットは、作中で何十年経っても変わりませんが、新しく若手の子役を入れることによってそこで起こる芝居が変わっていくのと同じように、『なつぞら』の世界観に異分子やフレッシュな人を入れることによって、どんどん刺激が生まれて変わっていく。大河ドラマみたいに、ある程度規模もあってセットを転換させたり、状況もどんどん変えられるのも面白いのかもしれないけど、朝ドラは、基本的にセットドラマで映像的にはそれほどバリエーションを作れない分、やっぱり役者が背負う部分が大きいドラマだと思いますね。

ーーそれで言うと、なつの生き別れた妹・千遥の存在も大きかったですが、清原果耶さんのキャスティングはどのように?

磯:千遥の本格的登場については、どのように受け止められるか、予想がつきませんでした。それまでは子役時代に登場しただけで、14週で千遥として清原さんが出た時に、どのぐらいの視聴者の関心を集めるのかは当初あまり読みきれてはいなかった。僕自身は、千遥の登場はあそこまでインパクトを持って受け止められるとは思ってもいなかったんです。

 台本ができる前の段階から、千遥という存在が登場することは決まっていたので、清原さんには出演交渉をしてました。重要なキャラクターだし、なつとはその人生が合わせ鏡みたいなところがあります。初めはなつとぶつかっていくように見えた方が面白いと思ってオファーしたんです。清原さんは映画『ちはやふる』で広瀬さんのライバル役を演じていますよね。あの関係がとても印象に残ったし、『透明なゆりかご』なども清原さんの演技は、若さとか初々しさをすでに超えたレベルにあると思っているので是非お願いしたいなと。清原さんはこれまでのドラマの流れを変える、異分子的な入り方ができるぐらいのインパクトとエネルギーを持ってる人で、今までのなつとは異なる表情になる瞬間を出したいと思ったんです。

(取材・文=安田周平)

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