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『はじこい』から学ぶことは思いのほか多い? 横浜流星が“迷える大人たち”の前に登場したワケ

リアルサウンド

19/2/21(木) 6:00

 雅志(永山絢斗)はかつて、“大人”になって一番良かったことの答えとして、「自由を手に入れたこと」を挙げた。

「自分の意思でやりたいことができること。どんな夢を何度見てもいい。成功も失敗も全部自分のせい」

 彼が言ったことは、間違っていないのかもしれない。子どものころは、「あれをしなさい」「これをしてはいけない」と何かと親や教師から制約を受けるもの。でも、大人になれば“自由”に生きられる。自分の好きなやり方で、その人生を謳歌することができるのだ。ところが、『初めて恋をした日に読む話』(TBS系)に登場する3人ーー順子(深田恭子)、雅志、一真(中村倫也)ーーはすでに社会に出た、“大人”なのであるが、全てが自分たちの思い通りになっているかと言われれば決してそうではない。

参考:深田恭子が明かす、『初めて恋をした日に読む話』男性陣3人の魅力 “こじらせ女子役”への心境も

 雅志は東大進学後、大きな会社に就職し、まさしくエリート人生のただ中にあるようにも見える。ただ、順子という一人の女性に対する上手いアプローチだけは、なかなか叶えられず、もどかしさを感じてきた。第1話で、「俺は失敗したことないけどな」と言っていたものの、すべてが順風満帆というわけではないのだ。前回放送の第6話では順子と一真の関係を疑ったばかりに、一真を殴ってしまう一幕まであり、なかなか大変である。

 一方、一真も一真で何やら心の中に抱え続けているものがあるようだ。そのクールな振る舞いや話し方の陰で、どこか厭世的な印象を漂わせる一真。「つまらないことを真面目にやるのが“大人”だからな」とは、自分の生徒に彼が吐き捨てた言葉であるが、その台詞が示しているように、どこか“諦め”のようなものを抱いている節がある。一真の言っていることも一つの事実ではある。雅志の言うように、自由に生きられるのが大人。でも、それだけでは決して生きていくことなどできない。好むと好まざるとに関わらず、“つまらないこと”もやらなきゃいけないのが大人なのだ。雅志と一真という、同じ世代に生まれながら、だいぶ異なる人生を歩んでいる2人の姿からは、そんな大人の在り方の2面性が垣間見える。

 さて、順子はと言えば、東大受験に失敗した後は、塾講師という仕事をぼんやりとこなしながら人生をさまよっていた一人であった。母親からはしょっちゅう、仕事のことや結婚のことで小言を言われ続け、自分でも何をしたら正解かなんて分かっていなかった。“自由”は大人の特権であるものの、そもそもその“自由”を何に行使すればいいのか……。「人生一度くらいはワクワクしたい。ときめきたい。ずっとそれを探している気がするけど見つからない。見つかる気がしない」と、順子は口にする。

 そんな順子のもとに現れたのが匡平(横浜流星)である。自分とは違い、父親には言うべき不満をぶつけ、その上で東大受験を志願してきた匡平。第2話で、匡平のことを絶対合格させたい、匡平に“夢中”であると酔いに任せて溢していたように、彼女に“ワクワク”を届けうる存在が登場したのだ。“ときめき”、“ワクワク”。それこそまさに大人になった順子が見失っていたものなのだろう。順子だけではない。雅志も一真も含めた“大人”が、このドラマの中で“ワクワク”を取り戻そうとしているのかもしれない。“大人”になっていつの間にか失ってしまったもの、その一つはきっと人生の“ワクワク”であり、“ときめき”なのだ。自由を与えられても、それだけで幸せになるとは限らないのだろう。そんなことを考えると、このドラマから学べることは思いのほか多いように思える。(文=國重駿平)

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