柳楽優弥さんのこれまで積み重ねた経験と成長を感じる！

今回は公開中の作品、それも早く観に行かないと終わっちゃうからお急ぎで！　という作品を紹介します。まずは『ターコイズの空の下で』。2月に公開が始まった作品ですが、好評につき今も上映が続いているロードムービーです。

祖父が大企業を持つ実業家という御曹司タケシは、甘やかされて育ち、わがまま放題の自堕落な生活を送っています。ある日、祖父によってモンゴルへ送り込まれることになった彼は、運転手つきの観光気分で行くことに。

実は祖父は第二次世界大戦の終戦から再会することがかなわない娘がモンゴルにおり、彼女を探すことを目的に送り込まれたのです。タケシは文化も暮らしも全く違うモンゴルのリアルライフに戸惑いながらも、ガイドのアムラと共に大自然の荒野へ。

次第にその自然の美しさにうたれていくタケシでしたが、そんな中、アムラが逮捕され、たったひとり荒野に取り残されてしまいます。柳楽優弥さんが主演を務め、モンゴルでロケをした作品です。

わがままに暮らしていた金持ちのボンボンが、大自然のモンゴルの不自由な暮らしの中で、新しいことを見出す。これほどシンプルなストーリーで、映像の美しさと役者の芝居に集中させられるのは、本当に驚きです。

なにせ画がきれい！　特に空なんですが、タイトルのターコイズって納得なんですよね。スウェーデンも日本も空の色が違うし、空の色ってその土地それぞれの個性があるものだと思います。それがモンゴルだと「え！」っていうくらいの違いを感じるんですよ。これにはびっくり。どこを切り取っても美しいターコイズ色。

そして、役者の芝居に集中することで、柳楽さんの芝居のすごさにも気づかされました。まるで『誰も知らない』のときに感じた自然だけど鮮烈なイメージ。それでいて、さりげないお芝居の中に感じる、これまで積み重ねた経験と成長。こういう成長をじっくり観られるのはうれしいことでした。

また、サヘル・ローズさんもめちゃくちゃいい。このキャスティングを考えたKENTARO監督には、今後めちゃくちゃ期待してしまいますね。国や言語を越えて、ストーリーをきちんと描くことができる監督だと思いますよ。ちなみにサヘル・ローズさんの出演作で別の作品もおすすめしたいんですが、それはまた次回以降に。

気分が悪くなるけど、全大人が観ないといけない作品！

さて、もう1作品はとてつもなく胸くそ悪いドキュメンタリー『ＳＮＳ -少女たちの10日間-』。気分が悪くなることは確実なんですが、これこそ今、全大人が観ないといけない作品です。

SNSで簡単に知らない世界にアクセスできる時代。便利ではあるんですが、世間を知らない子供たちには危険がいっぱいです。特に女児にとっては、大人の男たちからの性被害にあうリスクが非常に高いことはよく知られていること。

そこで、この作品の監督は、実験を試みます。12歳に見える大人の俳優をオーディションで選び、偽のSNSアカウントを立ち上げ、いくつかのルールを課して彼女らにどのようなアプローチがあるのかを監視します。

すると、アカウントを立ち上げた瞬間に、何人もの大人の男性からの性的な誘い文句が……。ここまでひどいの？と思わざるを得ない、最低最悪な性被害のリアルをとらえることに成功したドキュメンタリーです。

もうね……、大人は全員これを見ろ、といいたい。子供をいいように騙して、欲望のはけ口にしようとしている大人がどれだけたくさんいるかに愕然とします。それも、後々分かることですが、子供を相手にした商売を営む男性や、子供はもちろん孫までいるような高齢男性など、おそらく世間では“良識ある大人”というイメージを持つ男性がわんさか。

そもそも12歳の女の子を相手に性的なことを求めることが犯罪だということが分かっていながら、こんな気持ちの悪いことをよくぬけぬけと……と思いますね。もちろんプライバシー保持のために、その男性たちの写真はうまくぼかしの処理がされているんですが、その処理の仕方が上手。これだけでは本人確定ということはきっと難しいけど、どういう目つきをしていて、どんな印象なのかがはっきり分かるようにしてあるんですよ。これはすごいアイデアでしたね。

オーディションに参加した俳優たち自身も、23人中19人が10代前半の頃に大人の男性からの性被害にあっていたというのも衝撃の事実。だからこそ、現場には心理カウンセラー、弁護士などケアできることは全て用意して挑んだ撮影をしています。また、この作品をきっかけに警察も動きます。その模様も作品の中できっちりと描かれていますよ。

※次回は5月14日（金）に更新予定です！

取材・文：よしひろまさみち　撮影：源賀津己
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プロフィール

LiLiCo
1970年11月16日、スウェーデン・ストックホルム生まれ。18歳で来日し、芸能界へ。01年からTBS『王様のブランチ』に映画コメンテーターとして出演するほか、女優、ナレーター、エッセイの執筆など幅広く活躍。

夫である純烈の小田井涼平との夫婦生活から、スウェーデンで挙げた結婚式の模様、式のために2カ月で9kgに成功したダイエット術、スウェーデン育ちならではのライフスタイルまで、LiLiCoのすべてを詰め込んだ最新著書『遅咲きも晩婚もHappyに変えて 北欧マインドの暮らし』が、2019年9月に講談社より発売された。

『遅咲きも晩婚もHappyに変えて 北欧マインドの暮らし』

講談社　1400円（税別）
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