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小芝風花の抜群の表現力が光る 『モコミ』最終話に向けて広がる優しい世界

リアルサウンド

21/3/28(日) 11:35

 「もしまた萌子美の力が戻ってモノと話せるようになったら、その力を何に使いたい?」――花やモノ、相棒でぬいぐるみのトミーの声さえ全く聞こえなくなった萌子美(小芝風花)に対して、祖父の須田観(橋爪功)が問いかける。土曜ナイトドラマ『モコミ~彼女ちょっとヘンだけど~』(テレビ朝日系)も第9話、ついに最終話まで残すところ1話となった。

 「突然モノと話せなくなるのってどんな感じかな?」と母親の千華子(富田靖子)と父・伸寛(田辺誠一)が話し合うシーンが描かれる。今まで自転車に乗れていたのに急に乗れなくなる感じ? いやもっと世界が変わる感じで謎の病気が流行って突然皆と会えなくなるとか……と、このコロナ禍を示唆するような内容を交えながら、全く“自分ごと”としては実感出来ないような状況をああでもないこうでもないと話し合う。

 前話、観が何度も「“普通”って何だ?」と声を上げていたが、この萌子美の身に起きている摩訶不思議な出来事を、常人にはわかりっこないことを、それでも「どんな感じだろう?」とまず想像してみようと試みるようになったことこそ、本当にこの両親にとっても大きな大きな前進だと言えるだろう。

 伸寛の田舎移住計画を進める中で、実は観が妻と田舎生活をするために住居を探していたことが発覚。観の不倫が許せず、そんな観が妻とのセカンドライフを考えていたなんてにわかに信じられない千華子は、嘘だと決めつけてかかる。何事も“断罪”してしまうのは簡単だ。そして、“許せない”という感情は本当に人を疲弊させてしまう。もちろん、世の中には許されないこともあるだろうが、自分の心に少しでも“想像”してみる余地を残しておくことが出来れば、随分気の持ちようは変わってくるのではないだろうか。伸寛が言う通り「いつまで続けるんだ? 疲れるだけだろ」というのは本当にその通りで、何事も「こうあらねばならい」「こうあるべき」と、そればかりに縛られてしまうのは、あまりに窮屈で、誰かの失敗や間違いを許せないことは何より“自分自身の生きやすさ・心地よさ”を奪ってしまうことになる。萌子美が兄・俊祐(工藤阿須加)の不在時に何とか常連客からのフラワーアレンジメントのオーダーに応えようと、“普段の自分を封印しなきゃ”“オーソドックスなアレンジメントをしなければ”と思い、「自分じゃない誰か」になろうとして苦しかったように。それを境に、これまで見えていた世界が一変してしまったように。

 トミーの紛失に気づき必死に探せども見つからない中、萌子美が最後の頼みとしたのは、林の中の木に手をかざし、彼らにトミーの居場所を聞くことだった。

 ここでもまた小芝風花の抜群の表現力が光っていた。喪失感からの脱却、急に自分の世界が再び色彩を取り戻し息吹が吹き込まれたさまを、あの静かな演技の中でリアルさと切実さを持って見せてくれていた。初めての“喪失”やそれに伴う静かな“絶望”よりも、何かを“取り戻した”時の感覚や半信半疑からそれが確信に変わる経緯、すぐには嬉しいとは両手を挙げて喜べない“慎重であろうとする自分”と“今すぐ飛び上がってでも歓喜したい自分”の狭間を表現する方が余程難しいだろう。

 次週、いよいよ最終話。萌子美が冒頭の問いかけに対して答えていた「私が楽しいと思えて、誰かのためになることが良い」というこの特別な力の使い道はどんなことなのか。予告で俊祐が「今、どうしてもやりたいことがある」と言っていたのは何なのか。佑矢(加藤清史郎)が踏み出そうとしている新しい道も、観が嘘をついてまで娘夫婦の家で一緒に住むようになった理由も気になるところだ。この温かく優しい世界の向かう先を見届けたい。

■佳香(かこ)
元出版社勤務。現在都内OL時々ライター業。三度の飯より映画・ドラマが好きで劇場鑑賞映画本数は年間約100本。Twitter

■放送情報
『モコミ~彼女ちょっとヘンだけど~』
テレビ朝日系にて、毎週土曜23:00~23:30放送
出演:小芝風花、加藤清史郎、工藤阿須加、田辺誠一、富田靖子、橋爪功、水沢エレナ、内藤理沙ほか
脚本:橋部敦子
演出:竹園元(テレビ朝日)、常廣丈太(テレビ朝日)、鎌田敏明
音楽プロデュース:S.E.N.S. Company
音楽:森英治
エグゼクティブプロデューサー:内山聖子(テレビ朝日)
プロデューサー:竹園元、中込卓也(テレビ朝日)、布施等(MMJ)
制作著作:テレビ朝日
制作協力:メディアミックス・ジャパン(MMJ)
企画協力:オスカープロモーション
(c)テレビ朝日

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