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Base Ball Bearに聞く、バンド力学 スリーピースで立ち返るサウンドの原点とこれから

リアルサウンド

19/9/13(金) 20:00

 Base Ball Bearに、バンド力学についてのインタビューを行った。今年に入り、自らのレーベル<DGP RECORDS>を立ち上げた彼ら。1月にリリースされたEP『ポラリス』に続き、9月4日には4曲入りの新作EP『Grape』を配信リリース。どちらも、スリーピースとなったことで研ぎ澄まされた彼らのバンドアンサンブルを堪能できる作品となっている。

 バンドは9月15日に日比谷野外大音楽堂にてワンマンライブ『Guitar!Drum!Bass!Tour~日比谷ノンフィクションVIII~』を、9月末から12月にかけて全国ツアー『Guitar!Drum!Bass!Tour』を開催。各公演の会場では『Grape』の会場限定パッケージ盤も発売される。ギター、ドラム、ベースという3つの楽器だけで勝負しようとしているバンドの今とその向かう先について、小出祐介(Vo/Gt)、関根史織(Ba/Cho)、堀之内大介(Dr/Cho)の3人に話を聞いた。(柴那典)

バンド自体の集合生命体としての強さや逞しさ

――今のBase Ball Bear というバンドは、3人編成になって軌道に乗っている感じがするんです。自分たちのレーベルを立ち上げ、そこを拠点にポジティブなメカニズムをまわしている。

小出:はい。

Base Ball Bear – いまは僕の目を見て

――新作EP『Grape』もそういうことが伝わってくる作品だと感じました。改めて<DGP RECORDS>を立ち上げて今年1月のEP『ポラリス』をリリースするまでの流れから振り返ってもらえれば。どういう経緯で今に至っているんでしょうか。

小出:まず2017年に『光源』という3人になって最初のアルバムをリリースしました。「3人でやれることをやろう」という作品ではあったのですが、せっかく4人編成のタガが外れたんだから今まで出来なかった新しいことをやってみようというモードだったんです。初めて打ち込みをいれたり、KIRINJIの弓木(英梨乃)さんをサポートに迎えてツアーをしたり。ですが、結局ギター2本、ドラム、ベースという4人編成の時代とアンサンブルの考え方自体は変わってないことに途中で気付いたんですね。というのも、そのタイミングの日比谷野音(『日比谷ノンフィクションⅥ~光源~』)で、初めて大所帯のライブをやったんです。そのときに当時のチーフマネージャーから「じゃあ、Base Ball Bearは今後何でもやれるバンドでいいってことね」と言われて。そこで初めてハッとしたというか。「いや、違うわ」って。

――Base Ball Bearって、シーンや時代に対して常に批評的な視線を持っているバンドなわけじゃないですか。今の時代、ロックバンドの音にシンセや打ち込みのビートが入るのも当たり前だし、ステージにダンサーがいたりすることもどんどんアリになってますよね。だからBase Ball Bearがそうなるのもアリだったと思うんです。海外も含めたロックバンドの趨勢って明らかにそっちに向かっているわけだし。

小出:それはそれでアリなんですよね。実際『光源』のタイミングではそうだったんです。制作をしていたのはちょうど3年前くらいですけど、海外のバンドが向かってるトレンドがそっちだというのも、その段階で見えてたし。でも、やってみたら「あ、これ別にそこまで好きじゃないわ」ということに気付いた(笑)。作品としては好きでも、自分たちでやるのはそんなに好きじゃないって。そういうこともあって、本質的に3人編成というところに頭が切り替わるのにちょっと時間がかかったんですよね。その一番のきっかけになったのはマテリアルクラブをやったのが大きくて。

――小出さん主宰のプロジェクトとしてマテリアルクラブが始動したのは去年の後半のことですよね。

小出:そうですね。マテリアルクラブでは海外での音楽のトレンドを意識しながら、日本語ラップをやってみたい。それに、バンドではできないアイデアを膨らませたい。そのかわり、バンドはソリッドでポップなものにしたい。そうやって、方向性がハッキリとわけられたんです。だから、『ポラリス』はとにかくスリーピースのサウンドで、余計なダビングも一切しない作り方にしよう、と。

