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『けものフレンズ2』の魅力を凝縮ーーどうぶつビスケッツ×PPPやGothic×Luckが描く音楽世界

リアルサウンド

19/3/10(日) 14:00

 自由で愛らしい「フレンズ」たちとの「たーのしー!」時間が2年ぶりに帰ってきた。2017年に一大旋風を巻き起こした『けものフレンズ』の続編となるTVアニメ『けものフレンズ2』が、今年1月より放送を開始。現在第8話までがオンエアされており、今期のアニメの中でも話題作として注目を集めているのだ。前作から制作体制を一新し、『アイカツ!』『ポチっと発明 ピカちんキット』などの子供向けアニメで知られる木村隆一監督を迎えた今回は、前シリーズのどこかのほほんとした空気感のなかに様々な謎や伏線を散りばめた作風を継承しつつ、よりマイルドで子供にも親しみやすい内容になった印象。とはいえ前作との繋がりを匂わせる描写があったり、思わず想像を膨らませて考察したくなる部分も多く、ちゃんと前作のファンや大人たちも夢中にさせる作りになっている。

(関連:どうぶつビスケッツ×PPPが語る、ヒットの経験で得た自信 「お互いを高め合うこともできた」

 本作の舞台は、この世界のどこかに作られた超巨大総合動物園「ジャパリパーク」。そこでは「サンドスター」と呼ばれる不思議な物質の力によって、ヒトの姿に変化してしまった動物たち、通称「フレンズ」が平和に暮らしている。そして物語は「フレンズ」であるサーバル(CV:尾崎由香)とカラカル(CV:小池理子)が、自分の記憶が曖昧なヒトの子供=キュルル(CV:石川由依)と出会い、その子の「おうち」を探すために一緒に旅に出るところからスタート。サーバルたちとキュルルの関係性は、前作の主人公・かばん(CV:内田彩)とのそれをなぞったもの。ジャパリパークのことを知らない(あるいは覚えていない)ヒトの子供が「フレンズ」と一緒に各地を巡ることで、視聴者も主人公と同じ目線で作品の世界を冒険する感覚を味わえるところも、前作を踏襲している部分だ。それに加えて今回は主にツッコミ役の新キャラ、カラカルがいるので、旅も賑やかなものになっている。

 第2話ではジャイアントパンダ(CV:前田佳織里)とレッサーパンダ(CV:遠野ひかる)、第3話ではバンドウイルカ(CV:木野日菜)とカリフォルニアアシカ(CV:吉岡茉祐)など、毎回旅先で新たな「フレンズ」と出会い、それぞれの動物の特徴や習性をネタにしたエピソードが展開されるスタイルも前作と同様。また、前作の人気キャラだったフェネック(CV:本宮佳奈)とアライグマ(CV:小野早稀)は、第8話までの時点では本編に登場していないが、代わりにオオセンザンコウ(CV:小野早稀)とオオアルマジロ(CV:本宮佳奈)が第1話から登場。フェネックとアライグマのコンビと同じく、主人公たちを追跡する役回りを担っている。

 そのように前作と符丁を合わせた部分も多い本作だが、何より衝撃的だったのが第5話のラスト。なんと前作の主人公・かばんが登場したのだ。それまで『けものフレンズ2』では、第1話のサーバルの回想の中でかばんらしき人物のシルエットが映ったのみで、本作と『けものフレンズ』が劇中でどのような関係性にあるのかはわからない状態だった(サーバルもどうやら第1期のときの記憶がない描写がされている)。だが、ここで1期のときよりやや成長した姿のかばんが出てきたことにより、『けものフレンズ2』は『けものフレンズ』と地続きの世界であり、時系列的には未来を描いていることが明らかになる。第6話でキュルルたち一行はかばんの「おうち」に迎えられるのだが、そこでかばんはアフリカオオコノハズク(CV:三上枝織)の博士とワシミミズク(CV:上原あかり)の助手と共に、サンドスターやセルリアン(ジャパリパークに存在する謎の生物)の研究をしていることがわかる。かばんはサーバルのことを覚えているふうにも描かれており、この辺りは本作の謎を解明する大きな鍵のひとつになっていそうだ。

■楽曲および作品の世界観にベストマッチなGothic×LuckのED

 そして第8話では、ジャパリパークのアイドルであるペンギンユニット、PPP(ペパプ)が登場。劇中で新曲「アラウンドラウンド」を披露したのだが、そのライブシーンのクオリティーの高さも大きな話題となった。ロイヤルペンギン(CV:佐々木未来)、コウテイペンギン(CV:根本流風)、ジェンツーペンギン(CV:田村響華)、イワトビペンギン(CV:相羽あいな)、フンボルトペンギン(CV:築田行子)ら、PPPのキャストが実際に踊った動きをモーションキャプチャーし、フルCGで再現したというこのシーン。制作は『ラブライブ!サンシャイン!!』のライブシーンにも関わるサブリメイションが手がけており、要するにアイドルアニメの最先端の技術を駆使して作られていたのだ。これはもしかすると『アイカツ!』シリーズで3DCGによるアイドルのライブシーンを作り続けてきた木村監督ならではのこだわりだったのかもしれない。

