Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

斉藤朱夏、逢田梨香子らAqoursメンバーソロ作での表現 グループでの経験や人間性の発露に注目

リアルサウンド

19/10/1(火) 7:00

 6月30日に9周年を迎え、ますますの盛り上がりを見せている『ラブライブ!』シリーズ。なかでも『ラブライブ!サンシャイン!!』より誕生したスクールアイドルユニット・Aqoursは、今年3月より全4都市を巡る初のアジアツアーを開催するなど、シリーズの中核を担う存在として輝きを強めている。

参考:茅原実里からAqoursまで…脈々と受け継がれる歴代歌姫の意志 『ランティス祭り2019』振り返る

 そんなAqoursより、逢田梨香子(桜内梨子役)が6月19日にEP『Principal』、斉藤朱夏(渡辺曜役)が8月14日にミニアルバム『くつひも』でソロアーティストデビューを果たした。メンバー個人単位での音楽活動はユニット加入以前より散見されたものの、Aqoursとして認知度を拡大した上では、逢田と斉藤が先陣を切る形となった。本稿では、2人のソロデビュー作を通して、Aqoursのメンバーが歩むと思われる未来を占ってみたい。

 アフレコから写真集撮影まで、それぞれの仕事に対して真摯に向き合い、プロの表現者として舞台裏での努力は見せまいとする逢田。『Principal』というタイトルは、「今自分に足りていないものや自信を持って先頭に立つという意味合い」を込めて、彼女自身が選んだという(参考:めるも)。Aqoursでは、1stライブでの「想いよひとつになれ」披露時などに、不本意ながら危うげな場面も見られた彼女。『Principal』には、当時の苦い経験も良い意味で反映されているように思われる。

 実際に、同作の収録曲の歌詞は前向きなものばかり。なかでも「FUTURE LINE」は、作詞に畑亜貴、作曲に光増ハジメ、編曲にEFFYというファンにとっては馴染みの顔並びに。曲中には〈プレリュード〉や〈ふるえる指先〉など、逢田自身や桜内梨子を想起させるサプライズも用意されており、彼女のファンを明るい未来へと導く“宣誓”のようにも響いてくる。逢田梨香子は『Principal』を経てもっと“強く”なる。そう確信させられるに違いない。

 翻って、Aqoursのステージでは他のメンバーが感極まるような場面でも、一人あっけらかんと振舞ってきた斉藤。『くつひも』発表時には、幼少期より「ステージでは泣かない」と心に決めてきたことで「多分みんなも私のことを弱い人だと思っていないからこそ、そのイメージを壊さないようにしてきたところがあったと思います」と、その背景を明かしていた(参考:音楽ナタリー)。

 そんな彼女の本心を代弁した『くつひも』。同作で、ほぼ全曲の制作を担当したハヤシケイ(Live Lab.)は、人の痛みに寄り添うような楽曲も多く手がけてきたクリエイターだ。アルバム序盤の「ことばの魔法」では、“言葉を交わすのは掛けがいのない行為である”という斉藤の考えを歌詞に。作品全編に目を向けても、軽やかなポップスで瑞々しい印象を与えてくれた。

 その一方、終盤の「ヒーローになりたかった」では、〈今日も またね 言えないままだ〉といったように、斉藤が周囲の作り上げる“斉藤朱夏”というキャラクターの後ろに隠してきた、ひとりの人間としての不器用さや“弱さ”を露わにしてくれた。『くつひも』は、固結びだった斉藤朱夏の本心を、そっと“解いて”くれる作品だった。

 逢田が目指す頼りがいある理想像と、斉藤が見せた心の柔らかな場所。たとえ明言されずとも、彼女たちがそれぞれのデビュー作で表現した想いには、元来の性格や歩みはもちろん、Aqoursでの経験から芽生えた感情も確かに反映されていることだろう。単純に考えれば、2人はこれまでAqoursでの活動をメインとしてきただけに、リスナー側もその枠組みを通して人となりを知る機会も多かったはず。ソロ楽曲を聴く上で、ユニットでの姿が頭に浮かぶのも無理はない。ただ、ここで大切なのは、逢田と斉藤が自身の役柄を演じる上で発露したのだろうひとりの人間としての感情や物語が、それぞれの初作品で丁寧に掬い上げられていたことである。

 彼女たちの描く強さと弱さは、これまで音楽という形で深く掘り下げられてこなかった側面だ。それを踏まえるに、今回のデビュー作はAqoursの物語に対してどこか補完的であり、部分的に地続きとも表現できるのではないか。そして、ソロアーティストとしても成長を続けるために、改めて“なりたい自分”と“本当の自分”に向き合い、アイデンティティを模索したのだろう。『Principal』と『くつひも』には、逢田と斉藤の“走り出す瞬間”が等身大に収められていた。

 だからこそ、彼女たちの次回作や今後に開催されるだろうワンマンライブに、多くの注目が集まるのも頷ける。声優アーティストの楽曲は特定ジャンルに縛られないため、その自由度も非常に高い。今作で盤石といえる足固めができたからこそ、アーティストにとって重要な試金石といわれる“2枚目”で、どのような楽曲を選択するのか。欲を言えば、デビュー作といえどもう少し尖った内容でもリスナーには受容されたかと思うだけに、さらなるリリースも待ち遠しくなってしまう。

 またAqoursからは、鈴木愛奈(小原鞠莉役)が7月29日にソロアーティストデビューを発表。彼女は過去に『第7回全日本アニソングランプリ』に出場しており、アニソンに対する愛情はユニット内でもとりわけ強いと思われる。自身のソロワークスはもちろん、敬愛するアニソンシンガーらとの共演やコラボ楽曲制作などにも、自然と期待が膨らんでしまう。さらに、小宮有紗(黒澤ダイヤ役)は8月23日にDJデビューを発表しており、他のメンバーとはまた違った形で音楽に携わることに。彼女の動向も楽しみに見守りたい。

 ソロアーティストとして、また新たなスタートを切った逢田梨香子と斉藤朱夏。2人に続き、Aqoursのメンバーからは今後も目が離せない展開が待っているのだろう。彼女たちが個人としても真価を試される季節は、今まさに始まろうとしている。(一条皓太)

新着エッセイ

新着クリエイター人生

水先案内

アプリで読む