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米津玄師、GReeeeN、BIGMAMA……個性的なソングライティングが光る男性シンガー

リアルサウンド

18/10/30(火) 8:00

 米津玄師の待望のニューシングル『Flamingo / TEENAGE RIOT』、BIGMAMAのメジャー移籍後初のフルアルバム『-11℃』など、個性的なソングライティングが光る男性シンガー(バンド/シンガーソングライター)の新作を紹介。確かな技術と独創性に裏打ちされた楽曲、その世界観を的確に描き出すボーカル、サウンドメイクの妙を感じ取ってほしい。

(関連:米津玄師が語る、音楽における“型”と”自由”の関係「自分は偽物、それが一番美しいと思ってる」

 トラップ以降のヒップホップの流れを汲むトラックメイク、ファンキーなギターカッティングと声を緻密に組み合わせたアレンジメント、そして、和の叙情性に演出するコブシを効かせたボーカリゼーション。米津玄師の両A面シングル『Flamingo / TEENAGE RIOT』の表題曲「Flamingo」は、現在進行形のR&B~ヒップホップと日本の伝統的な歌唱を折衷させた、ハイブリッドなダンスチューンに仕上がっている。2018年を代表するヒット曲「Lemon」の後、音楽的な野心に満ち溢れた楽曲をリリースし、リスナーの予想を完全に裏切りながら、きわめて斬新なポップ像を提示する米津玄師はやはりタダ者ではない。日本のポップミュージックの在り方を刷新し続ける米津玄師はいま、デビュー以来もっとも刺激的な時期を迎えようとしているようだ。

 今年4月に8thアルバム『うれD』を発表、通算6度目の全国ツアー『GReeeeNと不思議のももがたり~おこしにつけたきびだんご~』(全20公演)を開催するなど、メジャーデビュー10周年を超えても充実した活動を続けているGReeeeNのニューシングル表題曲「贈る言葉」は、志尊淳主演の映画『走れ!T校バスケット部』(11月3日公開)主題歌として制作されたミディアムナンバー。海援隊の代表曲とまったく同じタイトルを持ってきたのも大胆だが、ドラマ『3年B組金八先生』(TBS系)のイメージを上手く利用し、現代的なトラックを取り入れつつ、切なくも温かい卒業ソングに結びつけている。MVに武田鉄矢が(志尊淳が演じる転校生が通う学校の)校長先生役で出演していることも話題。興味を引くフックと普遍的なソングラインティングのバランスが絶妙だ。

 通算8枚目、メジャーレーベル移籍後最初のアルバムとなる『-11℃』のコンセプトは、“躰(からだ)”。先行シングルの収録曲「CRYSTAL CLEAR」(目)、「Strawberry Feels」(心臓)のように、すべての楽曲が体の部位(手、足、肺、腰、脳など)をモチーフに制作されている。光を放つようなポップチューン、クラシカルな手触りのバラード、メロコア系の疾走感を備えたアッパーチューンなど色彩豊かな楽曲が収められているが、散漫な印象はまったくなく、“バイオリニストがいるロックバンド”という根本のスタイルに集約されているところも本作の魅力。ベーシックな軸をもう一度掴み直し、表現のクオリティを上げることに成功した充実作だと思う。

 昨年10月に満を持してメジャーデビューを果たし、新世代のポップマエストロとしての評価を獲得しつつある澤部渡のソロプロジェクト・スカートからニューシングルが到着。表題曲「遠い春」は、つんのめるように疾走するビート、“揺れ”“隙間”を意図的に取り入れたバンドサウンドのなかで、思春期特有の葛藤、不安、希望をリリカルに映し出すアップチューン。洗練されたコードワークと生々しい手触りのボーカルのコントラストを含め、渡邊のソングライティングセンスを改めて示す楽曲に仕上がっている。インディーズ時代からの人気曲「返信」の再録バージョンも本作の聴きどころ。叙情的なソウルネスと呼ぶべき音像はまさにスカートの真骨頂だ。

 温かさ、懐かしさ、切なさ、明るさが混ざり合った“王道のJ−POP”という言葉がぴったりの楽曲、アコースティックギターと歌を中心としたオーガニックな音作り、豊かな声量と卓越した表現力を備えた歌。山崎まさよし、スキマスイッチ、秦 基博などを擁する音楽プロダクション・オフィスオーガスタの伝統(?)を受け継ぐ、正統派のシンガーソングライター・松室政哉の1stアルバム『シティ・ライツ』は、街に生きる人たちの何気なくて大切な日々をテーマにした作品。デビュー曲「毎秒、君に恋してる」、渾身のバラードソング「海月」をはじめ、詩的な描写力とドラマティックな旋律を軸にした、質の高いポップソングが堪能できる。

■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。

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