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横須賀綺譚

20/7/10(金)

『横須賀綺譚』 (C)横須賀綺譚SHINICHI OTSUKA

上映時間は86分。長編では短いほうだが、登場人物たちと長く濃密な時間を共にした感覚に陥った。他人に寄り添い、その人生に深くかかわった気分だ。誰かとこの作品について語りたくなった。 2009年3月、東京。知華子は父親の介護で帰郷することになり、恋人の春樹と住んでいた部屋から出て行った。それから9年。春樹は知華子が東日本大震災で死んだと聞かされ、被災地に向かう。しかし、そこで一本の電話が。携帯からは亡くなったはずの元恋人の声が聞こえてきた。そして友人から「横須賀で生きているかも」との情報が入る。港町の老人ホームを訪ねると、たしかにそこには彼女が……。 元恋人と、かつての「記憶」が共有できないもどかしさ。そんな2人の距離感を見事に表現したシーンがある。昼間、それぞれ雨傘をさした2人が暗いトンネルに入っていく。雨には濡れないのに傘はさしたまま。だから2人の距離は縮まらない。 被災地の場面も効果的だ。巨大防潮堤や、原発事故の除染廃棄物を詰めたフレコンバッグが山積みになった光景。背景に映り込んだ震災の記憶に触れたとき、現地で報道に携わった者として「あの日から何が変わったのか」という問いかけが頭に浮かんだ。

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