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山田裕貴は役を“生きる” 熱い生き様を見せた必見の3作

リアルサウンド

20/5/5(火) 8:00

 今年30歳の節目の年を迎える山田裕貴。俳優デビューは2011年の特撮ヒーロードラマ『海賊戦隊ゴーカイジャー』のゴーカイブルー役で、14年には山田悠介の小説が原作の『ライヴ』で映画初主演を飾った。これまでにテレビ、映画、舞台と多くの作品に出演しており、近年ではNHKの連続テレビ小説『なつぞら』の小畑雪次郎役で幅広い世代に認知された。

【写真】『HiGH&LOW』鬼邪高・村山

 特徴的な切れ長の瞳を武器に、キラキラ青春映画からヤンキーもの、若手刑事、二枚目でも三枚目でも、どんなジャンル、役柄でもこなす。その俳優、山田裕貴としての力を培ってきたのは、本人の持つ負けん気の強さだ。「もっと知名度を上げたい」「負けたくない」「俳優王になる!」など、熱い言葉を吐くこともしばしば。バイタリティでこの10年を駆け上がってきた。そこに愛嬌が同居していることで、共演者やスタッフ、観客からも愛される存在になっている。そして山田自身が語っている通り、役を「生きる」ことでどの役もリアルな人間として感じさせるのだ。そんな山田の出演作のなかでも特に必見な3本を挙げた。

■『ストロボ・エッジ』(2015年)

 咲坂伊緒の人気少女漫画コミックスを、福士蒼汰と有村架純のW主演で映画化した本作は、恋愛経験ゼロのヒロイン・木下仁菜子(有村架純)が、人気者で年上の彼女のいる一ノ瀬蓮(福士蒼汰)を好きになり、いちずに思い続けるようになる。山田が演じたのは、蓮の親友で、一見チャラそうな茶髪男子の安堂拓海。蓮を好きな仁菜子に興味本位で近づくが、やがて本気で仁菜子に惹かれていく。

 あくまでも軸は福士と有村であり、仁菜子が蓮に向けるまっすぐな恋心にキュンとなるが、安堂の不器用な男らしさがそれ以上にキュンキュンさせる。特に、後半の仁菜子と安堂が教室でぶつかるふたりきりのシーンは、観る者の心を完全に引き込む。出演当時、山田は前年の『ライヴ』にて映画初主演を果たしていたものの、本人としては人気コミックスの人気キャラを演じること、当時は福士と有村に比べて知名度が低かったことで、かなりのプレッシャーがあったという。そして安堂に寄せるためと約10キロの減量を行い、撮影に臨んだ。結果的に、山田の安堂は蓮との人気を二分するほどの支持を得たが、人気キャラだからといって、コミックスの安堂をそのまま実写に起こすのではなく、山田らしい強さと軽さを溶かした実写ならでの安堂を生んだことで成功へと繋げた。

■『闇金ドッグス6』(2017年)

 『ガチバン』シリーズの窪田正孝主演の『ガチバン ULTRA MAX』(2014年)と『ガチバン NEW GENERATION』(2015年)の2作品に登場したイチキャラクターだった、山田演じる安藤忠臣を主人公に、2015年に裏社会ものの『闇金ドッグス』が誕生。人気を博し、シリーズ化された。山田は第1作と、それぞれ2作、4作、6作、8作で主演を務めている。元やくざの闇金業者を主人公にした本シリーズは、各エピソードを通じて人間の本性をあぶりだす、かなり攻めた内容になっている。そのなかで、山田は裏社会に生きる大人の男の静かな迫力を滲ませる。

 『闇金ドッグス6』では、闇金業を営む安藤がブローカーから買った焦げ付いた債権から1000万円を搾り取ろうとするが、債権者が行方不明となり、その妻・未奈美(西原亜希)が現れたことで物語が動いていく。実は未奈美は安藤のかつての恋人だった。観終わって、鬱々とした気分になる危険性もあるシリーズだが、人間の狡さや汚さに、反面教師としたり、騙されないようにと警告を受け取ることもできる。第4作では、他シリーズとは違う安藤のロマンス要素に触れることができ、20代後半の男らしい山田の色気が感じられ、ラストには切なさが残る。

