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THE BACK HORN、感謝と祝福で満ちた日本武道館 結成20周年ツアーファイナルレポ

リアルサウンド

19/2/15(金) 20:00

 2018年に結成20周年を迎えたTHE BACK HORN。彼らが昨年10月より開催していた全国ツアー『THE BACK HORN 20th Anniversary「ALL TIME BESTワンマンツアー」〜KYO-MEI祭り〜』が、2月8日、日本武道館公演でファイナルを迎えた。開演は19時15分。客席をザッと見た限りでは来場者の年齢層に偏りは感じられなかったが、仕事帰りの人にもやさしい時間設定になっていたのは、共に年齢を重ねたファンに対する気遣いだったのかもしれない。

 ライブの始まりを飾ったのは、歴代作品のアートワークやリリース日などを振り返るようなオープニング映像。山田将司(Vo)、菅波栄純(Gt)、岡峰光舟(Ba)、松田晋二(Dr)がステージに揃うと、4人はまず、バンド結成当初の気持ちを綴った曲(リリース自体は2015年)である「その先へ」を演奏した。ステージは広いのに、それに合わせてメンバー間の距離を長くとることもしていないようなセッティング。そんななかで歌われる〈とりあえず全部ぶっ壊そう 閃いたライブハウスで/世界が動き出した 1998〉というフレーズ。そこから音を途切れさせることなく「ブラックホールバースデイ」へ繋げると、裸足で走り出す菅波、軽快な足取りで歩く岡峰が左右の花道へ繰り出していく。メジャー1stシングル表題曲「サニー」で最初のブロックは終了。「日本武道館、どうもこんばんは! THE BACK HORNです!」と、松田の挨拶がどこまでも爽快に響いた。

 今回のツアーのことをメンバーは、「みんなへの感謝やまだまだやってくぞという想いを共有するツアー」という風に言っていたし、「周年を祝うだけでなく、みんなが今日まで生きてこれたことを祝福するツアー」とも言い表していた。セットリストは、インディーズ期にリリースされた楽曲から昨年リリースされたばかりの新曲群までを網羅した内容。元々根っからポジティブなことを歌っているバンドではないし、大会場ならではの特効はあったものの全体的に照明は薄暗いし、祭りといえども分かりやすくハッピーな空気に満ちていたわけではない。しかし、4ピースの枠をはみ出さんとする大胆で爆発力の高いアンサンブルで以って、“生きるとは”ということやそれに伴う絶望と希望を一貫して鳴らしてきた、そのようにして包括的な共感ではなく芯からの共鳴を起こしていった、このバンドだからこそ生み出せた場面がいくつもあったように思う。この日の武道館には、“バンド対オーディエンス多数”ではなく“一対一”が場内の人数分だけ存在しているような、一体感とは逆の温度感があった。

 とりわけ心に残っているのは、不穏な響きをさせながら8分の6拍子を進む「ひとり言」の狂気と嬉々としてそれを受け入れるオーディエンスの様子。人間とは? 正義とは? という問いかけが迫りくるような「悪人」から「雷電」の流れ。全国でこれをやってきたのだと誇らしげに言いながら、「神様だらけの!」「スナック!」と、他のどのバンドでもなかなか聞かないような言葉でコール&レスポンスをした「コワレモノ」。レゲエ調の「ヘッドフォンチルドレン」が醸すどこか退廃的な色気は、今の彼らが鳴らすことでより魅力的になったように思う。「美しい名前」で岡峰の鳴らす最後の一音が完全に鳴り止むまで会場中が息を呑んでステージを見つめていたこと、続く「未来」を機に山田のボーカルがもう一段階突き抜けるようになったことも印象的だった。

 MCでのメンバーのやりとりは素朴なものだったが、ふとした時に零れ落ちた言葉にはグッとくるようなものもあり、20年という歳月の重さはそんなところからも読み取ることができた。「まだまだ行こうぜ! 行けるよな!」(山田)という言葉とともにアルバム『情景泥棒』収録の「Running Away」からクライマックスへ。変わらないものを携えながらこれからも未開の地へ進んでいくのだという意志をここで改めて示すと、「グローリア」では場内が明転。それまでの演奏がバンドの歩みと経年進化っぷりを感じさせるものだったからこそ、バンドサウンドが堂々と鳴りわたるなか、THE BACK HORNという名前を掲げたバックドロップが光に曝された瞬間は感動的であった。

 そのあと、これまでライブで度々鳴らされてきた楽曲を連続で演奏し、本編が終了。アンコールには、バンド結成後初めて作った曲だという「冬のミルク」、昨年9月に配信リリースされた現時点での最新曲「ハナレバナレ」、そして「無限の荒野」が選ばれた。ライブ中、山田が「人としてちゃんと生きていこうっていう力を(THE BACK HORNから)もらってる気がします」と話していたが、きっとそう思っているのはメンバーだけではないだろう。「また生きて会おうぜ!」。ライブハウスでやっていたのと同じように約束を結んでから、私たちはそれぞれの日々に帰っていった。

(写真=AZUSA TAKADA)

■蜂須賀ちなみ
1992年生まれ。横浜市出身。学生時代に「音楽と人」へ寄稿したことをきっかけに、フリーランスのライターとして活動を開始。「リアルサウンド」「ROCKIN’ON JAPAN」「Skream!」「SPICE」などで執筆中。

THE BACK HORN オフィシャルサイト

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