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Mrs. GREEN APPLE、壮大なステージ演出で魅せた第1章の集大成 『ARENA TOUR / エデンの園』代々木公演レポート

リアルサウンド

20/2/26(水) 8:00

 生命力。あるいは、人間のたくましさ。一言でいえば、Mrs. GREEN APPLE(以下、ミセス)の『ARENA TOUR / エデンの園』ファイナルが開催された国立代々木競技場第一体育館において全身で感じたのは、そんな正のエネルギーだった。楽曲ごとのメッセージはもちろんあるし、そこに込められたメンバー、とりわけ作詞作曲をしている大森元貴の思いもある。だがそれが1万数千人という規模のオーディエンスの前に放たれたとき、そこに生まれるのは、とにかく生きてここで出会えたという喜びと、この先もそれは続いていくのだという確かな手応え。次々と演奏される曲たちが、カラフルに展開する舞台演出が、そして感情を開け広げにしながら観客と対峙する5人の表情が、とても美しく輝いていた。

 「エデン」を想起させる天井に吊るされた草花。その草花を囲った枠が白く光ると、大森の「代々木ー!」という絶叫とともにライブはスタートした。真っ赤なライトで照らされた1曲目「インフェルノ」からステージ上には炎まで上がる。いきなりハードエッジな幕開けに、場内の空気もガツンと熱くなる。さらに続けて、今度は青をテーマカラーに「藍(あお)」。「踊れるか、代々木!」という大森の声に歓声が上がる。青いピラミッドの中で、複雑なリズムと音符の連なり、重低音が絡み合って鮮やかに世界を立ち上げていく。

 最初のMCで大森はこの日のセットリストを「『太鼓の達人』で言ったらずっとコンボ」と表現していた。それは彼らのアルバムやライブすべてに共通して言えることなのだが、この日もその言葉どおり、ずっとクライマックスが続くようなライブとなった。前半のハイライトは、ループするリズムに合わせて緊張感のあるサウンドが展開する「ProPose」と、深いリバーブの効いた山中綾華のドラムとファンファーレのような若井滉斗のギターリフ、ドラマティックなメロディがスケールの大きなロマンを描き出す「Soup」。この広い空間にふさわしい大きさを持った最新作『Attitude』の曲たちが、ダイナミックに躍動する。

 ステージ上にスモークが充満するなか、海賊姿のダンサーも登場して一大エンターテインメントを展開した「Viking」では大森もダンスに参加し、かと思えばその後の「クダリ」では一転して花道の先端に置かれた椅子に座った大森による弾き語りから始まる。ヒップホップのリズムを取り入れた「REVERSE」に、密度の高いバンドアンサンブルがロックアンセムとしての力を増幅させる「ナニヲナニヲ」や「Ke-Mo Sah-Bee」。目まぐるしく展開するセットのなかで、だんだんと浮かび上がってくるのはメンバー5人によるアンサンブルのタフさだ。ライブバンドとしても加速度的に進化してきた彼らの音のもつパワーが瞬く間にここを豊かな音楽の楽園へと変えていく。その様子が『Attitude』というアルバムのテーマや「エデンの園」というツアータイトルとリンクしてひとつのメッセージとして響いてくるようだ。

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 メンバーのくだけたMC(髙野清宗によるしずかちゃんや若井によるジャイアンなど『ドラえもん』の非公式モノマネ)を挟み「次の曲はバラードです」という大森の曲紹介で始まった「僕のこと」は、今のミセスの存在とこのライブの意味を一身に背負うような名演だった。絶望も挫折も終わりも痛みもあるこの日々を〈ああ なんて素敵な日だ〉と歌い上げるこの曲が、この広い会場に集まったひとりひとりの生を照らし出す。バンドが歩んできた年月がもっと大きな物語とつながる瞬間は感動的だった。

髙野清宗(Ba)

 「僕のこと」を歌い終えると、ここからはラストスパート。メンバーも充実した表情を浮かべながら「StaRt」や「WanteD! WanteD!」で観客を巻き込んで巨大なパーティをぶち上げる。さらに藤澤涼架(Key)が「いけるか!」と煽って「青と夏」へ。〈映画じゃない/君らの番だ〉というフレーズが、強い思いとともに放たれる。本編最後は『Attitude』のラストトラックでもある「Folktale」。それまでのハイテンションから一気にリラックスしたようなサウンドが、観客の手拍子をいざなう。世界をまるごと抱きしめるような愛を歌うこの曲が再びみんなの心を明るく照らし出してみせた。

 アンコールでは、まずは大森と藤澤がふたりで登場してピアノ伴奏と歌で「Circle」を披露。そして大森の「アンコールありがとうございます。さいっこうでしたね!」という言葉を受けて、メンバーそれぞれが話し出す。「ここまでの第一章の集大成として掲げてこのツアーをやろうとなりました。ひとりひとりの思い出も毎公演感じました」と藤澤。髙野は「本当に幸せなツアーでした。終わりたくないです」と名残を惜しみ、山中は「会場に足を運んでくれて、声と熱を届けてくれて。そうやって支えられてるんだなと思いました」と観客への感謝を述べる。そして若井は「この場に立ててこの景色を見れていることが僕たちは幸せです」と顔をくしゃくしゃにしながら語った。そんなメンバーの姿を受けて大森も「やっぱりアリーナツアーというのは夢のまた夢で。そうなるもんだと思いバンドを始めましたが、まさかこんな爆速でこの景色を見れるとは思ってもみなかった」と語りながら、感極まっている様子だった。

 「これから先、良い曲を作って届けられたらなと思ってます。受け取って欲しいなと思います」。大森の口によってシンプルに語られた“新章”への決意。その言葉に込められた思いは、会場に詰めかけた人々にはしっかり届いていただろう。そして最後に演奏されたのはインディーズデビュー作『Progressive』の1曲目に収録されていた「我逢人(がほうじん)」。かき鳴らすギターと力の限りに打ち鳴らすドラム。それを支えるベースと、その上を躍る鍵盤。そして真ん中で白いギターを提げた大森が〈人は、人は/笑顔であってほしいな〉と歌う。この日最後の大合唱は、この日一番の声量と強さで鳴り響いた。

■小川智宏
元『ROCKIN’ON JAPAN』副編集長。現在はキュレーションアプリ「antenna*」編集長を務めるかたわら、音楽ライターとして雑誌・webメディアなどで幅広く執筆。

■セットリスト
Mrs. GREEN APPLE『ARENA TOUR / エデンの園』
2月16日(日)国立代々木競技場 第一体育館
1. インフェルノ
2. 藍
3. WaLL FloWeR
4. VIP
5. アンゼンパイ
6. ProPose
7. Soup
8. 愛情と矛先
9. Viking
10. クダリ
11. REVERSE
12. ア・プリオリ
13. ナニヲナニヲ
14. Ke-Mo Sah-Bee
15. 僕のこと
16. StaRt
17. WanteD! WanteD!
18. 青と夏
19. CHEERS
20. lovin’
21. Folktale
-アンコール-
22. Circle
23. 我逢人

Mrs. GREEN APPLE オフィシャルサイト

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