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『相棒』卒業後も存在感を示す愛すべきキャラクターたち 長期シリーズ人気の秘訣を探る

リアルサウンド

19/3/20(水) 6:00

 現在放送中の『相棒 season17』(テレビ朝日系)が、3月20日に最終回を迎える。先週放送された第19話で、レギュラーメンバーだった月本幸子(鈴木杏樹)が女将を務めてきた小料理屋「花の里」を去ってしまい、視聴者の間に衝撃が走った。

参考:『相棒』元旦SP、及川光博の登場で意外な方向に? 長期シリーズゆえの“ファンサービス”も期待

 「花の里」で警視庁特命係の杉下右京(水谷豊)とその相棒たちが過ごすシーンは、殺人などの物騒な事件とほんの少し距離を置いて心が休まる一時を演出しており、特に幸子は、おっちょこちょいな面もありながら、そのふんわりとした雰囲気と笑顔で「相棒」シリーズ随一の癒し系キャラといえる存在だった。

 「花の里」はかつて、右京の元妻である、たまき(益戸育江)が初代女将を務めていたが、旅に出ることを理由に閉店。右京の勧めでその後を引き継いだのが幸子で、そもそも幸子と右京が知り合ったのは、彼女が殺人未遂事件を起こし、右京たちによって逮捕されたことがきっかけだった。その後も事件に巻き込まれたり、大騒動を起こしたりと、複数回に渡り登場して存在感を示していた彼女が、このドラマの象徴の一つともいえる「花の里」の二代目女将になったことは、多くの相棒ファンたちも納得のいく流れだっただろう。初代女将のたまきの存在を尊重しながら、説得力のあるエピソードを挟んだ上で、幸子を二代目女将に就任させるという、実に丁寧かつ自然な話の運び方だった。

 『相棒』シリーズには、たまきや幸子のような愛すべきキャラクターが数多く存在していることが魅力の一つだ。例えば、初期からずっと登場し続けている捜査一課の面々は、“トリオ・ザ・捜一”の愛称でファンからの支持も熱く、捜査中のケガが元で最年長の三浦(大谷亮介)が退職した今は、伊丹(川原和久)と芹沢(山中崇史)のコンビとなっているがその人気は変わらない。何かと捜査に首を突っ込みたがる特命係を煙たがりながら、時には協力する姿勢を見せるなど、実は特命係の良き理解者でもある。曲がったことは決してしない、誇りを持って仕事をする彼らのことを、右京たちも信頼していることが随所で伝わってくる。いわゆる典型的な「主人公たちを際立たせるために用意された対照的なキャラ」の枠にはまらない、彼ら独特の生き生きとした姿に多くの人が思わず好感を持ってしまうのだ。

 その他にも、かつて鑑識課にいて右京の協力者となっていた米沢(六角精児)や、特命係の部屋を「暇か?」というお決まりのセリフと共に訪れる組対5課の課長・角田(山西惇)など、2000年から放送されている長期シリーズだけに、人気キャラはまだまだたくさんいるが、なんといっても最も重要なキャラは、右京の歴代相棒たちである。明るく熱い性格とフライトジャケットがトレードマークだった初代相棒・亀山薫(寺脇康文)、プライドが高くおしゃれでクールな二代目相棒・神戸尊(及川光博)、父親が警察幹部で、正義感が強く血の気の多い三代目相棒・甲斐享(成宮寛貴)、そして現在の相棒は四代目となる冠城亘(反町隆史)だ。

 この作品がマンネリ化することなく続いているのは、それぞれに個性の違う相棒たちが登場してきたという点も大きい。現在の相棒である冠城は飄々としたお調子者で、その本心が見えづらく一筋縄ではいかない人物。これまでの誰とも違うスタンスで右京と接する冠城のおかげで、右京の新たな面が見えてきたりもして、物語がより豊かに膨らみを持つことができている。

 そしてかつての相棒たちの中で、神戸は警察庁へ異動した後も右京からの要請で事件解決に力を貸すなど、歴代相棒の中で唯一、相棒でなくなっても姿を現しているが、異国へ行ってしまった亀山と、懲戒免職という衝撃的な展開で相棒を卒業した享は、今のところ回想以外で実際に本人が登場することはない。しかし右京たちの会話の中で、明確に名前は出さないものの、明らかに彼らのことを示唆する内容が出てくることがあり、彼らが作品世界の中で生き続けていることがうかがえる。

 このように、『相棒』シリーズの人気の秘訣は、魅力的なキャラが登場するのみならず、大切に扱っているところだと言えよう。たとえ現在は登場していない過去のキャラであっても、物語を彩ってきた様々な登場人物たちのことを、使い捨てのようなぞんざいな扱い方はしない。彼らがいるから今がある、という尊重する思いが伝わってくるからこそ、相棒ファンはこのドラマを、そして登場人物たちをより深く愛することができるのだ。

 season17の最終回には、警視庁広報課課長である社(仲間由紀恵)、警視庁副総監・衣笠(杉本哲太)、三代目相棒・享の父である甲斐峯秋(石坂浩二)など、特命係と因縁の深い人々が次々と登場する。どのような展開を見せるのか、各キャラにも注目しながら見て欲しい。(文=久田絢子)

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