――『ポラリス』を作った段階で『Grape』に至る道筋も見えていたんでしょうか。

小出:『ポラリス』の段階でかなりのアイデアのストックがあったんですよ。あの制作の時は、自分がマテリアルクラブをやっていたのもあって、リズム隊の関根さんと堀之内さんのパートから作ってもらうということをやっていったんですね。関根さんのベースのリフがまずあって、それに堀之内さんがリズムをつける。次は堀之内さんの考えたビートに関根さんがベースラインを乗せる。さらに自分がメロディから考えるものもある。そうやって作っていったら、フォーカスを絞ったことによって考える方向が定まった結果、アイデアが増えていって。

――関根さん、堀之内さんは、どんな風に曲のモチーフを作っていったんでしょう?

関根:『ポラリス』のときは、作品に向けてというより自分が日々録りためて用意しているフレーズのネタ帳みたいものがあって。小出からそういう話があった時に「こんなネタがあります」って、ホリくん(堀之内)に30個くらい一気に聴かせたんです。それを一つずつ一緒にセッションして、「これは面白くなりそうだからこいちゃん(小出)に投げてみよう」と手応えのあったものを選別して、今度は3人でスタジオに入って演奏して作っていきました。もうその頃には3人でライブを始めていたので、3人でステージに立って演奏することを意識してました。

小出:3人で「せーの」で演奏して過不足がない状態というか。ダビングすればするほどライブでの再現性が落ちてくるんですよね。それがいけないというわけじゃないんですけど、「過不足ない状態で演奏で出来てるわ」という体感もすごく大切で。せっかく最小限の編成になったんだから、そういうアレンジの吟味をもっとしていってもいいんじゃないかって。

堀之内:僕発信のは、関根さんが出したフレーズから作ったものが先にあったので、関根さん発信のものにはない雰囲気のものを作りたいと思って出していった感じですね。

関根:そうしたら、明るい、元気のあるフレーズばっかり出てきて。キャラというか、人柄なのかと思いました。

――Base Ball Bearがそういう曲の作り方をしたのって、これまではあまりなかった?

関根:初めてです。

――そのことでBase Ball Bearのバンドの力学はどう変わったと思います?

小出:バンドそのものの捉え方が変わってきたと思います。3人の最小限の編成になったこと、ここ3年くらいの大変だった状況をサバイブしてきたことで、バンド自体の集合生命体としての強さや逞しさみたいなものがついてきた。だったら、グルーヴに言葉とメロディがついていく作り方をしていったほうが、今のバンドに似合うものができるなと思ったので。

――今のバンドに似合うもの、というと?

小出:極端な話、ドラムとベースがよければギターなんかさして弾かなくていいじゃん、みたいな気持ちにもなっていたんですよね。日本のロックって、ギターが弾きすぎてるというのを常々思っていて。それが「邦ロック」っぽさでもあるんだけど、ちょっともううるさいととすら思ったりして。だから、一度手数を減らして、フレーズを吟味しまくってみたら、より歌メロとアンサンブルが立つようになってきた。

TRICERATOPS、NUMBER GIRL、下北沢からの影響

――日本のロックシーンのここ10年、20年を振り返ると、スリーピースバンドのフォーマットって、いわゆるメロコア以降のストレートな8ビートをイメージしがちだと思うんですが、Base Ball Bearはちょっと違いますよね。特に関根さんのベースにブラックミュージック的な横ノリの要素があってドラムにも個性がある。そういうアンサンブルを踏まえて、J-POPとして成立するスリーピースのバンドという点で考えると、やっていることは違うんですけれど、TRICERATOPSとの共通点が実は大きいんじゃないかと思ったんですが。

小出:そこはすごく重要なポイントなんですよ。そもそも、自分たちにはTRICERATOPSの影響がものすごくあって。中3の時に初めて自分がボーカルで歌った曲が「ロケットに乗って」だったりするし、それくらい自分の根っこにある。でも、周りを見渡してみてもTRICERATOPSってフォロワーがいないんですよね。チャットモンチーの「シャングリラ」は「FEVER」とか「Raspberry」が元ネタになってると思うし、四つ打ちを取り入れていった我々世代のロックバンドのバックボーンとしてTRICERATOPSはすごく大きい。ただ、彼らがやってることは非常に高度なので、あれを継承できてるフォロワーのバンドがなかなかいない。

――非常に高度、というと?

