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MONKEY MAJIKならではのライブを包み込むアットホーム感 全国ツアーNHKホール公演

リアルサウンド

18/11/29(木) 17:00

 サンドウィッチマンとのコラボ曲「ウマーベラス」がヒットしているMONKEY MAJIKの全国ツアー『MONKEY MAJIK Tour 2018 ~Singles Collection~』がスタート。11月11日に東京・NHKホールで行われた初日は、「Around The World」などの代表曲から「ウマーベラス」までのヒット曲満載のセットリストに、12月5日配信リリースされる「クリスマスキャロルの頃には -NORTH FLOW-」(MONKEY MAJIK × 稲垣潤一 × GAGLE)も披露。総立ちの観客が一緒に歌う一体感と、故郷を愛し家族を大切にする彼ららしいアットホーム感が漂う、MONKEY MAJIKだからこその唯一無二のステージになった。

ツアー初日には魔物がいる

 NHKホールに集まった約3500人の観客。ファン層は、小さい子ども連れの家族や年配の夫婦、若いカップル、友達同士と年代も性別も実にさまざまで、MONKEY MAJIKの人気の幅広さを実感させる。また、メイナード(Vo&G)とブレイズ(Vo&G)が出演するNHK連続テレビ小説『まんぷく』の出演者も応援に駆けつけていて、2人から紹介されると客席からペンライトを振って一斉に声援を贈った。彼らの人柄と楽曲が、多くの人をひきつけていることが、会場の様子から伺えた。

 1曲目は、彼らのネーミングの元になったゴダイゴ「MONKEY MAGIC」のカバー。続けて「Around The World」と、『西遊記』つながりの2曲を挨拶代わりに披露してファンを沸かせた。メイナードがギターをフライングVに持ち替えて演奏したのは「Change」。爽快さのあるギターリフ。ブレイズのラップがキマると会場から歓声が湧く。キラキラとしたギターサウンドの「Fall Back」、四つ打ちビート「A.I. am Human」では会場にはクラップが広がり、「goin’ places」では観客がタオルを回しながら「オッオッオー」と声をあげる。また「STAY」では、爽やかなハーモニーが秀逸で、青空に突き抜けるようなイメージを見せてくれた。

 「どうも。興奮しすぎてギターをチェンジするとき、頭をぶつけちゃいました。すごいコブができて痛いよ」と、さっそく笑いを取ったメイナード。「ミュージシャンの仕事も大変だな」と返すブレイズ。こんな失敗談も構わず言えてしまうのは、ステージと客席との間で信頼関係ができあがっているMONKEY MAJIKのライブだからこそ。しかしツアーの初日というのはステージ上のアーティストにとっても観客にとっても非常にドキドキするもので、この日は頭から盛り上がりつつも、どことなく緊張感が漂っていたように感じたが、メイナードのたんこぶ発言によって、ステージ上も客席も一気に緊張が解けた様子だった。また10曲目の「夢の世界」では、ブレイズが歌い出しをミスって、「ちょっと待って、もう1回」とやり直すハプニングもあった。全国ツアー初日の魔物は確かにいたようで、ブレイズもこれでほぐれた様子だ。

 この日のセットリストは、『MONKEY MAJIK Tour 2018 ~Singles Collection~』というタイトルの通り、デビュー曲「fly」を始め「Headlight」などのシングル曲を中心に、「空はまるで」などファンに人気のアルバム曲や、ライブで初披露の曲も演奏した。たとえば「STAY」はライブ初披露とのことで、メイナードは「シングル曲じゃないけど、名曲みたいなね(笑)」と説明。ブレイズも「今までやったことのないタイプのツアーで、一度こういうツアーをやってみたかった」と、MCでツアーや選曲について語った。初めての試みが多いという点も、彼らにいつもとは違った緊張を与えていたかもしれない。しかし彼らは、そんな緊張さえも笑いに変え、自ら楽しんでいた。

「ウマーベラス」で会場をディスコに!

