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中川大志が明かす、『なつぞら』イッキュウさんから受けた刺激 「熱量だけは失っちゃいけない」

リアルサウンド

19/8/31(土) 6:00

 『なつぞら』(NHK総合)も最終盤に入り、なつ(広瀬すず)は仕事に子育てと大奮闘している。

参考:“側にいることが自然”な存在ーー『なつぞら』広瀬すずと中川大志が結ばれるまで

 主人公の長い人生を描く朝ドラでは、主人公の結婚相手がトピックに上がる。朝ドラ第100作として放送が始まった本作では、序盤から魅力的な男性キャストが数多く登場し、いったい誰がヒロイン・なつの相手役を務めるのか、視聴者の間でも盛り上がりを見せた。

 なつの幼なじみ、天陽(吉沢亮)や信哉(工藤阿須加)など様々なキャラクターのなか、その座を射止めたのがイッキュウさんこと坂場一久だ。坂場を演じる中川大志に、第84作『おひさま』以来の朝ドラカムバックとなった心境や、撮影の際に考えていたことを語ってもらった。

ーー朝ドラに帰ってきたお気持ちはいかがですか?

中川大志(以下、中川):僕は小学校6年生の時に『おひさま』に出させていただいて、それ以来8年ぶりに朝ドラのオーディションに呼んでいただいて嬉しかったです。

ーー中川さんの出演が決まってから、役が決まるまで時間がかかったと聞きました。

中川:オーディションに受かった後半年くらいは、どんな役かもわからない状況で、「本当に出るのかな?」と徐々に不安になってきました(笑)。作品が北海道でクランクインした頃に、ようやく坂場の出番のある台本をいただきました。

ーーその当時は、坂場という役柄をどう感じました?

中川:第一印象は本当に「こいつめんどくさい(笑)」という感じでした。なつをはじめ東洋動画の周りの人からの第一印象もすごく悪くて、今まで全くいなかったような新人が入ってきたという異物感のある登場だったので。なつの旦那さんになるという話も聞いていたのですが、この2人がどう夫婦になっていくのか全く想像がつかなかったんです。でも台本を読んでいくうちに2人だからこそ、生まれるものがあるなと。印象に残っているのは、最初の頃に「アニメーションにしかできない表現は何ですか?」という話をしていて、坂場がなつに「それはあなたが自分で考えてください」と言うんです。そしてその週の最後に、「あり得ないことも、本当のように描くことです」と答える。なつが馬の前足を4本描いたことに対してのセリフでしたが、なぜ「自分で考えろ」と言ったのに結局自分の答えを言っちゃうんだろうと。それを考えた時に、なつは言葉じゃなくて絵で答えを出したんだなと思ったんです。2人の関係性は、なつが感覚的に魂をぶつける人で、それを坂場が言語化して導いていくという形なのかなと。坂場にはない発想力や生み出すエネルギーをなつは持っていて、なつにはできないことを坂場は説明できたりとか、お互い足りないものを補い合っていく関係性なのかなと思いました。

ーーなつへの恋心の表し方は朝ドラでは珍しいですよね。

中川:ものづくりをする中で、坂場はなつの才能にまず惚れて、「この人と一緒に作品を作っていきたい」と思っただろうし、常に他のアニメーターたちとの間に立ってくれたのもなつで、坂場の欠落している部分を補ってくれたので、ずっと同じ方向を向いて隣に並び続けていた人なのかなと。坂場の中ではこの人と一緒にいたいという思いがあったんだけど、それを作品作りから切り離して考えられないキャラクターなんです。だから、最初のプロポーズも変なタイミングですよね。

ーーなるほど。

中川:でも喫茶店のシーンは一番大きかったですね。自分の感情に向き合えていなかっただけで、アニメーションという坂場にとっての全てだったものを失ってでもこの人と一緒にいたいとようやく気付いたのが喫茶店のシーンでした。だからこそ、その後風車でもう一回プロポーズするシーンは、頭ではなく心に湧き出てくる言葉で話さなければならないと思ったし、脱皮できた瞬間にしないといけないなと。広瀬さんとも、くっつきそうでくっつかないというのを何週にも渡って続いていたので、タイミングごとに話し合って整理しながらやっていました。

ーー広瀬さんの座長としての印象はいかがです?