 キラキラ系ではない山田を楽しめる作品としては、『HiGH&LOW』シリーズでの狂気的な側面を見せる鬼邪高校番長・村山良樹役も推しだ。山田の好演によって人気が出たことで、メインキャラクターへと成長していった。最新作『HiGH&LOW THE WORST』(2019年)での卒業は大きな話題を持って伝えられ、改めて村山人気を感じさせた。不良ものでは、少女漫画原作の『ホットロード』(2014年)の金パ役でも、すでに存在感を放っていた。また伊藤健太郎主演の『デメキン』(2017年)では主人公の親友としてまた別の熱さを感じさせる。『あゝ、荒野』前篇・後篇(2017年)、『亜人』(2017年)も全くキラキラ系ではない2作品。いずれも短い出演シーンで爪痕を残している。

■『あの頃、君を追いかけた』(2018年)

 本作で山田では主演を務めた。台湾で社会現象を巻き起こすほどのヒットを記録し、2013年に日本公開された同名の恋愛青春映画を、日本を舞台に置き換えたリメイク作品である。仲間たちと、日々バカ騒ぎを繰り返していた地方都市の高校生・水島浩介(山田裕貴)は、優等生の真愛(齋藤飛鳥)に苦手意識があったが、話をするうちに、真愛の真っすぐさに触れ、惹かれていく。

 乃木坂46の齋藤が期待にたがわぬ、いや期待以上のヒロインオーラを爆発させてくれたが、何より本作で作品を引っ張っているのは山田の振り切れぶりだ。仲間思いでおバカなクリクリ天然パーマのお調子者・浩介の、元気男子っぷりを山田が全力で表現。家に帰ると、真っ裸で歩き回り、お尻もばっちり披露。笑わせながら、やがて高校を卒業して大学へと進み、近づいたと思った真愛との距離が離れていくもどかしさや、確実にあり続けた心の奥の思いを流れる時間のなかで積み上げていく。リメイク作品には、オリジナルにその国ならではの要素が強く出ていることも多く(特に本作は自伝的小説が基)、難しくもある。だが本作はオリジナルへのリスペクトを込めつつ、キャスト陣それぞれがもともと持っている魅力を増幅させて、観る者の共感を誘う。山田は、単純バカに思えて「芸術家性と犯罪者性」の二面性を持つ浩介を、ひとりの人間としてきっちり肉付けして存在させてみせた。

 芸歴10年とは思えぬほどに多作な山田。本当にちらっと映るだけの「山田裕貴を探せ!」的な贅沢な出演をすることもある。『オオカミ少女と黒王子』(2016年)、『センセイ君主』(2018年)にもちらりと顔を覗かせている。またカンヌ国際映画祭パルムドール(最高賞)獲得の是枝裕和監督作『万引き家族』(2018年)にも、重要な役で短く出演しているのでチェックだ。

 さて、本年は陶芸王子役で出演した中井貴一×佐々木蔵之介のコメディ『嘘八百 京町ロワイヤル』が公開された山田。今後はアニメ『映画クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者』、15代将軍・一橋慶喜を演じる、司馬遼太郎原作、原田眞人監督・脚本、岡田准一主演の『燃えよ剣』、長野オリンピック金メダル獲得の裏にあった感動の実話を描く『ヒノマルソウル~舞台裏の英雄たち~』、人気コミックが原作の北村匠海主演作『東京リベンジャーズ』が控える。『東京リベンジャーズ』では、主人公が挑むことになる関東最凶不良軍団・東京卍會副総長役で、総長役の吉沢亮と最凶コンビを組むことが発表されている。時代劇、感動実話、不良ものと全く毛色の違う作品が控える山田。公開時期は不透明だが、さまざまな役をそれぞれに熱く生きてみせてくれるはずだ。

(望月ふみ)

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