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Sexy Zone『PAGES』は様々な表情を感じ取れる作品に 楽曲ごとのコンセプトから紐解く

リアルサウンド

19/3/24(日) 8:00

 男性アイドルグループ・Sexy Zoneが、6枚目のアルバム『PAGES』を発売した。今作は“人生の1ページ”をコンセプトに生きていく中での様々な感情や景色を切り取った楽曲を全16曲収録したという。まさに彼らの様々な一面を堪能できるような、1曲1曲に異なったカラーが施された作品群が並んでいる。

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 まず、1曲目の「La Sexy Woman」はファンクなリズムを取り入れたアイドル歌謡。彼らのスタイルに直球で勝負したサウンドと〈ため息が出るほど 君の全てがほしい〉といった情熱的な歌詞が印象的だ。2曲目「恋がはじまるよーー!!!」では、歪んだギターが前面に押し出されたファンクロック調の力強いサウンドによってアルバムのテンションを底上げする。3曲目の「すっぴんKISS」でもギターのカッティングがリズミカルに鳴らされる。一貫してファンクなリズムを土台としたサウンドを見せながらも楽曲のカラーは三者三様。近年のジャニーズでファンクと言えば真っ先に思いつくのが嵐の存在だが、嵐流のファンクネスは夜のイメージやパーティー感へと繋がっているのに対し、Sexy Zoneのファンクネスは彼らの“情熱的”な魅力を引き出している。彼らの真っ直ぐで無邪気なイメージと相まって、グループの放つ圧倒的な“ザ・アイドル”感へと繋げている。デビュー時はまだまだあどけなかった彼らも活動を重ねていくうちに変化し、作品にも少しずつ大人なムードが現れているが、こうした情熱的な楽曲を見事に歌いこなす彼らのパフォーマンス力や、4曲目「CRY」での見事な歌唱力を聴けば、彼らの成長を実感できるであろう。

 そんな彼らのさらなる新しい一面を確認できるのが5曲目の「make me bright」だ。この曲は女性シンガーソングライター・iriが作詞作曲を手掛けているが、押しも押されもせぬアイドルグループである彼らが、ふとした瞬間に見せる弱い一面に焦点を当てた、明るい表情の裏に潜む“暗い部分”を照らし出すような佳曲だ。レイドバックしたリズムに〈いっそ 暗い迂回 問題はない〉〈本当の想いはまだ 明らかにはできないや〉といったリリックが並び、華やかな世界に暮らす彼らのリアルをじんわりと映し出すような雰囲気がある。アイドルとしての表面的なイメージに、それだけではない“深み”を与える一曲と言えるだろう。

 Sexy Zoneの良いところは、馬飼野康二や船山基紀といった大御所の作家の音楽性を自らのアイドル性に組み込みながらも、若手アーティストによる提供楽曲も積極的に収録している点である。iriは、先日3rdアルバム『Shade』をリリースしたばかりの新進気鋭のアーティストだが、彼女自身はどちらかと言えば暗く内省的な楽曲を歌うタイプだ。そんな彼女がSexy Zoneに楽曲を提供するにあたって、自分自身の作家性を変に曲げずに、メロディの特徴や韻の踏み方などに彼女のスタイルを維持しながら、彼らにしっかりとフィットするような曲を作り上げた。しかも、人気アイドルである彼らだからこそ意味のある楽曲になっているため、演者と作家の双方のカラーが見事に融和し、単なる“楽曲提供”にとどまっていない。iriによって引き出された彼らの新たな一面は、“様々な感情を切り取った”というアルバムのコンセプトにも合致するし、要所で若手作家を起用するグループの姿勢にも通ずる。さらに言えば、次曲の「イノセントデイズ」で〈今日もコンビニの袋ぶら下げて〉というフレーズのもたらす等身大な世界観へのよい橋渡しとなっており、アルバムのストーリー性という部分においても強い根拠がある。アルバム前半の最も注目すべき聴きどころだ。

 後半に入っても、まだまだ多様な表情を見せていく。ライブパフォーマンスが期待できそうなパーティーチューン「Hands up!」、原一博作曲・船山基紀編曲によるミステリードラマ風の「カラクリだらけのテンダネス」、大人なムード漂う「Wonder Love」など多種多様な楽曲が並ぶ。中でも、ケツメイシのRYOJIが楽曲提供、Integral Cloverが共作と編曲を担当した「君がいた夏に…」は、北欧系のEDMを彷彿とさせるチルアウトだが、この先進的なサウンドをうまくセンチメンタルかつノスタルジックな世界観へと繋げていて面白い。アルバムのラストを締める「いつまでもいつまでも」は壮大なピアノバラードで、グループのデビューからこれまでの活動を振り返るような作品となっている。

 このように、今作は楽曲それぞれにコンセプトを持たせて1枚の作品としてまとめることで、彼らの様々な一面や表情を感じ取れるものに仕上がっている。2011年のデビューから徐々にスタイルが固まりつつあった彼らだが、今回のようなリリースを重ねることで、これからもまたさらに新しい一面を見せてくれるであろう。

■荻原 梓
88年生まれ。都内でCDを売りながら『クイック・ジャパン』などに記事を寄稿。
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Twitter(@az_ogi)

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