小出:和田(唱)さんって、リフを弾きながら歌ってるわけじゃないですか。まずあれだけリフを弾きながらあれだけ歌える人がなかなかいない。コードをジャカジャカ弾きながら歌うのと、リフを弾きながら歌うのって全然違いますからね。さらに、コーラスがすごいんですよね。ライブ映像を観るとわかりますけど、林さんも吉田さんもめちゃくちゃ歌ってる。

堀之内:リハを見ても、コーラスのほうをちゃんとあわせたりしてるもんね。

小出:グルーヴがしっかりしていて、ギターがリフを弾いていて、コードに対して適正なボイシングがあって、コーラスがハーモニーを加えて、しっかりしたボーカルがあったら、それ以上余計なものが必要ないんですね。でも、あれだけしっかりしたアンサンブルを作れるスリーピースのバンドって、それ以降全然いないんですよ。だから、今もう一度急いで研究しないとって思っていて(笑)。

――Base Ball Bearって、2000年代から2010年代にかけて、日本のロックがどんどん洗練されていった、その重要なキーを握っているバンドの一つだと思うんですね。たとえばASIAN KUNG-FU GENERATION、チャットモンチー、フジファブリックなどゼロ年代にデビューしたいろんなバンドがいる中で、とりわけBase Ball Bearが特殊なのは、自分たちがどこから来て、何を受け継いで何をやってるかということに、きわめて明確な意識を持っている。

小出:そうですね。

――そのうえで、あえて聞きたいんですけれど、今語ってもらったようにTRICERATOPSはその源流として一つある。その一方で、下北沢で生まれた日本のギターロックというフォーマットに対しては、ずっと愛憎ありつつ、そこから完全に離れることなく今に至っていると思うんですね。で、その潮流の一つのルーツになっているのがNUMBER GIRLだと思うんです。そこに対してはどう受け継いでいると考えていますか。

小出:実は、世間一般、それから今の日本のロックが好きな人の中で思うNUMBER GIRL的なものと、僕らが捉えているNUMBER GIRL的なものって、ちょっと距離があるんじゃないかと思っていて。だから初期のBase Ball BearがNUMBER GIRLっぽいということを言われたりすると「NUMBER GIRLをそう捉えているのか、全然こんなんじゃないから」って思ってしまうんですよね。あそこから何か抽出して自分たちのサウンドに混ぜ込むのは本当に難しい。NUMBER GIRLって、何から何までアクが強いバンドなんですよ。4大怪獣が集まっているようなバンドなので(笑)。でも、僕らがちょうど下北でライブをやり始めた2000年代初頭には、NUMBER GIRLそのものを希釈して、薄めて使ってる人たちがものすごく多かった。僕らも最初はそういう風に始まっていますけど、脱したくても「手元にこれしかない」という自覚もあったんです。自分の中には、NUMBER GIRLとTRICERATOPSとSUPERCARしか取り扱える要素がない。あと、70年代のハードロック。あの時に自力で取り扱えそうなフォーマットはNUMBER GIRLを希釈したものしかなかった。それから、それこそ自分たちがどこから来ていて、これからどこに行くのかをはっきり意識しだした頃から、どんどん取り扱える材料が増えて、変わっていったんですけれど。

――どう変わっていったんでしょう。

小出: 2007年くらいから玉井健二さんのプロデュースが入って、そこから日本のポップスというものを解釈する時期に入っていくんです。だから、そこでギターロックがとか、下北沢が、という文脈は切り離されていった。『十七歳』とか『(WHAT IS THE)LOVE & POP?』とか、その次の3.5枚目という位置付けだった『CYPRESS GIRLS』と『DETECTIVE BOYS』の2枚はそういう作品ですね。だから『新呼吸』は全く関係ないものになっている。ただ、その流れの中で唯一「short hair」ははっきりと下北沢を意識した曲だった。

