黒人も初めてなら女性も初、という米国20ドル紙幣の新たな顔になったのがハリエット・タブマン。奴隷に生まれ、夫がいるのに他所へ売られるため、命がけの脱走をする。その危険なルートを使って周囲の奴隷たちを脱走させ、南北戦争では黒人兵士を指揮して700人を超える奴隷の救出に成功した、という不屈の女性を女性監督ケイシー・レモンが敬愛と共感をこめて描きだした。白人の奴隷主に捕まった時「自由か死か」と叫んで激流に身をひるがえして逃れ、決して何かにつながれない決意を示す気丈な生き方こそハリエットらしさ。演じるシンシア・エリヴォ自身が歌う『スタンド・アップ』の力強い歌声が誠実に語られるドラマを凛々しく彩っている。