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時任三郎、渡部篤郎、藤木直人……ヒロインを支え、新たな魅力を引き出す“お父さん”俳優たち

リアルサウンド

19/9/23(月) 6:00

 今期ドラマで“お父さん”役として主人公を支え、味のある演技で存在感を放った俳優たちがいる。ヒロインを演じる女優たちの新しい魅力を引き出すだけでなく、作品に深みを与え、縁の下の力持ち的な役割も担う。ただ年齢を重ねるだけでは醸し出せない大人の男のかっこよさ、役者としての彼らの底力を検証したい。

●『監察医 朝顔』(フジテレビ系)時任三郎
 まず、『監察医 朝顔』では、法医学者の朝顔(上野樹里)の父であり、仕事相手でもあるベテラン刑事の平を演じた時任三郎。日常の何気ないやりとりも丁寧に描かれ、気負わない安定感のある演技を見せてくれた。医療ドラマ、刑事ドラマという枠を超えてホームドラマの要素も強く感じられた本作。ほのぼのと温かみのある普段の生活があるからこそ、大切な存在を失うことの苦しみや喪失感の大きさが迫ってくる。

 穏やかな毎日を送っている父と娘だが、2人は共通の深い悲しみを抱えている。娘の朝顔にとって母であり、平にとって最愛の妻である里子(石田ひかり)が震災で行方不明となった。平は、時間があれば東北に向かい、まだ見つかっていない妻の遺体を探している。そして、妻のために花を飾ることを忘れていない。セリフでどれほど愛しているかを説明しなくても、その表情が物語る。

 最近では2017年7月期ドラマ『過保護のカホコ』(日本テレビ系)で父親役を好演したことや実生活で3児の父として2007年に「ベスト・ファザー イエローリボン賞」受賞した印象も強く、いいお父さん役にピタリとハマる時任三郎。

 主演の上野樹里とはNHK大河ドラマ『江~姫たちの戦国~』でも父と娘を演じていた。父の浅井長政は、娘の江が生まれてすぐに織田信長との戦で敗れて自害。そのため『江~姫たちの戦国~』では共演シーンがなかった。東日本大震災のあった2001年の大河ドラマで共演した2人が、震災を描くドラマでこうして再び共演。

 「10年ぶりの月9が、くしくも同じ“法医学”をテーマにしたドラマだということに驚いています」と自身もドラマ公式サイトで語っているように、10年前の月9ドラマ『ヴォイス~命なき者の声~』で法医学教室の教授を演じたことも何か強いつながりのようなものを感じる。

 ちなみに朝顔の結婚相手で、平にとっては義理の息子にあたる桑原真也役の風間俊介とも何度も共演している時任。リアルサウンド映画部のインタビューでも「はじめて風間くんとやった仕事では、息子が犯罪者という設定だったので、今、同じ刑事として演じている感じが微妙なところではあるんですけど(笑)」と、その関係性を自然体で語っているが、素晴らしい役者というのは相乗効果によって新しい魅力を作り出していくものなのだ。犯罪者の息子(風間)と息子が起した事件に苦悩する父親(時任)を演じた『それでも、生きてゆく』(フジテレビ系)の忘れられない演技があり、本作で見せる複雑な表情がある。

 1980年代に『ふぞろいの林檎たち』(TBS系)、『ライスカレー』(フジテレビ系)など、当時の若者を代弁するような青春群像劇の中心的存在として活躍した時任三郎。令和の時代になり、現代の父親の象徴となるような家族ドラマの役割を担っている。

●『ルパンの娘』(フジテレビ系)渡部篤郎
 一方、話題のドラマ『ルパンの娘』に出演している渡部篤郎のように、恋人役から父親役へと変化を遂げる俳優もいる。しかも、『ケイゾク』(TBS系)や『外事警察』(NHK総合)、『ST警視庁科学捜査班』(日本テレビ系)、『ビター・ブラッド~最悪で最強の親子刑事~』『警視庁いきもの係』(いずれもフジテレビ系)など、クセの強い刑事を数多く演じてきて、今回の『ルパンの娘』では初めての泥棒役に挑戦。それだけでも驚きなのに、妻の宝飾品を専門に狙う美魔女泥棒を演じるのが小沢真珠で、引きこもりの息子役が栗原類、そして義母で伝説(謎)の鍵師を演じるのが『カメラを止めるな!』で強烈な印象を残したどんぐりなのだ。

 こんなにも個性的な家族に囲まれ、泥棒といってもタワーマンションで品よくキャビアを調達して高級ワインや日本酒をたしなむダンディーな父、三雲尊を演じる渡部篤郎。娘の華(深田恭子)と警察一家の長男である桜庭和馬(瀬戸康史)の恋愛にヤキモキし、時折普通の父親らしい顔を見せるのも逆に新鮮に感じられる。

 第10話で深田恭子が祖母マツとして回想シーンでセーラー服になり、その可愛らしさがSNSでも話題に上っていたが、17年前の『First Love』(TBS系)では、深田恭子がヒロインでその恋人役が渡部篤郎だったのも感慨深い。2人は『まっすぐな男』(カンテレ・フジテレビ系)でもヒロインと元恋人役で共演していた。

 数多くの恋愛ドラマ、刑事ドラマで主演俳優として輝き、個性を生かしながらキャリアを築いた今、ヒロインを支える縁の下の力持ちとしてサポートする役柄を好演している。ギャップのある人はモテるといわれるが、つねに進化し続け、作品を通して多くの驚きをもたらす存在というのはやはり魅力的だ。

●『なつぞら』(NHK総合)藤木直人
 連続テレビ小説『なつぞら』でも、藤木直人が柴田家の少し頼りない父親・剛男を演じているが、その「優しくて強い」お父さんの存在の大きさは誰もが感じていることだ。何しろ、彼の存在がなければ、ヒロインのなつ(広瀬すず)は家族と再会することも、夢を叶えることもできなかった。

 クールなイケメン俳優として魅了するだけに留まらず、心の機微にふれる演技で作品に奥行きを持たせる。ヒロインをサポートしていく力もまた、新たな魅力へとつながるのだ。

●『サザエさん』(フジテレビ系)西島秀俊
 先日、フジテレビ開局60周年、アニメ『サザエさん』放送50周年を記念する企画として実写版『サザエさん』(フジテレビ系)が11月24日に放送されると発表があった。現在放送しているアニメの20年後を舞台とし、主人公のサザエさんを天海祐希が演じる。サザエさんの夫で中間管理職のマスオさんを演じるのは西島秀俊。

 『きのう何食べた?』(テレビ東京系)で料理上手な弁護士の筧史朗役が新鮮だったが、優しくてお人好しのマスオさんを演じるというのも意外で興味がそそられる。マスオさんの息子であるタラちゃんが成田凌で、いったいどんな親子になるのか。(池沢奈々見)

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