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BUMP OF CHICKEN、UNISON SQUARE GARDEN、RADWIMPS…新作に共通する構造

リアルサウンド

19/7/21(日) 8:00

 毎月、ジャンル問わず多くの新譜がリリースされている。この記事ではその中でも7月リリースの中から注目のバンドのアルバムをいくつか紹介したいと思う。

(関連:BUMP OF CHICKEN『aurora arc』レビュー:バンドの歩みが“オーロラの弧”のように結実

 まずは、7月10日にリリースされたBUMP OF CHICKENのメジャー7作品目となる『aurora arc』。

 前作から約3年5カ月ぶりのリリースとなるこのアルバムは、全14曲中11曲にタイアップが付いているという快作で、ボリューム感だけで言えば、ベストアルバムのそれに近い。にも関わらず、このアルバムはシングルの寄せ集め、あるいは単なるタイアップソング集にはなっていない。それはなぜか? アルバムを通じて、1つのメッセージを語っているからだ。そのメッセージを想像する上で重要な役割を担っているのが、本編の最後に収録されている「流れ星の正体」という一曲である。

 「流れ星の正体」のラストの大サビのフレーズ〈お互いに あの頃と違っていても 必ず探し出せる 僕らには関係ない事 飛んでいけ 君の空まで 生まれた全ての力で輝け〉に、アルバムを通してリスナーに語りたいことが集約されているように思う。“流れ星”つまり自分たちの楽曲が、“空”=リスナーの心に届いて、輝いて欲しい。そんな願いが込められているように思うのだ。

 「天体観測」の頃から頻出させてきた星や宇宙というモチーフを使い、丁寧に人間の内面を描写してきたBUMP OF CHICKENだからこその歌詞と言えるだろう。長年バンドを追ってきた人ほど、〈あの頃と違っていても必ず探し出せる〉というフレーズに、グッとくるのではないだろうか。

 そして、これと同じような構造でアルバムを構成しているのが、おなじく7月に発売されたUNISON SQUARE GARDENの『Bee side Sea side ~B-side Collection Album~』である。

 同作は、カップリングベストアルバムであり、BUMP OF CHICKENがリリースしたオリジナルアルバムとは事情が大きく異なる。

 収録されている曲は再録分もあるとはいえ、デビュー期からの曲をパッケージしており、15年という長いスパンの間に作られた様々な毛色の作品を収録している。

 このアルバムのラストを飾るのは「プログラムcontinued (15th style)」。この曲は、UNISON SQUARE GARDENが10周年の時にリリースしたベストアルバム『DUGOUT ACCIDENT』に収録されている「プログラムcontinued」の歌詞を一部書き直し、新たに録り直したものである。同曲では、自分たちがどんな思いで15年間歩んできたのか、15周年を迎えたことでいまどのような気持ちなのか、そしてどういった心持ちで次に向かおうとしているのかが彼ららしい言葉で紡がれている。

 今作を通して表現しているのは“15年間の自分たち”であり、ラストの「プログラムcontinued (15th style)」でその歴史を総括してみせる。そんな構造がこのアルバムにはある。カップリング集というレギュラーとは違う形のアルバムであっても、自分たちはこういうバンドなのだ、というメッセージをきちんと作品に宿していると言えるだろう。

 近年、アルバムという作品の意味合いは大きく変わってきている。サブスクリプションやYouTubeで聴くことが一般的になる中で、アルバムを通して聴くのではなく、1曲1曲を抜き出して聴く楽しみ方もオーソドックスになりつつある。そういうあり方に迎合するように一曲一曲が独立して、聴きやすいようにデザインされるアルバムも少なくない。そんな中でこの2作品は1曲ずつ聴く楽しみを受け入れつつも、アルバムとしての作品性も大事にしており、アルバムを通して聴くことでメッセージが届くように仕掛けられているわけだ。

 それを踏まえた上で最後に紹介したいのは、RADWIMPSが7月19日にリリースしたニューアルバム『天気の子』だ。

 このアルバムは、新海誠監督作品『天気の子』のために書き下ろされた楽曲が収録されており、映画のサウンドトラックのような位置付けの作品となっている。

 RADWIMPSとしての作品というよりも、企画アルバムに近しい存在のアルバムだ。が、ここで強調したいのは、タイアップありきの作品集でありながらも、この作品はRADWIMPSとしての作家性が色濃く出ているということだ。というよりも、RADWIMPSが持つ世界観が、新海誠監督の映画の世界観と共鳴しており、RADWIMPSが作家性を発揮すればするほど、映画の本質と交錯していると言ってもいいかもしれない。

 この作品は全31曲中、劇伴は26曲。ゲストボーカルとして三浦透子がマイクを取る作品が2曲あり、普通のアルバムとは構成が大きく違う。そのため、1曲1曲を独立して聴いて楽しめるアルバムになっている。一方で、アルバムを曲順通りに聴くことでRADWIMPSの作家性も堪能することができるようになっている。アルバムの最後に配置されたボーカル曲「大丈夫」が言葉の強いバラードソングであり、アルバム全体を総括するようなメッセージ性の強い作品になっているのも、きっと偶然ではないだろう。

 なぜ、この3作品はそういう構造を取っているのだろうか? 戦略的な部分もあるのかもしれないが、それだけではないだろう。おそらく、ここで紹介したバンドは作家性が強く、どういう体裁の作品をリリースしたとしても、自然と自分の表現したいものに引き寄せられていくのだと思う。1曲1曲を独立させることができるアルバムを作ったとしても、アルバムだからこそ描ける“何か”=自己表現を作品の中で行なう。タイアップソングであっても、ベストアルバムであっても、企画アルバムであっても、それが自分たちと紐づいた作品である以上、彼らの作家性を強く感じられるものになるのだろう。(ロッキン・ライフの中の人)

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