大久保佳代子 (オアシズ)の 人生そろばん
仕事現場への移動は電車やバスが一番
毎週連載
第110回
21/2/14(日)
このコラムで、これまでに何度か「いつか運転免許を取る」なんて言っていましたけど、結局4~5年前に挑戦しリタイアしたまま。おそらく運転しない人生になりそうです。だって、東京の道は何車線もあって難解だし高速道路なんて怖くて運転できそうにないですから。しかも、この1年はコロナ禍で、時間だけはあったものの積極的に運転免許を取りに行く雰囲気ではなかったですし。
仕事現場への移動は、自分の愛車で来る人もいますけど、基本、私は電車やバスなどの公共交通機関を利用しています。電車に乗りながら好きな音楽を聴いたり漫画を読んだり、バスに乗って景色をボーッと眺めたりする時間が好きなんです。よく「電車とかで声をかけられません?」と聞かれるんですが、これがまったくなくて。特に今はマスクもしていることも不自然ではないし、全然人にバレないです。
思うに、私が芸能人らしくないフォルムなり雰囲気だからかと。やはり芸能人って、一般の方と明らかに「サイズ感」が違うんです。顔は小さく、細身で脚は長くて。菜々緒さんなんて、100m先にいても分かりますから。あとは「独特のお洒落感」。高価なブランド品を身につけている場合もあるし、洗練されたデザインの服をサラッと着こなしていたりもするんです。そうなると、やはり周りとは異質な雰囲気が醸し出されていて、よくよく見ると芸能人だったと言うパターン。
その点、私の場合は、非常に平均的な体型をしているし、ブランド品も身につけていない。服は定番スタイルをヘビロテで着回すから、なんなら毛玉がたまに付いていたりすることも。自分で言うのもナンですけど、公共への馴染み方にはかなり自信があります。「ナンチャンを探せ」ならぬ「カヨちゃんを探せ」は難易度が非常時高いと思います。でも、そのおかげで誰にも気づかれずに電車やバスを楽しめるのでうれしい限りです。
ただ、それでも稀に、電車やバスに乗っていると、向こうのほうで私をチラチラ見てきたり、私の話をコソコソとしていることも。そういう時は「私は音楽に夢中ですから」感を全面に押し出したり、なんなら車両をスッと変えたりして、「声をかけてくれるな」オーラを大放出します。そうすると、察してくれるのか、だいたい声をかけられずに済みます。そもそも声をかけるほど私のファンではないと思いますが。
先日も、女子中学生が「大久保佳代子さんですよね?」と声をかけてくれたので、嘘をつくのもなんなんで「そうです」と返すと、まさかの「……」と無言に。特にうれしそうでもなく質問があるわけでもなくて。大久保さんかどうかの確認をしたかっただけだと思われます。芸能人やっていると、やや自意識過剰になってしまうんですよね。
もうお気づきだとは思いますが、私の私生活、全然華やかじゃないです。このコラムも100回以上続けてきましたけど、どの話も地味じゃないですか? せっかく芸能人になれたのだから、きらびやかな日常を送ってみたい気持ちはなくもないですが。ブランドの洋服に身を包み、ちょっとしたパーティーへ出向いたり、ピーターさんやアンミカさんのホームパーティーに招待されたり。うーん、でも疲れそうだから今の生活のほうがいいかな。結局、電車やバスに乗るほうが心地良いんです。
でも、私の周りは結構、公共交通機関派が多いです。いとうあさこさんは愛車派ですけど、光浦さんや森三中の黒沢さん、たんぽぽの川村エミコちゃんなんかも電車に乗っています。日本の電車やバスは大幅に遅れることもなく、計画も立てやすいからストレスがなくて最高なんです。なので、もはや車の免許は必要ないですね。可能なら、誰か特定の男性の助手席専用で生きていきたい限りです。
構成・文:松田義人(deco)
プロフィール
大久保佳代子おおくぼ・かよこ
1971年、愛知県生まれ。相方・光浦靖子とともに、1992年にオアシズを結成。OLと並行してお笑い芸人として活動をし、2010年以降はお笑い一本に。数多くのレギュラー、連載を持つ。
http://www.p-jinriki.com/talent/oasiz/
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