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ぴあ

いま、最高の一本に出会える

おとな向け映画ガイド

オススメはこの3作品と新文芸坐の鈴木英夫監督特集。

ぴあ編集部 坂口英明
19/9/16(月)

イラストレーション:高松啓二

今週末に公開の作品は21本。とても多い週です。全国100スクリーン以上で拡大上映される『アド・アストラ』『HELLO WORLD』『アナベル 死霊博物館』の3本と、ミニシアターや一部シネコンなどで上映される18本です。この中から、おとなの映画ファンにオススメしたい作品をご紹介します。

『アド・アストラ』



やっぱり、こういう映画は、映画館の大画面で観ると最高です。ブラッド・ピット主演・製作のSF大作です。『スター・ウォーズ』を始めとしたスペースオペラや、ホラーの味付けをしたものとは異なり、科学的なリサーチを徹底し、リアリティを重視した作品です。とはいえ、エンタテインメントとして、面白いストーリー、わくわくする展開、ちょっと考えさせられる内容もほしい。そういう期待にも充分答えてくれます。

近未来。地球上で大規模火災や事故が頻発。海王星周辺から発信される電流が原因とわかります。この時代は、月はもちろん、太陽系で人間の移動があたりまえになっているのですが、海王星はさすがに遠く、謎めいています。地球を滅ぼしかねない怪電流に、16年前に消息をたった探査船の船長が生存し、関係をしているかも、という極秘情報があり、「アメリカ宇宙軍」の命令で、その船長の実の息子で現役の宇宙飛行士が、父を探しに宇宙に飛び立ちます。英雄であり崇拝もしていたが実は家族には冷たかった父。果たして生きているのか、そして本当に邪悪な存在になってしまったのか……そんなストーリー。

主演がブラピ、父親役はトミー・リー・ジョーンズです。どのくらいの未来なのかはわかりません。映画のディテールで想像するしかありません。それを考えるのも楽しいことです。宇宙服は逆に懐古的で、月旅行ロケットには客室乗務員がいますし、着いた月のターミナルは安っぽい地球の普通の空港のようです。いろいろツッコミどころもないわけではありませんが、そのあたりも面白いんです。

プレス用資料でちらっと触れられていますが、『地獄の黙示録』を私も連想しました。エンドタイトルもあの映画と関係ありそうで……。親しい人と観終わって、あれこれ話したくなる映画です。

『葬式の名人』



このところ絶好調の前田敦子さん主演作です。大阪の茨木市がスポンサーになって作られた映画。当地で青春時代を過ごした川端康成の、初期小説に想を得ています。

高校卒業から10年、突然届いた同級生の訃報で級友たちが集まります。葬儀場のトラブルでもめている間、思い出話の勢いで、野球部のピッチャーだった故人を偲び、母校まで棺を担いでいくことになります。話はもりあがり、お通夜はこちらで行うことになるのですが……。その高校が川端の母校でもある茨木高校です。前田さんの役どころは、同校の卒業生で、シングルマザー。同級生役で高良健吾も出演しています。

話のなかにインサートされる青春時代のエピソード、謎のできごと、謎の登場人物、明かされる新事実など。ミステリアスで楽しめる一夜の青春ファンタジー映画です。

ゲストスターが多彩です。まず、伝説の女優・有馬稲子、謎の役どころです。他に、僧侶役で栗塚旭、やくざの親分役で中島貞夫監督と京都時代劇の斬られ役者の福本清三がカメオ出演するなど、映画ファンにはうれしいキャスティングもいろいろ。びっくりしたのは上方落語の人気者、桂雀々。伊丹十三監督の『お葬式』で、江戸家猫八が演じた葬儀屋を完コピしています。映画評論家でもある樋口尚文監督の遊び、というか伊丹監督へのオマージュが粋です。

『アルツハイマーと僕 〜グレン・キャンベル 音楽の奇跡〜』

この作品、マジに感動します。アルツハイマーを患ったカントリー歌手グレン・キャンベルの、最後のコンサートツアーを収めたドキュメンタリーです。

キャンベルは60〜70年代に活躍、『ジェントル・オン・マイ・マインド』『恋はフェニックス』『ラインストーン・カウボーイ』などの大ヒット曲を持つ、アメリカを代表する歌手のひとりです。2011年にアルツハイマー病であると発表、その病をおして、2年間で151回ものコンサートで全米を回ります。愛妻と、3人の子供を含むバックバンドとのツアーです。

いつもにこやかに笑っています。もう子供の名前も思い出せない。いま、どこにいるのか、も実はあいまい。でもすごいですね。「ハロー! ニューヨーク!」とか、ご当地の地名もいれてコンサートのMCも立派にこなしていきます。体にメロディーが染み込んでいるのでしょう。かつてザ・ビーチボーイズの奏者として参加したこともある、ギターのストロークは確かです。一度、歌が止まったシーンがあります。歌詞を映し出すプロンプターが故障してしまうとお手上げです。歌詞は覚えていないのです。「2回歌いたいんなら歌って」「間違ったって全然かまわない」、温かいファンたちは、もう観られるのは最後、と覚悟しています。どこも満員の盛況です。

ツアーの途中、2012年2月にはグラミー賞の特別功労賞生涯業績賞を受賞します。歌い終わり、スタンディングオベーションのあと、ポール・マッカートニーが興奮の面持ちで声をかけます。他にもブルース・スプリングスティーン、シェリル・クロウ、ジ・エッジ(U2)、チャド・スミス(レッド・ホット・チリ・ペッパーズ)など多くのミュージシャンが賛辞をよせています。

2012年11月、ツアーを終え、最後のレコーディングに臨みます。バックは、あの伝説のスタジオ・ミュージシャングループ、レッキング・クルーです。映画はここまで。グレン・キャンベルはそれから5年後、17年8月8日に亡くなります。享年81歳。なんという人生!

特集上映、映画祭では。

「精緻と克明 鈴木英夫の手腕」池袋・新文芸坐(9/20〜30)

「精緻と克明 鈴木英夫の手腕」池袋・新文芸坐(9/20〜30)

鈴木英夫監督は、現役を退いてだいぶ経ってから評価された映画監督です。三軒茶屋の西友(元ams)のなかに、かつてスタジオamsというスペースがあって、「1994年にここで、鈴木英夫特集を組んだのが、現在の鈴木英夫評価のきっかけでしょう」(川本三郎共著『日本映画 隠れた名作』)。ここに通った映画好きが、鈴木英夫を広めていったのです。その後も作品は、特集上映などでよくかかるようになりました。私も名画座で『非情都市』などを観て、すごい監督がいるなと思ったものです。

今回は久しぶりの監督特集。代表作『その場所に女ありて』や、丹波哲郎主演で、戦後の人気ストリッパー、ジプシー・ローズが出演している『殺人容疑者』など、10本が上映されます。ぴあアプリの人気企画、水先案内では、居酒屋評論家の太田和彦さんが「待ってました!の鈴木英夫特集はすべて観る価値あり」と書いています。これは通わねば。

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