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「リラックマとカオルさん」制作スタジオに潜入、太陽の光までこだわる繊細な世界

ナタリー

19/2/21(木) 12:00

「リラックマとカオルさん」メイキングカット

Netflixのオリジナルシリーズ「リラックマとカオルさん」の制作現場に映画ナタリーが密着した。

2003年に登場して以来、日本だけでなく海外でも多くのファンを虜にしてきたリラックマ。本作では少しとぼけたアラサーOL・カオルさんとリラックマたちが過ごす12カ月が描き出される。カオルさんに声を当てるのは多部未華子。アニメーション制作を担当するのは「どーもくん」や「こまねこ」シリーズなどストップモーションアニメの制作で知られるスタジオ・ドワーフだ。

2018年6月中旬、東京・東村山にあるドワーフのスタジオで撮影が行われていた。1日に撮影できるのが、わずか7秒から8秒だという本作。基本的には1秒あたり12コマ分のカットが使用されるが、細やかな動きのあるシーンについては24コマ撮影する場合もある。

2階建てのスタジオ内は暗幕で部屋が仕切られており、カオルさんのアパート内や外観、職場オフィスなどの場面ごとに、全12名のアニメーターを中心に各部屋で作業が進められている。暗幕が少し揺れるだけで照明に影響が出るため、走り回るなどの行為は厳禁。スタジオ内には張り詰めた空気がただよう。冬の場面ではリラックマたちが雪合戦に興じるシーンも。雪などの自然物はコマ撮りの中でも難易度が高いため、スタッフは細心の注意を払いながら、塩を敷き詰めて雪を再現したセットでコリラックマが雪だるまを作る姿を撮影していた。

緊張感あふれるスタジオの雰囲気とは一変、工房のような部屋ではスタッフたちがせわしなく手を動かし、縁日のシーンに出てくる綿菓子などの小物や、カオルさんの顔や髪の毛といったパーツ、さらにカオルさんの衣装を準備。カオルさんの洋服は、全13話で43着も登場するというこだわりようだ。カオルさんのパペットは7体、リラックマ、コリラックマ、キイロイトリは10体ずつ用意され、リラックマが寝そべる姿の撮影用には少し柔らかい素材になっているなど用途が異なるものも。また架空の街・荻ヶ谷でカオルさんが住むサクラコーポにはすべて手作りの家具が配置されている。

ドワーフのプロデューサー・松本紀子によると、本作は「日本の美しい四季に乗せて、働く女性の悩み揺れ動く心を描く」という大人の女性をメインターゲットにした作品。各11分で全13話というドワーフ史上最長の作品になるという。CMディレクターとして活躍してきた小林雅仁を監督として起用した理由を、松本は「アニメを理解しつつ、実写ドラマを作ったことのある方にお願いしたいと思いました。魅力的な登場人物たちが織りなすドラマを撮れる方、そこで積み重ねてきた知識と画作りをきちんとストップモーションアニメに定着させられる方。それが小林監督だったのです」と語る。小林の引き連れる撮影部、照明部は実写制作をメインとするスタッフ。シーンの時間帯によって太陽の位置も微妙に変化させており、松本いわく「自然光の美しさを知ったうえで作り上げる世界は『ストップモーションアニメの常識』をひとつ飛び越えたスケールのあるものになったはず」。

また今回、「アングリーバード」のフランチェスカ・ナターレがキャラクターデザインを担当した。ティム・バートンの作品を手がけたイギリスのパペットメーカー、マッキノン&サンダースで働く日本人スカルプターのタカシ・タテオカが立体原型を作成。ナターレによるチャーミングでユーモアあるデザインを、タテオカが日本人の造形へと着地させた。さらに脚本は、“ほっこり”の裏で実はとてもリアルな女性の生き方を描くという理由から「かもめ食堂」の荻上直子が担当した。

監督の小林は「日本ってこういう国だよ、こういうところに住んでるんだよということをスパイスとして楽しんで見えるように桜やお祭りといった要素も盛り込んでいます」と四季を描くことについて言及。また、ストップモーションアニメに限らない苦労として「女性にしかわからない、聞いたことのない会話なんかは、女性スタッフに『こういうとき何しゃべってるの?』と聞きながら作っています。乙女心は持っていると自負しているのですが……」と苦笑する。ドラマとして成立する作品を目指し、従来のストップモーションアニメーションとは異なるカット割りにも挑んでいるそうで、小林は「月9や朝ドラを観たあとのような気持ちになってくれたら」と期待を込めた。

「リラックマとカオルさん」は4月19日よりNetflixにて全世界190カ国で独占配信。

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