――そうだったんですね。

小出:僕らは自分たちが出てきた2000年代初頭の下北沢のムードが大変恐ろしかったんですね。ASIAN KUNG-FU GENERATIONやACIDMANがデビューして、ART-SCHOOLもフジファブリックもメジャーに行って、全国区になっていった。その後の下北沢の氷河期っぷりがすごかったんです。みんな、やっているのは、明るいギターポップか暗いUKロック。TEENAGE FANCLUBかRADIOHEADか。で、NUMBER GIRLか。

堀之内:僕らはそこに入れなかったというか、馴染めなかったというか。

小出:ここにカテゴライズされたらマズいなと思ったし。音楽的にも全然違うことをやっていかないとマズいと思った。あの時期に下北沢で鳴っていた音は身体に染み込んでいたんですけれど、これを自分たちが扱うのは危険だという。柴さんが言った愛憎がないまぜになっているというのはそういうことなんです。「ここにいちゃいけない」っていうのと「あの匂いが懐かしい」というのが同時に存在している。だから玉井健二さんのプロデュースでポップスのことを勉強して、そこを離れてセルフプロデュースになって『新呼吸』のタイミングでやっと自分たちらしいサウンドを作ることができて、そこで初めて下北系ギターロックのフォーマットをやってみることができた。それからもずっと水面下でそういう匂いやムードに惹かれるところはあるんですけど、やっぱり両刃の剣なんです。でも今回の「いまは僕の目を見て」という曲は、久々に下北系ギターロックのフォーマットを使っている。これは通常ツインギター用のフォーマットなんですけど、これをスリーピース用にコンバートしているので、ありそうでないことになっているんですよね。

――どうして過去の話を聞いたかと言うと、『Grape』というEPがそういう作品だと思ったからなんです。『ポラリス』ではラップが入っていたり、わかりやすく「こういう要素が入っています」というトピックがある。でも『Grape』にはそれがなくて、むしろバンドの構造や発想が刷新された状態で、10年前に「王道ギターロック」みたいに言われていたかもしれないフォーマットの曲をやっている。だから新しいことをやっている感じがする、という。

小出:まさにおっしゃるとおりで。というか、一周して2000年代初頭のサウンドがちょっとフレッシュに聴こえる時期に差し掛かっているなと思っていて。周りを見ていても、僕らが『C2』~『光源』でやっていたような、シティ・ポップ的アプローチや、シンセを入れたグルーヴィーなバンドサウンドが増えてきてますよね。「やっぱりな」と思って。で、この次のタームに何が来るのかを考えたら、「単純に演奏が上手い」というところに戻ってくると思ったんです。ギターが上手い、ベースにグルーヴがある、ドラムがタイトである。その場の機材で、裸一貫で演奏できる。そういうことが武器になる時期になってくるんじゃないかなって。だから『ポラリス』はバラエティを見せたいというコンセプトなんですけれど、今回の『Grape』は「演奏、楽しい」とか「バンド、楽しい」みたいな、そういうのが詰め込めたらいいなと思ってましたね。ギターをジャカジャカ弾いて嬉しい、みたいな。

――関根さん、堀之内さんは『Grape』がどういうものに仕上がった実感がありますか。

関根:ベース単体で言うと、『ポラリス』のほうが自分のフレーズから作っていて、ファンキーなものだったり、今までにないようなことをした手応えがあるんです。『Grape』に関しては、自分たちの今の手持ちの武器に非常に自信を持って、それだけで戦えるっていう感覚かな。

Base Ball Bear – ポラリス (2019.3.2 Ver.)

