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ぴあ

いま、最高の一本に出会える

Buffalo Daughterはやはり唯一無二の存在だ 小山田圭吾、中村達也、菊地成孔ら迎えた記念ライブ

リアルサウンド

19/6/6(木) 20:00

 Buffalo Daughter、結成25+1年(26年)を記念してのアニバーサリーライブ『25+1 Party』5月30日恵比寿LIQUIDROOMである。先ごろ『Pshychic』(2003年)『Euphorica』(2006年)という中期の2枚のアルバムが初めてバイナル盤リリースされたこともあり、その両アルバムの収録全曲を、多数のゲストと共に再現するというスペシャルなライブだ。メンバーはシュガー吉永(Gt/Vo)、大野由美子(Ba/Moog/Vo)、山本ムーグ(DJ/Vo)の3人に加え、サポートながらもはやバッファロー不動のメンバーと言っていい松下敦(Dr)、そして山本不在時からサポートを務めていた奥村建という5人。ライブエンジニアはもちろんzAkだ。これに曲ごとにゲストが加わる。会場は立錐の余地もない超満員。

 『Euphorica』収録の「Beautiful You」からスタート。続いて『Pshychic』の「S.O.I.D」、『Euphorica』の「Sometime Lover」「Peace」と続く。全曲再現といってもアルバムの曲順通りに演奏するわけではない。序盤はバッファローのサイケデリックだったりエレクトロニックだったりハウスだったりというよりは、ニューウェーブ/ポストパンクだったりクラウトロック的だったりする、輪郭にはっきりしたゴツゴツとした演奏が続く。カッティングエッジな、だがどこかゆるくてキッチュな感覚。ゴリゴリと尖った演奏と、ふんわりとしたキュートな大野/吉永のボーカルの対比が彼ららしい。「Peace」は山本ムーグが絶叫ボーカルを披露するヘヴィファンク。体調上の理由で長らくお休みしていた山本の健在ぶりを示すには十分だ。吉永得意のキレキレのファンクギターが炸裂する。素晴らしいのが松下のソリッドでタイトなドラミング。正確さとグルーヴを併せ持った的確なプレイは、バッファローの自在な音楽実験の土台を支える重要なピースだ。

 今年になって1stアルバム『BODY』をリリースしたばかりのトラックメイカー/シンガーソングライターのAAAMYYYがボーカルとシンセで加わり「Lost Guitar」「Bird Song」と披露。ドリーミーでアンビエントな広がりを持った楽曲が、彼女の参加でいっそう柔らかく彩られる。

 続いては話題のトラックメイカーSASUKEが参加しての「Elephante Marinos」。なんと弱冠16歳というから、バッファローのメンバーから見れば息子のような年齢だ。たまたま吉永がネットで発見したというが、SASUKEが担当した同曲のリミックスをさきごろ配信リリースするなど、メンバーの意気込みもハンパではない。バッファローのロックでファンクなリズムとは全く違うしなやかで弾力性に富んだ四つ打ちのダンスグルーヴと、軽やかで華やかなSASUKEのダンスが圧倒的な新世代感を醸しだす。

 だがこの日前半のハイライトはゲストがはけ、5人だけで演奏された、この日唯一の新曲「Don’t Punk Out」と、『Pshychic』収録の「Chihuahua Punk」のメドレーだった。ポリリズム気味に鳴らされる変拍子ファンク〜ポストパンクの刺激は強烈で、このバンドの根っからのねじ曲がったオルタナティブ体質が如実に表れていた。ここでも松下のドラムが冴えていて、大野の弾くミニムーグの重低音のアタックもえぐい。

 そして間髪を置かず『Pshychic』のオープニングナンバー「Cyclic」のオープニングが流れた瞬間、気持ちのいい解放感が会場を覆う。15分近くにもわたって繰り広げられた人力アシッドハウスミュージックの途方もない悦楽。この曲は私にとってバッファローの中でもフェイバリットナンバーのひとつだが、これほど相応しいタイミングと場所を得て鳴らされた例は滅多にないと思った。いつもよりもハードな演奏となっていたのは、今はそういう気分だったと言うことだろう。

 10分の休憩をはさみ、「Three bass」、そしてドラムレスで小山田圭吾が加わっての「Winter Song」。アルゼンチンのフェルナンド・カブサッキが作曲に参加したアンビエントでオーガニックな音響インスト作品だ。小山田の繊細で奇妙なギタープレイが美しい。以前小山田はインタビューで「フロントに立つよりも、サポートでギターだけ弾いていた方が楽しい」と語っていたが、彼のミュージシャンとしてのセンスの高さが表れた好演だった。

 そして続く「Mutating」で、中村達也が、今日一番の大きな拍手と歓声と共に登場。叩き始めた瞬間、場内の空気が明らかに変わる。とにかくめちゃくちゃに音がデカい。スターリンやスタークラブで叩いていたパンク時代から彼のプレイを見てきたが、そのパワーとエネルギーは本当に凄まじい。周りを巻き込み、煽り、高揚させる強烈なオーラがある。そこで演奏しているのは確かにBuffalo Daughterだが、達也が加わることでバッファローではない何か別のものへと変貌したようにも聞こえたのである。

 その異物感は菊地成孔が加わりさらに加速、リキッドルームは先行きの予測のつかないカオスへと突入する。「Deo Volente」では、The Pop Groupを思わせるノイジーなパンクファンクを、達也のドラムと菊地のサックスが、そして山本のボーカルが、ダークでカオスな世界に引きずり込む。圧巻は達也が抜け、代わりに松下が加わった本編ラスト「303Live」だった。ダビーなエフェクトのかかった菊地の変則プレイが強烈。オリジナルの長尺のエレクトロ・サイケ・ファンクがエンジニアzAkの魔術的なライブミックスで時空の歪む異空間へと変貌していく。特に菊地がはけてから10分以上にもわたり、フレーズの頭とお尻がわからなくなるような幻惑的でアシッドな無限ループが続く白昼夢は、控えめに言って最高だった。

 アンコールは再び小山田が登場し、『Pshychic』の極上ダンスナンバー「Psychic A-Go-Go」で大盛り上がりのうちにライブは幕を閉じた。

 ポップだがシンガロングできるようなキャッチーなメロディがあるわけではない。歌ものでもあるが安直に共感できるようなリリックがあるわけでもない。人懐っこくキュートでゆるふわだが、時折思いもかけぬ異世界の裂け目がパックリと口を開け、聴き手をサイケデリックな沼に引きずり込む。伝統的なポップソングの枠を大きく踏み越えたクールでエクスペリメンタルなサウンドは、聞く者の知覚を大きく刺激し拡張してくれる。Buffalo Daughterの音楽は、25年たとうが26年たとうが、一向に摩耗することなく新鮮で、1998年リリースの名盤のタイトルのように、まさにNEWなROCKなのである。くせ者揃いの多彩なゲストが好き放題にプレイしても自らの度量として受け入れるキャパシティの広さも含め、やはり唯一無二の存在と、改めて思い知らされた。

(文=小野島大/写真=Yoshika Horita)

■ツアー情報
『25+1 Party』
6月14日(金)神戸VARIT.  
ゲスト:和田晋侍(DMBQ, 巨人ゆえにデカい)
6月15日(土)京都CLUB METRO
ゲスト:山本精一
6月29日(土)福岡 小倉FUSE
Opening DJ:常磐響
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