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鈴木亮平と瑛太、対照的な演技アプローチが光る 『西郷どん』最大の敵となった2人の結末は?

リアルサウンド

18/12/16(日) 12:00

 NHK大河ドラマ『西郷どん』が最終回を迎える。幕末を舞台にしたドラマは数多くあり、西郷隆盛、大久保利通についても過去にさまざまな描かれ方をしてきた。薩摩藩の下級武士の家に生まれ、幼なじみとして兄弟のように育った2人。鈴木亮平が演じる主人公の西郷隆盛、そして瑛太が演じる大久保利通のように激動の時代を生き抜くなかで、最高の友情を育んだ末に最大の敵となってしまう関係というのはそうそうない。

 情に厚く、共感力の高い天真爛漫な西郷と、意志が強く、情に溺れることなく合理的に物事を進めるタイプの大久保。正反対の性格の2人だからこそ、互いに助け合い、力を合わせたことで変革の時代をともに生き抜き、日本の歴史を大きく動かした。

 役によって自在に体型を変え、その役に憑依するタイプの役者である鈴木亮平と、飄々とした佇まいを見せつつもただならぬ存在感でどんな難しい役でも引き寄せるかのように演じる瑛太。演技のアプローチが対照的な2人が、正反対の性格の西郷と大久保を演じる面白さ。

「振り返れば大久保は青春期のころから、長い謹慎処分を受けたり、久光公に近づくため囲碁を鍛錬していたりと、肉体表現がしづらい役でした。吉之助さぁがどんどん答えを導き出して行動するスピードの速さに対して、どこか悔しさがあったし、大久保らしさをどう出せるだろうという葛藤がずっとありました」と瑛太は公式サイトで語っている。

 たとえば、第20回放送「正助の黒い石」では、西郷が島流しになり、愛加那(二階堂ふみ)と島で生きていくのも悪くない……くらいの勢いで島の生活に馴染んでいる頃、島津久光(青木崇高)を相手に大久保は鍛錬した囲碁をしながら、存在感をアピール。仲間たちに「そんなに出世したいのか?」と久光への密告者呼ばわりもされ、精忠組の過激派である有田新七(増田修一朗)らとの対立も深まってしまった。

 久光に気に入られるのは嘆願書を渡すためであり、西郷を呼び戻すためだということが大山格之助(北村有起哉)らに伝わり誤解が解ける。真実を知った大山から「何で早くそれを言わないのか」「(西郷に戻ってきてほしいという)みんな気持ちは同じ」と言われたように、屈折した大久保のやり方は仲間に伝わりにくく、誤解を招くというエピソードが盛り込まれていた。

 「おいは、おいのやり方でしかできん」という大久保に対して、西郷のようにストレートに物を言い、感情をハッキリと表現する人は安心して相手も心を開く。人よりも慎重に物事を考えてしまう大久保の不器用な一面を、瑛太は歯がゆいくらい純粋に演じていた。

 また、瑛太は西郷が周囲の人を照らす太陽のような存在だとしたら、大久保はその正反対の性格であるがゆえ月に例えてもいる。開放的な人柄で相手の心に寄り添うことで、すぐに人の心を掴んでしまう西郷の魅力を一番近くで見てきて、誰よりも理解して、彼を必要としながら時に複雑な感情も抱くという矛盾と葛藤を抱えた大久保。

 太陽と月とは言い得て妙だが、主人公の西郷の失敗や破綻も含めて、ドラマチックな人生の中で助け合いながら理想に向かって進んでいく2人の成長を見守ることができたのは貴重な経験のようにも思える。明治維新から150年となる2018年の今、西郷隆盛を鈴木亮平が、大久保利通を瑛太が演じてくれてよかったと最終回を前に改めて思う。

 11月18日に放送された第43回「さらば、東京」では、西郷の朝鮮使節派遣をめぐり意見が対立。これまでの朋友としての喧嘩とは違い、政治的な意見の違いで政府を離れた西郷は鹿児島に下野する。「腹を割って話したい」という西郷と、欧米から戻り、自分の信念を貫き突き進もうとする大久保で決定的な別れが訪れるという場面だ。冷然と振る舞おうとするも、「腹を割って話したい」と感情に訴えかける西郷に対して、心揺さぶられる大久保の心情を慮ると切ない。

 西郷を慕う不平士族が続々と鹿児島に集まり、私学校を作ったものの、彼らの新政府への不満が爆発。大久保は、各地で相次いだ不平士族の反乱を鎮圧し、私学校にも密偵を送り込むなど警戒していたが、若い士族の怒りを抑え込むことはできなかった。

 西郷が新政府に対して挙兵するという事態に取り乱し、大久保は鹿児島へ向かおうとするが引き止められて断念する。「日本を見捨てる気か」という言葉に踏みとどまることができる分別が彼にはあった。政治家として覚悟を決めながらも、動揺せずにはいられない大久保の苦渋の選択。瑛太の繊細な演技が光った。

 最終回のタイトルは、西郷の座右の銘でもある「敬天愛人」。戊辰戦争で薩摩藩と戦った旧庄内藩の人々が西郷に学んだ教訓をまとめた「南州翁遺訓」に収められた中に「道は天地自然の物にして、人はこれを行うものなれば、天を敬する目的とす。天は人も我も同一に愛し給うゆえ、我を愛する心を似て人を愛する也」とある。

 利他的で自分のことよりも他人のために、自分に期待してくれる人の思いに応えるように生きてきた西郷と、彼を誰よりも理解してきた大久保。

 西郷の情熱と大久保の冷静さが新しい国をつくる原動力となったが、最後は西南戦争で敵として戦うことになった2人。「自分ほど西郷隆盛を知っている者はいない」という大久保の言葉が残っているほど、深いところでつながっていたのに、悲劇は訪れる。

 愛される西郷のイメージを踏襲しながらも、ただ器が大きく豪胆な男というだけでなく、人間性豊かで周囲の人に喜びと安心感を与える新しい西郷隆盛を体現した鈴木亮平。そして、西南戦争後に冷徹で非情な政治家という印象がある大久保が抱えていた葛藤や矛盾、そして朋友への熱く深い愛情を希有な表現力で見せつけてくれた瑛太。最後まで、その素晴らしい演技を見届けるしかない。(池沢奈々見)

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