堀之内:僕は前作と対になるというか、今回は「踏まえてる」感が出てるなって思います。3人のライブと『ポラリス』を経てきた感じが4曲に出ているというか。今回、自分のフレーズから作っているのが「セプテンバー・ステップス」と「Grape Juice」の2曲なんですけれど、特に「セプテンバー・ステップス」は、リズムを面白く聴かせるために、今まで以上に音を抜いている。そこでも自分のルーツにあるファンキーな部分、ホワイトレゲエの部分を見せられた。3人の音のキャラクターをより顕著に見せられた気がします。

――3人のその演奏力、フィジカルの強さが、曲作りにおいても土台となっている。そういう感じがある。

小出:そうですね。そういうところに自信がある、そういうポテンシャルが自分たちにあると思わないと、こういうアプローチは怖くてできないので。演奏していてもヒリヒリするんですよ。音数少ないから。埋まってると安心するんですけど。

堀之内:このヒリヒリ感が楽しいのがいいなって。

小出:だから今、TRICERATOPSがやってることって、改めてすごいなって思っているんですよね。Aメロからサビまでずっと同じリフで、ワンループ中でメロディの起承転結をつけている曲もある。あと、チャットモンチーは異様に音数を抜くんですよね。あれは歌が引っ張るから余計なものがいらなくなっていたんだろうし。つまり、人間力が前提になってバンドのアレンジが決まっていく。自信のある人は自信のあるアレンジになっていくんだなって改めて思いました。

フィジカル作品にはあって、サブスクなどのデータにはないもの

――改めてプレイヤーとしての評価も聴ければと思うんですけれども。小出さんとしては、関根さんのベースと堀之内さんのドラムは、スリーピースになったことでどう魅力を増幅してきた、どう変わってきたと考えていますか。

小出:単純に2人ともアレンジ力がついたんじゃないですかね。僕がやりたいことに対して2人が考えてくることもそうだし、たとえば堀之内さんはリズムのすごく細かいところに気付くようになって、それがグルーヴの強度をさらに増す。そういうことが増えたなって思います。

――関根さんのベースはどうでしょう?

小出:ベースはもう最初のフレージングで勝ってる。逆にそれを封印したのが「Summer Melt」みたいなタイトな曲調で。これはどちらかと言えば海外のトレンドを意識しながら作った曲ですね。淡々としてるんだけど最後のサビだけ展開するとか。

――関根さん、堀之内さんから小出さんについて。Base Ball Bearの曲って、楽器はもちろんですけれど、歌がグルーヴにとってすごく大事だと思うんです。バンドサウンドがあってその上に歌があるというよりは、歌がグルーヴの大事なキーを握っているように見えるんですけれど。それを踏まえて、二人から見た小出さんはどう見えていますか?

関根:やっぱり歌のリズムって個性だと思うんですよ。同じ歌を歌っても、人によってリズムが全然違う。それは本当によく感じることで。こいちゃんは自分の歌い方と自分の歌のリズムを持っている人になったんだっていうのはよく思います。若い時はいろんな人の影響があったりしたと思うけれど、今はもうこいちゃんの歌い方がある。そういうボーカリストなんじゃないかなと私は思っています。

堀之内:今はリズムから作っている曲が多いので、メロディから作っていたら歌のメロディにアクセントを合わせたりするんですけれど、どういう歌が乗ってこようが、絶対的信頼を持てる。それでも歌とリズムのニュアンスが崩れないっていうのが持ち味なのかなと最近のやり方になってなおさら思います。

――それを踏まえて小出さんに聞きたいんですが、マテリアルクラブもやっているので、世界的にも日本語の表現としても、ラップ以降の歌のフロウというものがすごく重要になっているのを実感していると思うんです。若い世代がどんどん自由な発想で言葉を音符に当てはめている。

小出:ですね。

――そこに小出さんに自身も刺激を受けているし、そこのスキルも持っていると思うんですね。音符の上に言葉をどう置くかということについて、もっと新しいことができるとも思うんですけれども。そのあたりについてはどう思いますか?