中川:すごく自然体ですね。気負っていないというか、「この人は緊張する瞬間あるのかな」と思うくらい器が大きいです。僕は『なつぞら』に入った時も1カ月くらい緊張していて割と常にビビっていたので(笑)。キャストやスタッフさんの入れ替わりもある中でも、自然体でどしっと構えてブレない方で、一丸となってやってこれたのは、座長の力だと思います。疲れているところを見ないですし、エネルギッシュというか体力がすごすぎで、僕らよりもはるかに現場にいる人なので、「なっちゃんの前で寝たりできない……」みたいな(笑)。同い年なんですが、それくらい強い座長で尊敬しています。

ーーものづくりに真摯な坂場を演じたことで、ご自身に影響はありましたか。

中川:ものづくりに対するお話なので、刺激を受けたセリフがたくさんありました。役者としてものづくりをする上で、「ここまでやったからオーケー」という仕事ではない、答えがないからこそ終わりもないんです。僕がその通りだなと思ったのが、「子どもはどこまでだって見てるよ」というセリフです。見る人の力をなめてはいけない、何かを作って届ける側の人間として真剣勝負で向き合っていかなくはならないし、その時の環境の中で予算と期日を守りながらも、その熱量だけは失っちゃいけないなと。

ーー坂場の役作りにもこだわりがあったんですね。

中川:坂場は今までやってきた役の中で、軌道に乗るまでに一番時間がかかりました。坂場を知っていくにつれて、このキャラクターを伝えるにはいろんなやり方があると思ったんです。だからこそどういう風にお客さんに伝えれば、最悪の第一印象を覆していけるのか。そこは正直色々迷ったし、探ったし、時間がかかりました。でも、東洋動画のスタッフはじめいろんな人たちと関わることで、もともと持っているものがだんだんと見えてくるキャラクターだと思ったので、朝ドラの長いスパンを使って、人物の印象を変えていけるのはやりがいのあるキャラクターだなと思っています。

ーー坂場の不器用で鈍臭いところをどう意識しましたか?

中川:坂場は笑いどころのある人間にもしたいと思っていて、まっすぐさと、周りからどう思われているか自覚していないところが滑稽など、人間味のある部分を出していきたいなと。カレーパンのカレーを本にこぼしちゃうとかが要所要所で出てきてかなり苦戦しながらやっているんですけど、自分的にやりすぎたかなという箇所もあって反省しています(笑)。

ーー中川さんご自身は器用なんですか?

中川:あそこまで不器用ではないと思ってます。けっこう難易度高いんですよ(笑)。カレーパンも、カレーの硬さやどこをどうかじったらどのタイミングでこぼれるのかなど計算されたシーンなので、僕が不器用ならあのシーンはできないと思っています(笑)。

ーー中川さんが豊臣秀頼役として出演した大河ドラマ『真田丸』と『なつぞら』は演出チームがほぼ同じですが、懐かしさを覚えることもあったのではないでしょうか。

中川:『真田丸』は、自分にとってはすごく大きな現場で、反響もたくさんいただきましたし、尊敬する大先輩の役者の皆さんとあの舞台に立たせていただいた時間は、自分の中に大きなものとして残っています。今回その時にお世話になったチームのスタッフさんがたくさんいるので、また一緒にやらせてもらえるというのは嬉しかったです。キャラクターは全く違うんですけど、それでもやはり少しでも成長した姿は見せたいですし、今回は秀頼役の時よりも撮影期間も長いので、より演出部の皆さんとたくさんお話しする時間もあり、すごく心強いです。

ーー『真田丸』の経験はその後どのように活きていますか?

中川:ちょっとやそっとの現場でビビらない度胸は間違いなくついたと思います。大河も朝ドラも共通して、セットで長回しでの撮影が多いんです。『なつぞら』の喫茶店のなつから一度別れを告げられるシーンも長回し1回で、すごく緊張感があったんです。頭から最後までどれだけ長いシーンでも、その一瞬にかける瞬発力やその空気からしか生まれない緊張があるなと僕は感じています。今回も一番最初に登場して「馬の絵がおかしくないですか?」と指摘するシーンも10分以上の長回しで、そういう緊張感も楽しんでやっています。

(取材=石井達也/構成=安田周平)

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