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戸田恵梨香、『俺の家の話』で芸達者ぶりがさく裂! さくらの奥深くに忍ばせる“強さ”

リアルサウンド

21/3/25(木) 6:00

 長瀬智也主演、宮藤官九郎脚本で贈る連続ドラマ『俺の家の話』(TBS系)。タイトル通り、長瀬演じる観山寿一の“家族”の話が物語の中心であるが、そんななか“部外者”として最後まで観山家に出入りしているのが、戸田恵梨香演じる志田さくらだ。後妻業を思わせるミステリアスな登場から、目を輝かせて寿一に「好き」と乙女心全開につぶやくなど「同一人物か?」と思わせる相変わらずの芸達者ぶりを披露している。

 放送前の記者会見で戸田は、さくらという役について「監督やプロデューサーさん現場で話をしているのですが、撮影に入っても、さくらがどんな人物なのか分からない」と話しており、「あえていうなら」と前置きし「断片的で多面的」と表現していた。

 物語のスタート時、人間国宝である観山寿三郎(西田敏行)の介護ヘルパーとして登場したさくらは、寿三郎から結婚を申し込まれ、「遺産を譲渡すると」宣言された。素性の知れない女性と結婚し、さらに遺産まで譲渡するという寿三郎の行動に納得できない寿一の弟・踊介(永山絢斗)は、インターネット上でさくらのことを調べると、資産家老人をカモにする後妻業の女だと揶揄されている書き込みを見つけ、家族から疎まれる存在になる。

 しかし、そこからさくらは少しずつ変化を見せ始める。まずは、寂しい老人の世話をしてなぐさめ、それに見合った対価をもらっている」とお金への執着を見せつつ、息子の養育費に行き詰っていた寿一には、あっさりお金を貸してくれるのだ。この時点で、寿一への好意的な描写はなかったので、まだなにか裏があるのかも……という含みはあったが、その後の寿一の家族に対する男気ある行動を見ていくうちに、徐々に寿一を見るさくらの目の輝きが変わっていくことが実感できる。こうした戸田の非常に繊細な芝居は多くの視聴者を惹きつける。

 そして第4話では、寿三郎のエンディングノートにあった「ビューティフルライフロケ地めぐり」の途中に倒れてしまったさくらを、寿一が“山賊抱っこ”したことで、さくらの恋心のスイッチがオンに。第5話では、ついに寿一に「好き」と告白してしまう。この時のさくらの乙女心が爆発したような表情は、物語がスタートしたときのさくらとはまさに別人のような佇まいだった。

 寿一への思いに気づいてしまってからのさくらは、まさに押しの一手。寿一が戸惑いを見せるなか、プロポーズの返事をせがんだり、山賊抱っこを要求したり……と、これまで数々のキャラクターを演じてきた戸田をしても、ここまで乙女心全開のキャラクターは珍しい。まさに登場時とは別人に見えるほどだ。

 戸田はさくらについて「断片的」という言葉を使ったが、シーンだけを繋いでいくと確かに、まとまりがなくつかみどころのない“断片的”なキャラクターに見える。しかし、物語全体を俯瞰してみると、さくらには、どんな状況でも信念を持ち、貫き通そうとする“強さ”と、人の気持ちを理解できる“優しさ”というブレない軸を持っている一貫性のある女性のように感じられる。

 だからこそ、多重人格かと思われるような変わりようも、視聴者はリアリティを持って無理なく受け入れられるのだろう。どんなキャラクターか固まらないまま手探り状態で撮影に入ったという戸田だが、断片的なキャラクターを演じつつ、しっかり一本筋を通すところに、彼女の女優としての凄みが感じられる。特に“強さ”を奥深くに忍ばせれば忍ばせるほど、戸田の魅力は増すような気がする。

 怪しさ、強さ、優しさ、柔らかさ……何層にも感情を纏ったさくらは、最終回どんな形で“俺の家”の一員になるのか。終わってしまうのが惜しいほど、愛おしい面々が揃った観山家。彼らの明るく楽しい未来への道には、きっとさくらもいるはずだ。

■磯部正和
雑誌の編集、スポーツ紙を経て映画ライターに。基本的に洋画が好きだが、仕事の関係で、近年は邦画を中心に鑑賞。本当は音楽が一番好き。不世出のギタリスト、ランディ・ローズとの出会いがこの仕事に就いたきっかけ。

■放送情報
金曜ドラマ『俺の家の話』最終話
※15分拡大スペシャル
TBS系にて、毎週金曜22:00〜22:54放送
出演:長瀬智也、戸田恵梨香、永山絢斗、江口のりこ、井之脇海、道枝駿佑(なにわ男子/関西ジャニーズJr.)、羽村仁成(ジャニーズJr.)、荒川良々、三宅弘城、平岩紙、秋山竜次、桐谷健太、西田敏行
脚本:宮藤官九郎
演出:金子文紀、山室大輔、福田亮介
チーフプロデューサー:磯山晶
プロデューサー:勝野逸未
編成:松本友香、高市廉
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS

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