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【おとな向け映画ガイド】

ゲイカップルの旅路の先に-『スーパーノヴァ』、津軽・メイドカフェの青春『いとみち』をご紹介。

ぴあ編集部 坂口英明
21/6/27(日)

イラストレーション:高松啓二

今週末(7/1〜3)に公開される映画は15本。全国100スクリーン以上で上映される作品は『ゴジラvsコング』『七つの大罪 光に呪われし者たち』の2本。今回は、7/1(木)公開の感動作『スーパーノヴァ』と、6/25(金)公開の青春映画『いとみち』をご紹介します。

イギリス湖水地方を旅するカップル
『スーパーノヴァ』



人はいかに死と向き合うかという命題とLGBTQ、このふたつは最近よく映画のテーマになります。本作は、主人公が老いたゲイのカップルで、そのうちのひとりに若年性の認知症があるという設定。ただ、ゲイであることはごく自然のなりゆきであり、この映画ではそんなに重要ではありません。それよりも、愛する人が、記憶が消えて別人のようになっていく恐怖やせまりくる死と対置しているとき、パートナーはどんなふうに寄りそったらいいのか、どんな精神状態なのか、そちらに重きを置いて描いた映画です。

カップルは、ピアニストのサム(コリン・ファース)と、作家のタスカー(スタンリー・トゥッチ)。演じているふたりの役者はともに実年齢が61歳。役もそのあたりの設定です。ファースは『英国王のスピーチ』でアカデミー主演男優賞を受賞したイギリスの名優。トゥッチは、あ、この顔に見覚えあり、アメリカの名バイプレイヤーです。

タスカーの病が本格化し、そのことが引き金となって、お互いを思いやる気持ちが空回りしはじめます。サムのコンサート会場の町まで、タスカーの提案で、ふたりは愛犬と一緒にキャンピングカーに乗ってのんびりとした旅にでます。イングランド北西部の湖水地方。出会った頃に出かけ、愛を告白しあった湖、姉夫妻が住むサムの実家……。たぶんもう二度とはできないセンチメンタル・ジャーニーでした。

ききなれないこの映画のタイトルは、”超新星”という意味。星はその一生を終える時、花火みたいに大爆発を起こす。そしてまぶしい光を放ち、こなごなになって消える。そんな人生の終わり方の比喩です。 名優ふたりのたたずまい、なにげない態度のなかにこめられた愛情の表現、ウィットにとんだ会話、湖水地方の景色。どれもすばらしく、しみじみとした後味が残る、おとなの映画です。

【ぴあ水先案内から】

渡辺祥子さん(映画評論家)
「……やがて来る別れのときを深い想いと共に考えさせられる。……」
https://bit.ly/3gZUWsT

(C)2020 British Broadcasting Corporation, The British Film Institute, Supernova Film Ltd.

けっぱれ!三味線少女
『いとみち』



全編、津軽弁が飛び交い、字幕があれば助かると思うのですが、展開が理解できないわけでなく、観ているうちに、そのフランス語のような語感がかえって魅力的に聞こえてきます。

横浜聡子監督は、安田顕が主演した『俳優 亀岡拓次』を観て、注目するようになりました。テレビドラマの『バイプレイヤーズ〜もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら〜』の演出も担当。次回作を楽しみにしていました。青森出身。『ウルトラミラクルラブストーリー』(松山ケンイチ主演)などを含め、これが4度目のオール青森ロケ作品です。

いと、という名の女子高生が主人公。津軽方言を研究する学者で東京出身の父と、津軽三味線の名手でもあるおばあちゃんと三人暮らし。青森は早くに亡くなった母の郷里です。このおばあちゃんの影響で、いとは三味線の腕も確かですが、津軽弁もこてこて。「ご飯だよ、食べなさい」を「まま、けーっ」と言うのですから。クラスのみんなからあきれられるほど。そのいとが、なんと、人見知り解消とでも思ったのか、青森市のメイドカフェでアルバイトを始めるという、ある夏のドラマです。

いと役の駒井蓮を見ているだけで、幸せな気持ちになれる映画です。彼女も青森出身。発音は確かです。おばあちゃん役の西川洋子は、『竹山ひとり旅』などで知られる津軽三味線の巨星、高橋竹山の最初の弟子とのこと。この人のセリフがまたすごい。よくわからないのだが、ハートにびんびん響きます。父親役は豊川悦司。宇野祥平、古坂大魔王といったくせの強い役者さんも活躍します。

「め」という一文字、その意味を、映画を観た翌日に調べました。娘のことを心配して店を訪れた父親が、帰りしなに書いて残したメッセージです。わたしの映画の感想も、こんな感じ。

【ぴあ水先案内から】

野村正昭さん(映画評論家)
「……『竹山ひとり旅』(77) や『夢の祭り』(89)『オーバードライヴ』(04) などの系譜に連なる津軽三味線の映画でもある。……」
https://bit.ly/2T0Hn4B

(C)2021『いとみち』製作委員会

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