 その劇中歌もさることながら、ドラマーでもある音楽家・立山秋航による牧歌的なようでいてリズミカルに構築された、アフリカ音楽をはじめとしたワールドミュージックの要素も感じさせる色彩豊かな劇伴音楽、そして何よりOP・EDの両テーマ曲という音楽面での凝りようも本作の特徴のひとつ。OPテーマとなる「乗ってけ!ジャパリビート」は、前作『けものフレンズ』の名前を広く世に知らしめたヒット曲「ようこそジャパリパークへ」と同じく、サーバル、フェネック、アライグマからなるどうぶつビスケッツとPPPの合同ユニット「どうぶつビスケッツ×PPP」が歌唱を担当。もちろん作詞・作曲・編曲は今やアニソンシーン屈指の売れっ子作家となった大石昌良で、今回も『けもフレ』らしい魅力が凝縮した楽曲になっている。

 「ようこそジャパリパークへ」は、サンバなどでよく用いられる打楽器・クイーカの音色を効果的に使ったハイテンションかつ次々と曲が展開していく賑やかなアレンジに、メンバー8人のキャラクター性がしっかりと表現された「ドッタンバッタン大騒ぎ」な歌声が合わさり、アニソン/キャラソンらしさを意識しながらも多彩なアイデアを詰め込むことでより外側に伝播する力を持つ不朽の名曲になった。それに続く今回の「乗ってけ!ジャパリビート」では、いわゆるビッグバンドジャズのサウンドスタイルを大々的に導入。近年、映画『ラ・ラ・ランド』などの影響で再注目されたミュージカル映画の音楽、例えば先日惜しくも亡くなった映画音楽界の名匠ミシェル・ルグランの諸作にも通じるフレンチジャズ調の優雅で華やかなテイスト、あるいは古き良きブロードウェイミュージカルを彷彿させる楽団系ジャズのゴージャスさを取り入れることで、よりエンターテインメント感を強調した作りになっている。

 そしてEDテーマは、『けものフレンズ2』の制作に伴うオーディションで選出された二人の新人声優、カタカケフウチョウ役の八木ましろとカンザシフウチョウ役の菅まどかによって結成された新ユニット、Gothic×Luck(ゴシックラック)が担当。フクチョウ科の別名である「極楽鳥」にかけて「ゴクラク」とも呼ばれている彼女たちは、今回、物語の前半と後半で別々のEDテーマを歌唱。前半のEDテーマとなる「星をつなげて」は、過去にもかばんとサーバル「なかよしマーチ」、どうぶつビスケッツ「ファンファン!メロディ♪」といった楽曲を手がけてきたボカロP・じんが詞曲を提供しており、星の瞬く夜空をモチーフに「君」と共に過ごせる日々の喜びを歌う、明るく軽やかな友情ソングに仕上がっている。なお、余談だがじんは大石昌良がボーカル/ギターを務めるバンド、Sound Scheduleのファンとのことで、この曲では同バンドの「ピーターパンシンドローム」へのオマージュも忍ばせているとのこと。両曲を聴き比べてみるのもおもしろいかもしれない。

 もう一方の後半のEDテーマ「きみは帰る場所」は、このところ伊藤美来「閃きハートビート」、亜咲花「Singbird」、石原夏織「虹のソルフィージュ」など、作家活動も精力的に行っているfhánaの佐藤純一が作曲・編曲を担当した話題のナンバー(作詞はfhánaのほぼすべての楽曲の歌詞を書いている林英樹)。二人の幻想的なコーラスとチェンバロ風のクラシカルなフレーズを入り口に、どこかfhána「星屑のインターリュード」を思い起こさせる躍動感あふれるサウンドと、例え離れ離れになったとしてもいつかまた一緒になれるという希望を歌った、「星をつなげて」の内容とも繋がるような歌詞が、ロマンチックな景色を広げてくれる逸品だ。歌詞の〈途方もないくらい 長い旅の果て いつか僕ら 記憶のなか沈んでも また会えるんだ〉というフレーズからは、どうしても『けものフレンズ2』におけるサーバルとかばんの関係を重ねてしまいたくなるし、〈何万年たって 化石になっても 君のもとに さあ 帰れるんだ〉もまた作品のテーマ性を象徴しているかのよう。八木と管のピュアな歌声同士によるデュオスタイルも、楽曲および作品の世界観にベストマッチ。まだ聴いていない人は、アニメ本編の盛り上がりと共に楽しんでみるのはいかがだろうか。(流星さとる)

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