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Jay Som、Bedouine、Joanna Sternberg…USインディーシーンで活躍する女性SSW新作5選

リアルサウンド

19/8/5(月) 10:00

 今月はUSインディーシーンで活躍する女性シンガーソングライターの新作からピックアップ。

 Jay Som『Anak Ko』

 1stアルバム『Everybody Works』で一躍注目を集めた、LA出身のMelina Duterteによるソロユニット。先日行われた『FUJI ROCK FESTIVAL ’19』でのライブも話題を呼ぶなかで新作が届けられた。最近、彼女は実家を出て自立。ずっと手放せなかったアルコールをやめて、新しく生まれ変わったつもりで新作に挑んだとか。これまでは一人で自宅録音していたが、今回はVagabonことLaetitia TamkoやAnnie Truscott(Chastity Belt)、Justus Proffittなど様々なゲストが参加。曲のダイナミズムやグルーヴに磨きがかかっている。また、Cocteau TwinsやThe Cureなど、80年代のニューウェイブバンドからの影響を感じさせる甘美なメロディがガーリーなロマンを感じさせたりも。「Anak Ko」とはタガログ語で「私の子供」という意味らしいが、フィリピン系アメリカ人というルーツを意識して我が子を生むように作り上げた本作は、Melinaの新しい一歩を祝福する力作だ。

Jay Som – Tenderness [OFFICIAL MUSIC VIDEO]

 Bedouine『Bird Songs of a Killjoy』

 シリア生まれでサウジアラビア育ち。現在はLAを拠点に活動するAzniv Korkejianのソロプロジェクト・Bedouine。デビューアルバム『Bedouine』で注目を集めた彼女の新作は、前作同様、Matthew E. Whiteが主宰するレーベル、<Spacebomb>からのリリースだ。Adele、Beckなどのレコーディングに参加してきたGus Seyffertがプロデュースを担当。アートワークの雰囲気そのままに、70年代のシンガーソングライター作品を思わせる繊細で洗練された音作りで、羽根のように柔らかで内省的なAznivの歌声の魅力を引き出している。とくに表情豊かなオーケストラアレンジが心地良い浮遊感を生み出していて、優美な歌のなかにアシッドフォーク的な妖しい魅力が揺らめく瞬間も。Joey Waronker、Smokey HormelなどBeck人脈のアーティストが参加していて、BeckがプロデュースしたJudee Sillみたいな雰囲気がたまらない。

Bedouine – Echo Park

 Joanna Sternberg『Then I Try Some More』

 Joanna SternbergはNYを拠点に活動するシンガーソングライターで、本作が記念すべきデビューアルバム。彼女は漫画やイラストも得意らしく、恐らく本作のアートワークも彼女が手掛けたのだろう。散らかった机の上を前にして、途方にくれる女の子の表情が印象的だ。カントリーやフォークをベースにした歌は、ギターやピアノの弾き語りを中心にしたシンプルなもの。まず、惹きつけられるのは歌声だ。戦前のフォークシンガーのように純粋で、どこか哀しげ。無防備な感情が、とぼとぼとメロディのうえを歩いているようだ。『Pitchfork Media』ではDaniel Johnstonと比較されていたが、危うげな繊細さと微笑ましい無邪気さがユニークな魅力を生み出している。Conor Oberstが気に入ってツアーに同伴したことでも注目を集めているが、ぜひ生で歌声を聞いてみたい。

“You Have Something Special” by Joanna Sternberg – BreakThru TV [ep186]

 Sofia Bolt『Waves』

 フランス出身で現在はLAを拠点に活動するAmélie Rousseauxのソロユニット・Sofia Bolt。デビュー作となる本作には、Rhyeを手掛けたプロデューサーのItai Shapiraや、Angel OlsenをサポートしてきたEmily Elhaj、そして、アメリカンポップスのレジェンド、Van Dyke Parksなど様々なゲストが参加して、LAの名門スタジオ、Revival at The Complexでレコーディングされた。Amélieはエレキギターとボーカルを担当。タイトなバンドサウンドには、オルタナティブな歪みや西海岸らしいサーフ/ガレージロックの豪快さが息づいている。その一方で、リバーブを聴かせた空間に浮かぶAmélieのアンニュイな歌声も魅力的で、荒波の海なか、女の子が涼しい顔をして浮き輪で泳いでいるようなクールさ。なかでも、Van Dyke Parksがストリングスアレンジを手掛けた「Waves」の奇妙な無重力感が面白い。

Sofia Bolt – Waves (Van Dyke Parks Edit)

 Mega Bog『Dolphine』

 シアトル出身のErin Elizabeth Birgyによるソロユニット・Mega Bog。5作目となる本作は、Meg Duffy (Hand Habits)、James Krivchenia(Big Thief)、Zach Burbaなど前作にも参加した仲間に加えて、ブルックリンのシンガーソングライター、Nick Hakimも参加。NYでレコーディングされた。Erinが持ってきた曲のスケッチをもとに作り上げていくらしいが、ジャズのセッションのように曲の展開は複雑で先が読めない。といっても難解というわけではなく、そこには不思議なポップさや艶やかさがある。フルートやシンセが飛び交い、突然、エレキギターがラウドに掻き鳴らされる、サイケデリックでプログレッシブな世界。そんななか、少女のように軽やかに駆け抜けるErinの歌声は、歌うというより、何かを演じているようなシアトリカルな雰囲気もある。起伏に富んだ曲の展開や技巧的な演奏は物語性を感じさせるが、本作ではイギリスのSF作家、Ursula K. Le Guinに影響を受けたとか。できれば対訳つきで、じっくり聴き込みたい。

Mega Bog – Truth in the Wild

■村尾泰郎
ロック/映画ライター。『ミュージック・マガジン』『CDジャーナル』『CULÉL』『OCEANS』などで音楽や映画について執筆中。『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』『はじまりのうた』『アメリカン・ハッスル』など映画パンフレットにも寄稿。監修を手掛けた書籍に『USオルタナティヴ・ロック 1978-1999』(シンコーミュージック)などがある。

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