小出:僕の場合は、今の若い子のアクセントの置き方とか音符の持っていきかたっていうのが、フレッシュだなって思いつつ、トリッキーとも感じてるんですよ。それは僕が、日本の歌謡とかJ-POPにおける日本語の置き方とメロディの関係性が土台にある人間だから、そう感じてしまうのかもしれない。言葉の置き方が新鮮に感じるのは、先に音を取ってるからだと思うんですね。たとえばトラップの跳ねるような音の置き方って、英語っぽい発音、韓国語っぽい発音に日本語を当て込んでるようなところがある。今の若い子たちはニュートラルに「こういうものだから」と、やれてると思うんです。でも、僕がそれをやると流行の物をわざとやっている感じになる。おじさんがスベってる感じが出てしまうかもしれない。だから僕はあえてやらないんです。マテリアルクラブでもトラップはあえてやらずに、90年代の日本語ラップみたいな硬い韻を踏んでいる。というのはそこに理由があるんです。

――なるほど。

小出:お洒落には聴こえると思いますけどね。こういう硬いロックバンド編成でそういう歌い方がやれたら何かの化学反応はあるかもしれない。今、そういうことを先にやっているのはUSとかUKというより韓国のグループという感じがしますね。ただ、日本語でやるのはなかなかしっくりこない。

――そこまでの感覚とアンテナを持って日本語でBase Ball Bear がタイトでソリッドなスリーピースバンドでやってる以上、カチっとしたリズムにメロディを乗せて歌っていくのが正解だと。

小出:そうですね。2019年の9月現在の提案はこうだという感じですね。

――ちなみに、もうひとつ。この作品は配信でリリースされたうえで、ライブ会場限定でCDが発売されるわけですが。このあたりはどういう考え方なんでしょうか。

小出: 根っこは、楽曲というものはアーティストにとって大事な財産だという話なんですよね。アーティストやレーベルは今後もっと楽曲を大事にして、大事にお客さんに届けることを考えないといけない。そうしないと、無料で聴かれるだけで流されて、消耗されちゃう。いまは、音楽の聴き方にいろんな選択肢ができて、マーケットが変わってきて。届け方も、楽曲をどう伝えて、どう売っていくかということも昔と同じじゃ通用しない。沢山聴いてもらいたいからYouTubeにフルでMVをアップする一方で、フィジカルは大切に売る。そういう考え方を同時に持っておかないといけないなって。

――これってZINEみたいなものだと思うんです。ZINEって写真とエッセイとかコラムとかインタビューとかを載せた同人誌みたいなものですけれど。たとえ同じ文章だとしても、Twitterで流れてくるものを見るのと、ちゃんとデザインしたものをクローズドな場所で買って手にとるのは、全然別の体験ですよね。

小出:全然違いますね。

――CDを買うって、そういうことになっていくんじゃないかなって思うんです。

小出:そうですね。いま、柴さんがさらっと言ったんですけど、“体験”っていうのがすごく大事で。以前は「CDを買う」という体験は、ただの「購入」だった。でも、ただの「購入」はもう高いんですよ。それに3,000円は払えないなという感覚の人は多いと思います。音楽を聴くために必要な単価が、下がってるわけですから。だけど、これが「体験」になると、捉え方も変わってくる。

僕らの今回の提案は、ライブとCDの購入がセットになることが大切で。CDなどフィジカルにはあって、サブスクなどのデータにはないものは、「愛着」じゃないかなと。ケースがボロボロになるくらい聴いたCDには曲にもアルバムにも愛着はありますけど、「この曲いっぱい聴いたな~」とデータに愛着を持つというのはあまりないと思うんですね。それこそがフィジカルが持つ可能性だろうと。僕らはお客さんの記憶に残るライブ体験を提供しなきゃいけないというハードルはあるんですけど、そういう体験と、CDを購入した体験を一緒に持って帰ってもらうことで、フィジカルである意味を感じてもらえたらなと思ってます。「あの日のライブで買ったな~」とかいつか思い出したりとかしてくれたら嬉しいですよね。こういう提案をどれだけできるのかという勝負にもなっていくんじゃないかなと思ってますね。

(取材・文=柴那典)

