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神宿、“楽曲視点”で振り返る5年間の成長 デビュー曲「KMYD」から新曲「在ルモノシラズ」に至る音楽性の拡大

リアルサウンド

20/4/16(木) 16:00

 今年1月15日、神宿がニューアルバム『kamiyado complete best 2018-2019』をリリースした。本作は2018~19年に発表した楽曲をまとめたベストアルバム的な内容だが、塩見きら加入以前の楽曲を現メンバーで再録したことでグループの“今”を体感できるものとなっている。また、このアルバムと同日には、2017年リリースのアルバム『原宿発!神宿です。』『原宿着!神宿です。』の2作を、塩見の新録パートを加えリメイク&リパッケージしたベストアルバム『kamiyado complete best 2014-2015』および『kamiyado complete best 2016-2017』も同時リリース。3作品を通して聴けば、結成5周年を迎えた神宿の音楽面での変遷を手軽に追体験できるはずだ。

参考:神宿、YouTuber活動で独自の道を歩む存在に グループアイドルにおける個人発信の重要性

 2020年最初の新曲となる「在ルモノシラズ」のデジタルリリースを4月16日に迎えたこのタイミングに、改めて神宿の魅力に楽曲面から迫ってみたい。

 まず、グループ結成初期の楽曲をまとめた『kamiyado complete best 2014-2015』の収録曲について。同作には全12曲が収録されており、このうち歌モノはオープニングのインスト「Overture」を除く11曲で、すべてながいたつの作詞・作曲によるもの。「KMYD」や「全開!神宿ワールド」などシンセサウンドが主体でBPM150~170というハイテンポ、ライブの盛り上げや観客とのコール&レスポンスに最適な王道アイドルソングが中心で、リリース当時メンバー全員が10代半ばから後半という年齢も反映されてか、フレッシュさあふれる楽曲がずらりと並ぶ。しかし、この時点では「これぞ神宿」という突出した個性はまだ感じられず、聴いているだけでこちらまで笑顔が伝染しそうという点において強さを見せるにとどまっている。

 王道アイドルソングの連発である程度の基盤が固まった神宿が次に挑んだのは、楽曲/サウンドの幅を広げることだった。『kamiyado complete best 2016-2017』に収められた楽曲群は、「原宿戦隊!神宿レンジャー」や「Life is やっぱ Beautiful!」をはじめとするハイテンポなアイドルソングに加え、ギターサウンドを前面に打ち出したロック調の「限界突破フィロソフィ」や「カムチャッカ・アドベンチャー」、ディスコやソウルからの影響が見え隠れする「Ultra Cheer」、5人の歌をじっくり聴かせる「ミライノウタ」など非常にバラエティに富んだもの。BPMにおいても114~140といった比較的抑え気味の楽曲もここで登場し、アレンジに関しても打ち込みのシンセサウンドが中心だったそれ以前から一転、バンドサウンドを主体としたものへとシフトしている。

 また、各メンバーの歌声に個性が芽生え始めていること、そして歌唱力/表現力が少しずつ向上していること、ライブでの見せ方が固まり始めたことも、こうした楽曲の幅の広がりに影響を与えていたはずだ。そういった楽曲群の制作に携わったのがSHUN、利根川貴之、坂和也といった面々。彼らが提供した楽曲の数々が神宿の進化において非常に大きな成果を挙げたことは、間違いない事実だ。

 そして、神宿の“今”がぎっしり詰め込まれた『kamiyado complete best 2018-2019』では、『kamiyado complete best 2014-2015』や『kamiyado complete best 2016-2017』とは異なる領域にまで到達。BPMをグッと抑え一気におしゃれさが増したクラブライクな4つ打ちナンバー「ボクハプラチナ」を筆頭に、ストレートなロックナンバー「はじまりの合図」、ラップ調ボーカルを前面に打ち出した「全身全霊ラプソディ」、軽やかなポップソング「好きといわせてもらってもいいですか?」など、従来の王道アイドル路線を残しつつも表現の幅をさらに拡大させることに成功している。

 そういった楽曲群を手がけるのが、これまでさまざまな形でアイドルシーンを盛り上げてきた人気作家たちだ。でんぱ組.incやゆるめるモ!、クマリデパートなど数多くのアイドルへ楽曲提供してきたWiennersの玉屋2060%は、「はじまりの合図」「CONVERSATION FANCY」「春風Ambitious」「お控えなすって神宿でござる」「それから」を書き下ろし。TEAM SHACHIや虹のコンキスタドールなどで知られる浅野尚志は「全身全霊ラプソディ」を、乃木坂46や22/7の楽曲制作に携わった経験を持つ田上陽一は「タフ♡ラブ」をそれぞれ提供。さらに、かの清 竜人も「グリズリーに襲われたら♡」でその奇才ぶりを遺憾なく発揮している。

 この時期になると、メンバーの歌唱力/表現力も非常に安定し、「それから」のような歌を聴かせることに主軸を置いた楽曲や、「ボクハプラチナ」で聴かせる声に表情を付ける歌い方など、初期には見られなかったカラーも至るところから感じられる。また、全メンバーが20代に突入したことも、こういった表現の変化や音楽性の拡大に少なからず影響を与えているのだろう。と同時に、アイドルシーンで表現される音楽性も5年前と比べて、さらに拡散方向へと進んでいることもあり、こういったシーンの動向も神宿の音楽性の変化に作用していると思われる。

 そういった状況を踏まえて最新ナンバー「在ルモノシラズ」を聴くと、この大人びたサウンドへのシフトは必然と言える。新境地を開拓した「ボクハプラチナ」で得た手応えが確実に反映された「在ルモノシラズ」では、メンバーの塩見きらが作詞に参加したことでも話題となっているが、メンバーの生の言葉を交えることで歌に込める思いもより強くなるのではないだろうか。

 塩見の加入でグループ第2章に突入した神宿だが、音楽面でも昨年から今年にかけての成熟ぶりで本格的な第2章がスタートしたように思う。果たしてこの先、どんな楽曲で、どんなサウンドで、そしてどんな歌で我々を魅了してくれるのか、今から楽しみでならない。(西廣智一)

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