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ぴあ

いま、最高の一本に出会える

川本三郎の『映画のメリーゴーラウンド』

チャイコフスキー「ピアノ協奏曲第一番」の話から、『冬の華』『ここに泉あり』『レオン』…最後はジャン=ピエール・メルヴィルにつながりました。

隔週連載

第28回

19/7/9(火)

 チャイコフスキーの「ピアノ協奏曲第一番」が何度も流れた映画といえば、倉本聰脚本、降籏康男監督の『冬の華』(1978年)。
 やくざの高倉健が、渡世の義理からやむなく同じやくざの池部良を殺す。相手には幼ない娘がいた。仕方なしとはいえ子供のいる相手を殺した罪の意識から高倉健は、成長してゆくその娘(池上季実子)にひそかに学費を援助する。「足ながおじさん」になる。
 ある時、娘からの手紙に「いま名曲喫茶店でチャイコフスキーのピアノ・コンチェルトを聞きながらこの手紙を書いています」とある。
 成長した娘の姿を見たくて、出所した高倉健はその名曲喫茶店に行ってみる(設定は、横浜の喫茶店だが、撮影は、京都、円山公園のなかの「長楽園」)。
 美しい曲が流れている。ウェイトレスに「リクエストはありますか」と聞かれた高倉健、池上季実子からの手紙を思い出し「チャイコフスキーのピアノ・コンチェルトを」。するとウェイトレスが「今流れているのがその曲です」。苦笑する高倉健。やくざ稼業にはクラシックは無縁だったのだから仕方がない。
 『冬の華』では、池上季実子のテーマ音楽として何度かこの曲が流れる。演奏はクレジットによれば、ウラジミール・アシュケナージ。ロリン・マゼール指揮のロンドン交響楽団。

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