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爽やかな演目揃いの『五月大歌舞伎』、いよいよ開幕

ぴあ

『五月大歌舞伎』

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皐月にふさわしく、時代物、世話物、舞踊と、薫風の吹きわたるような爽やかな演目が揃い、若手から花形、そして大看板まで俳優たちの顔ぶれも華やかな五月の歌舞伎座公演が5月12日、開幕する。

第一部は『三人吉三巴白浪』と新古演劇十種の内『土蜘』。いずれも河竹黙阿弥作。奇しくも出会った吉三と名乗る三人の盗賊とその親たちが、百両の金と庚申丸という御家の重宝を軸にくり広げる物語。振り袖姿のお嬢吉三に浪人のお坊吉三、ふたりの争いに和尚吉三が割って入り、義兄弟の盃を交わすが、このことが因果の絡みに絡んだドラマへとつながっていく。三人が出会う「大川端」の場は、歌舞伎ならではの様式美がたっぷり。お嬢吉三の「月もおぼろに白魚の篝も霞む春の空」という台詞は歌舞伎の演目の中でも屈指の名台詞だ。お嬢に尾上右近、お坊に中村隼人、和尚に坂東巳之助というフレッシュな顔ぶれでの三人吉三だ。

もう一本は松羽目ものの舞踊『土蜘』。病気療養中の源頼光を見舞う叡山の僧・智籌。実は土蜘の精。真っ白い蜘蛛の糸を投げつけ投げつけ四天王たちと大立廻りをくり広げる場面は迫力満点だ。叡山の僧智籌実は土蜘の精に尾上松緑、源頼光に市川猿之助。

第二部は『仮名手本忠臣蔵』から浄瑠璃「道行旅路の花聟」と、六段目「与市兵衛内 勘平腹切の場」。浄瑠璃「道行旅路の花聟」は通称「落人」とも呼ばれる清元の舞踊だ。塩冶判官の近習と、奥方の顔世御前の文使いにきた腰元のお軽は恋仲。だが逢い引き中に主の大事件となり、屋敷へ戻れなくなったふたりが、お軽の在所の山崎へと落ち延びる、その途中の道行を哀愁とともに華やかに描く。花四天を連れた鷺坂伴内と勘平との所作ダテも見どころたっぷり。早野勘平を中村錦之助、腰元お軽を中村梅枝、鷺坂伴内に中村萬太郎。

もう一本は「勘平腹切」と呼ばれる忠臣蔵の六段目。浪人ものの遺体から五十両の入った縞の財布を手にした勘平。六段目はここから始まってしまったお軽と勘平、そしてその家族の悲劇を描く。お軽は勘平討ち入りの金を工面するため祇園へ売られることになり、若い夫婦は別れを惜しむ。そこへ舅・与市兵衛の遺体が運ばれ、義母からは舅殺しを疑われる。また仇討の一味にも加われず、絶望から切腹をする勘平。しかしその真相は……。「色にふけったばっかりに」という名台詞と共に、白塗りの頬に血で染まった手の痕を着ける場面が哀しく美しい。代々の菊五郎が洗練を重ねた音羽屋の勘平を尾上菊五郎が勤める。女房お軽を中村時蔵。

第三部は『八陣守護城』と『新歌舞伎十八番の内 春興鏡獅子』。
『八陣守護城』は全十一段の義太夫狂言の八段目。小田春若(豊臣秀頼)の後見役である北畠春雄(徳川家康)は、春若の守り役の佐藤正清(加藤清正)を毒殺しようとしている。春若を病気に仕立て安土城へ戻し、代わって自ら勅使天盃の毒酒を受ける。血を吐きながら琵琶湖を御座船で帰る正清だったが……。船のへさきが客席へ巡り見得をする正清。そのスケールの大きさは正清の心根そのもののようで心揺さぶられる。佐藤正清は、休演の中村吉右衛門に代わって中村歌六が務める。

もう一本は『鏡獅子』。千代田のお城のお広座敷で鏡開きの日、女小姓弥生が引き出されてきて、請われるままに踊り始める。祭壇の手獅子を手に取ると次第に獅子の精が弥生の体内に入り込んでしまう。愛らしい胡蝶の間狂言を挟み、後半では白い長い毛を垂らし、勇壮な隈取りの獅子の精が登場。巴、たすき、髪洗い、菖蒲たたきというさまざまな毛振を見せ豪快に踊る。小姓弥生、後に獅子の精に尾上菊之助。

今月も座席は左右前後ひと席ずつ空いた千鳥型で、一部ふたり並びのブロックも用意されている。開演時間や終演時間が変更される場合もあるので確かめた上で劇場へ。

文:五十川晶子

公演情報
歌舞伎座『五月大歌舞伎』

演目
【第一部】11:00開演
一、『三人吉三巴白浪』
二、『土蜘』

【第二部】14:30開演
『仮名手本忠臣蔵』

【第三部】18:20開演
一、『八陣守護城』
二、『春興鏡獅子』

2021年5月12日(水)~2021年5月28日(金)
会場:東京・歌舞伎座

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