■配信情報
Base Ball Bear EP『Grape』
ストリーミングサービスおよびiTunes Store、レコチョク、moraなど主要ダウンロードサイトにて2019年9月4日(水)より配信開始
※対応ストリーミングサービス:Apple Music、LINE MUSIC、Amazon Music Unlimited、AWA、KKBOX、Rakuten Music、RecMusic、Spotify、YouTube Music
配信はこちら

<収録内容>
1.いまは僕の目を見て 
2.セプテンバー・ステップス (日本テレビ系「バゲット」9月エンディングテーマ)
3.Summer Melt
4.Grape Juice

■リリース情報
Base Ball Bear EP『Grape』
発売:9月15日(日) ※ライブ会場限定販売
商品形態:CD+DVD 
価格:¥3,500(税抜)
収録内容:
DISC1(CD)『Grape EP』
1.いまは僕の目を見て 
2.セプテンバー・ステップス (日本テレビ系「バゲット」9月エンディングテーマ)
3.Summer Melt
4.Grape Juice

DISC2(DVD) 『LIVE IN LIVE~17才から17年やってますツアー~〈OFFICIAL BOOTLEG VIDEO〉』
1. 17才
2. 試される
3. Flame
4. Transfer Girl
5. FUTATSU NO SEKAI
6. PARK
7. ポラリス
8. 星がほしい
9. 青い春.虚無
10. The Cut
11. 祭りのあと

発売元:DGP RECORDS / VICTOR ENTERTAINMENT

■ツアー情報
『Base Ball Bear 「Guitar! Drum! Bass! Tour~日比谷ノンフィクションⅧ~』
9月15日(日)東京都 日比谷野外大音楽堂
開場17:00/開演18:00
主催:ディスクガレージ
企画:制作:ソニー・ミュージックアーティスツ
協力:DGP RECORDS 
料金:指定席 4,800円(税込、D代無し)
スタンディング 4,500円(税込、D代無し)
備考:3歳以上チケット必要
問い合わせ先:ディスクガレージ 050-5533-0888(平日12:00~19:00)
チケット一般発売日:7月27日(土)10:00〜

『Base Ball Bear 「Guitar! Drum! Bass! Tour』
9月28日(土)香川県 高松DIME
開場16:30/開演17:00
9月29日(日)愛媛県 松山サロンキティ
開場16:30/開演17:00
10月12日(土)長崎県 長崎DRUM Be-7
開場16:30/開演17:00
10月13日(日)熊本県 熊本B.9 V2
開場16:30/開演17:00
10月19日(土)大阪府 なんばHatch
開場16:00/開演17:00
10月26日(土)長野県 松本Sound Hall a,C
開場16:30/開演17:00
10月27日(日)新潟県 新潟・studio NEXS
開場16:30/開演17:00
11月4日(月)神奈川県 横浜BAYHALL
開場16:15/開演17:00
11月9日(土)山口県 LIVE rise SHUNAN
開場16:30/開演17:00
11月10日(日)島根県 松江 AZTiC canova
開場16:30/開演17:00
11月21日(木)宮城県 仙台darwin
開場18:30/開演19:00
11月23日(土)青森県 青森Quarter
開場16:30/開演17:00
11月29日(金)千葉県 千葉LOOK
開場18:30/開演19:00
12月1日(日)山梨県 甲府CONVICTION
開場16:30/開演17:00
12月7日(土)北海道 函館 club COCOA
開場16:30/開演17:00
12月8日(日)北海道 札幌cube garden
開場16:30/開演17:00
12月15日(日)愛知県 名古屋 DIAMOND HALL
開場16:00/開演17:00
12月21日(土)福岡県 小倉FUSE
開場16:30/開演17:00
12月22日(日)広島県 広島CAVE-BE
開場16:30/開演17:00

企画:制作:ソニー・ミュージックアーティスツ
協力:DGP RECORDS 
料金:スタンディング 4,700円(税込、1D代別)
備考:3歳以上チケット必要
チケット一般発売日:9月28日(土)香川公演~10月27日(日)新潟公演
→2019年7月27日(土)10:00より販売開始
11月4日(月)神奈川公演~12月22日(日)広島公演
→2019年9月7日(土)10:00より販売開始

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