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はちどり

20/6/27(土)

ポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』も巧みな構成と力強い演出に脱帽しましたが、これが長編デビュー作というキム・ボラ監督による本作も新人とは思えない仕上がりに驚かされます。 経済発展には必ず光と影が伴います。韓国の場合も60~80年代に「漢江の奇跡」と呼ばれる高度経済成長を遂げましたが、88年のソウル五輪を経て90年代に入ると94年には漢江にかかるソンス大橋が崩落するなど経済発展のゆがみが噴出し始めます。監督の上手さは実際に起きたソンス大橋崩落事故を一つのハイライトに、多感な少女の揺れ動く思いを丁寧に描いたことです。 14歳の少女ウニは、両親や姉兄とソウルの団地で暮らしていました。受検教育一本やりの学校になじめない彼女はダメな生徒の烙印を押され、男女の友達や後輩の女子とデートや悪さをしています。餅屋を切り盛りする両親は、子どもたちの不安な思いに向き合う余裕がなく、そんな両親の目を盗んで兄はウニに暴力を振うのです。孤独な思いを抱えていたウニの通う漢文塾にある日女性教師のヨンジがやってきました。自分の話に耳を傾けてくれる大人の彼女に、ウニは次第に心を開いていきます。 この作品のキーワードは「喪失」でしょう。昨日まで親しかった男友達や女友達に手ひどい裏切りをされたり、また近づいてきたり。あるいは元気そうだったウニの叔父が急死したり。いずれも予兆なく消えるので、喪失感もひときわです。このイメージはまさに橋の崩壊と重なります。 印象的だったのは「親よりも先輩が好き」と言って近づいてきた後輩の女子が突然ウニを無視し出したこと。ウニが問いただすと「前学期のことでしょ」と平然と答えます。スピードばかりが優先される社会への皮肉に聞こえました。 漢文塾の女性教師がウニに言い残した「殴られないでね。誰かに殴られたら立ち向かうのよ。黙っていたらダメ」という強いメッセージは監督自身が体得した人生上の心構えに違いありません。

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