 聴かせどころの1つになったのは、「フタリ」から「夢の世界」「アイシテル」「The Mistakes I’ve Made」と続いたバラードゾーンだ。「フタリ」は、2006年にリリースした3枚目のシングル曲で、多部未華子や貫地谷しほり、池松壮亮などが出演した映画『夜のピクニック』主題歌として当時話題を集めた。「Around The World」のヒットで一躍注目を集めた彼らが、MONKEY MAJIK=英語という印象から、日本語の極上バラードナンバーも歌えるバンドだと世の中に認知させた1曲。やさしい歌声が広がり、観客はゆっくりと体を揺らした。続く「夢の世界」は、2011年の6thアルバム『westview』に収録されたピアノが切ないバラードナンバー。出だしを失敗するアクシデントもあったが、ちょっと咳払いをして、気を取り直して歌い始めると、一気に切なく孤独な情景が浮かび上がった。同曲を収録したアルバム『westview』は、ロンドンでマスタリングが行われ、それ以前にはなかったスケールの大きさが話題になったことが思い出される。ステージには夕日のようなライティングが当てられ、楽曲の世界観が会場いっぱいに広がった。

 2009年のヒット曲「アイシテル」は力強く温かさのあるミディアムなサウンドに乗せて歌われた〈しあわせすぎたの あなた残した記憶全てが〉というフレーズが、胸を締め付けた。そして「The Mistakes I’ve Made」は、孤独感が溢れるナンバー。ニュージーランドでレコーディングされた2016年のアルバム『southview』収録曲で、まるで洋楽のようなスケールの大きなサウンドに、〈涙が枯れるまで〉というフレーズや、教会で鳴っているようなオルガンの音が印象に残る。曇り空が広がる海岸でひとり海風にさらされているような情景が目の前に広がった。

 また、この日初披露の曲でもファンを喜ばせた。「仙台コラボの第2弾です。今回はアノ曲をリメイクしました」と紹介し、MONKEY MAJIK × 稲垣潤一 × GAGLE名義で12月5日に配信リリースする「クリスマスキャロルの頃には -NORTH FLOW-」を披露した。稲垣潤一の原曲「クリスマスキャロルの頃には」は、1992年にリリースされたミリオンヒット曲。クリスマスを彩るJ-POPの名曲のひとつで、「まだ時期的にちょっと早いけど、みなさんメリークリスマス!」と、いち早く披露してくれた。有名なサビメロはそのままに、新たな歌とラップが加わった「クリスマスキャロルの頃には -NORTH FLOW-」は、原曲のメロウさと切なさに新たな味わいが加わり、より今の時代にフィットした「クリスマスキャロルの頃には」になっていたように思う。観客も初めて聴く曲を聴き漏らさないようにと、静かに聴き入っていた。

 MCでは今年を振り返る場面もあった。「いろいろあって、忙しかった。いいアルバム(2018年3月21日発売11thアルバム『enigma』)もできて、夏フェスにも久しぶりに出て楽しかったし、「ウマーベラス」も最高なコラボだった」と、メイナード。最近11キロ痩せたと言うブレイズは、「痩せたのは「ウマーベラス」のおかげかな。衣装が緩くなって、ベースのDICKからベルトを借りました(笑)」と笑いを取る。そんなMCの話題にも登った「ウマーベラス」は、2018年のMONKEY MAJIKを象徴する1曲。同曲は、アンコールの最後に披露された。「次の曲はみなさんのお手伝いが必要です。準備はOK? 練習してきた?」と、メイナード。その声に応えて、ファンキーなサウンドに合わせて一緒に振り付けを踊った観客。会場にはミラーボールが回り、NHKホールは一気に懐かしのディスコ空間へと変身した。食べ物の名前が出てくるところは、〈もんじゃ、柳川、ちゃんこなべ〉と東京名物に置き換えられ、観客は一緒に歌って大興奮。NHKホールが完全一体になって、ウマーベラスダンスを楽しんだ。

 MONKEY MAJIKの音楽は、人の気持ちに寄り添ってくれる。シングル曲を中心にしたこの日のライブは、それが実に顕著だった。悲しいとき、孤独なとき、苦しいとき、うれしいとき、楽しいとき。彼らの楽曲は常に隣にいて、ときにはやさしく手を引いてくれる。東北の震災を自ら経験し、そこで体験したやさしさとぬくもりは、彼らの活動の原動力になった。震災以前にリリースした「アイシテル」や「ただ、ありがとう」などは、今ではその曲の持つ意味や説得力がまるで違う。あれから7年、まだ傷が癒えない人も多い。東北に限らず、さまざまな想いを抱えた人が全国にいる。彼らは今、全国ツアーを通じてより多くの人に寄り添い、手を引き、笑顔を広げてくれている。

■榑林史章
「THE BEST☆HIT」の編集を経て音楽ライターに。オールジャンルに対応し、これまでにインタビューした本数は、延べ4,000本以上。日本工学院専門学校ミュージックカレッジで講師も務めている。

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