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『カネ恋』が示す、“お金と恋”を冷静に見つめ直す方法 玲子と慶太は互いに補い合う関係に

リアルサウンド

20/9/23(水) 6:00

 今週もありがとう、『カネ恋』――。

 松岡茉優演じる玲子のように、毎回お礼を言いたくなるドラマ『おカネの切れ目が恋のはじまり』(TBS系、通称『カネ恋』)。本作で描かれるテーマは“お金と恋”。一見相反するように見えて、実は切っても切れないものであることを気づかせてくれるドラマだ。むしろ連動して考えるからこそ、冷静に考えられることができるようにも思う。

そのコストは、リターンのある投資か否か

 おもちゃメーカーの経理で働く“清貧女子”の玲子は、社長息子で“浪費男子”の慶太(三浦春馬)にお金の使いみちは「消費」「浪費」「投資」の3つであることをレクチャーする。金銭感覚が壊れてしまっている慶太は、8万8800円するアロハシャツを「センスが磨かれるから投資」と茶目っ気たっぷりに主張するも、玲子は投じた金額に対して「リターンが見込めない」と却下。すると慶太は、玲子が早乙女(三浦翔平)に貢ぎ続けているプレゼントには、リターンがあるのかと反撃するのだった。

 聞けば、玲子の片思いは15年間続いているという。その間、一切のリターンはなし。明らかに玲子の気持ちに気づいているのに気づかない振りをしている早乙女に、我慢ならなくなった慶太はド直球に「どう思っているのか」と問う。すると、早乙女の口から「玲子は妹のようなもの」という恋愛の対象外であるという答えが。うすうす玲子もわかってはいたのだ。15年動けずにいた恋は「ほころび」だらけだということを。

 そんな玲子も、慶太の元カノ・まりあ(星蘭ひとみ)の「ほころび」にはすぐに気づく。20代の貴重な3年間を「投資」して、やっとこぎつけたセレブな彼との結婚。本当の自分を出せず、相手からの愛情も感じられないけれど、今さら手放すことなんてできない。そう意地になっている、まりあの現状を玲子は「コンコルド効果ですね。埋没費用効果とも言います」とお金の知識で整理していく。そして諭しながら、自分自身も同じ状況にいたと理解するのだった。その徐々に、悟っていく松岡の表情が実に巧い。

玲子でさえも陥った「コンコルド効果」とは?

 コンコルド効果とは、このままでは損失を出し続ける結果になることがわかっていても、これまでの投資を惜しんで途中でやめることができなくなってしまう心理的傾向のこと。難しい経済用語にも聞こえるが、「ここまできたらもったいないから」と続けてしまっているもの、といえばきっと身近に感じられるはず。

 例えば、ゲームの課金ガチャ、カラオケのフリータイム、期待はずれだった本……そして、幸せを感じられていない人間関係も。もちろん「すべての経験にムダなことなんてない」と言うこともできる。だが、後悔しない選択をするために、どんなリターンを想定して自分の資産(時間、お金、想い)を投資しているのか。ここまで投資しても期待していたリターンがないなら、次へ行くという限度を設定しておくという視点は持っていて損はない。

 また、コンコルド効果に陥らないために、客観的な視点で助言をしてくれる人をそばに置くというのも効果的な対策だそう。恋に関しては全く試算のできない玲子に、今回は慶太が見事にその助言役になってくれたと言える。お金に関しては玲子が、恋愛に関しては慶太が、それぞれの不得意部分を補い合う関係性になった2人。自然と1つの日傘のもとに入る姿が、人生に降り注ぐ様々な厳しいものを一緒に避けていくかのように見えて実に微笑ましい。

お金ではないもので償おうとした慶太の成長

 玲子と関わるうちに、慶太の中にも変化が起きてくる。心配している形として現金を渡す母親のもとで育った慶太は、その価値観をそのまま受け継ぎ、愛情を常にお金やモノで示してきた。職場の人にお菓子を買って渡すのも、まりあへのブレスレットのプレゼントも……。そんな慶太が玲子へのお詫びの品にと選んだのは、あのサルの絵が描かれた豆皿だった。

 玲子が1年間見つめ続けたが、慶太が雑に買って捨ててしまった豆皿。まったく同じものはもう手に入らないけれど、代替品があるのならと探し回る。それは、玲子があの豆皿にかけた愛情を理解したということ。でも、あの豆皿は見つからない。改めて、お金をかけても手に入らないものがあるということを知ったのではないか。

 そこで慶太が思いついたのが、自分でサルの絵を描いた豆皿を作ること。想いには想いで応えていく。お金があるから動かせること、そしてお金ではない何かでしか動かせない人の心があること。それは、きっと「変わり続けるもの」と「変わらないもの」。きっと慶太が担うおもちゃ作り、次世代に夢を繋いでいく場の提供に必要不可欠な両輪だ。

 慶太の誠意の証でもあるその豆皿は、まだ玲子のもとには渡らない。どうやら、玲子の恋が動き出しそうだと空気を読んだのだ。だが、その恋の相手である早乙女が、男の子から「パパ」と呼ばれている様子が映し出される。次々と予想外の出来事が起こる本作。計算できない展開を、来週も楽しみにしている。

■放送情報
火曜ドラマ『おカネの切れ目が恋のはじまり』
TBS系にて、毎週火曜22:00~ 22:57放送
出演:松岡茉優、三浦春馬、三浦翔平、北村匠海、星蘭ひとみ(宝塚歌劇団)、大友花恋、稲田直樹(アインシュタイン)、中村里帆、八木優、河井ゆずる(アインシュタイン)、キムラ緑子、ファーストサマーウイカ、池田成志、南果歩、草刈正雄
ゲスト出演:梶裕貴、岡本莉音、トミー(水溜りボンド)、登坂淳一
脚本:大島里美
演出:平野俊一、木村ひさし
プロデュース:東仲恵吾
主題歌:Mr.Children「turn over?」(トイズファクトリー)
製作著作:TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/KANEKOI_tbs/
公式Twitter:https://twitter.com/kanekoi_tbs

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