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『Feat.ソニーミュージックオーディション』が音楽シーンに呼んだ新風 白熱の最終審査振り返る

リアルサウンド

18/10/25(木) 10:00

 ソニー・ミュージックレーベルズが主催する、新機軸の音楽トレンド創出オーディション『Feat.ソニーミュージックオーディション』(以下、『Feat.』)のファイナル審査イベント『Feat.ソニーミュージックオーディション FINAL in Zepp DiverCity』が10月9日、Zepp DiverCityにて開催。

参考:SNS時代に音楽をリスナーへ届ける方法とは? SUKISHA、葉山柚子、夜中出社集団に聞いた

 YouTubeやニコニコ動画、最近であればTikTokといった動画配信サービス、さらにSNSやサブスクリプションサービスなど……音楽発信の多様化が進むのと比例するように様々なスタイルのアーティストが登場する現在の音楽シーン。その中でヒット作品やヒットアーティストを生み出す過程において、「インターネット上で“バズ”や“トレンド”を生み出すこと」は、年々重要性を増してきているように思う。

 そんな時勢にあわせて企画された『Feat.』は、年齢・性別・スタイルのすべてが不問という形で参加者を募集。そのため今回グランプリファイナルに残った5組のアーティスト(ドアノブロック、SUKISHA、葉山柚子、夜中出社集団、あさぎーにょ)も、バンドやシンガーソングライターをはじめ、宅録系ニート、YouTuber、コーラスグループと一癖も二癖もある個性派が集まり、各々自分の強みを活かしつつバズを意識したパフォーマンスやSNS戦略でオーディションを戦い抜いてきた。

 また、オーディションの審査も一般の人が行っており、Twitterでの反響や動画配信の再生回数などから算出された数値=音楽活動で“バズった人”が勝ちという、今のネット社会にフィットする形をとっている。グランプリ最終審査では、3カ月間のオーディション期間の獲得ポイントに加え、今回のライブパフォーマンスでのリアルタイム加点も実施。観客のスマホとステージ横に設置されたスクリーンが連動しており、観客がスマホ上の“いいね!”、“かわいい!”、“かっこいい!”ボタンを押すと、そのままスクリーンにリアクションが表示される仕組みとなっていた。

 グランプリ審査の口火を切ったのは、5人組ロックバンド・ドアノブロック。セックスフラペチーノ(Vo)を中心に置いた“世界ドン引き愉快犯バンド”というコンセプトのもと、インディーズシーンで注目を集めつつある若手バンドだ。ファイナリストの中でも“過激派”。オーディション中にセックスフラペチーノが“アダルトショップ”を開きたいという夢を語っていたり、コスプレした宇宙人軍団を引き連れてコンドームを配りながらゲリラ的に街を練り歩くなどの施策を実施。奇をてらうスタイルに注目が集まりがちだが、核となる音楽は一聴したら耳に残る独特の魅力がある。ライブで披露した「プラスチック隕石」では、軽快な四つ打ちロックから突然ボーカルがグロウルへ突入するなど、ビジュアルや楽曲のポップさから不意に顔を見せる毒気、期待を裏切り続ける展開に、観客も息を飲んでステージを見つめていた。

 続いて宅録系ニートのSUKISHAが、「金返せ!」「風呂入れ!」という観客のヤジを浴びながら意気揚々と登場。普段は引きこもりのニート生活を送っており、オーディション参加者の動向を追ったドキュメンタリー番組でも自宅の電気やガスが止められていることをオンエアされてしまうような彼だが、オーディション期間中の3カ月でジャンルの異なる楽曲を11曲制作。作家としてのセンスの良さを見せつける。最近流行りのディスコサウンドを取り入れた代表曲「4分半のマジック」からラブバラード「恋する幽霊」と続け、多彩なサウンドと耳心地の良いボーカルを会場に響かせた。

 この日のために作成したPVを流し、颯爽とステージに登場したのがコーラスグループ・夜中出社集団だ。モータウンサウンドにインスパイアを受けたディスコ調の楽曲、社会を面白く風刺した歌詞、誰でも踊れるような振り付けと、バズる戦略が散りばめられた楽曲をメドレー形式で披露すると、最新曲「Freedom to Worker」へ。舞台全体を使い観客を煽るようなパフォーマンス、バックダンサーも呼び込みエンターテインメント性の高い華やかステージで会場を魅了した。オーディションのスタートとほぼ同時に結成され、他の参加アーティストと比べて基盤のないグループでありながらも、期間中に着実に世間の認知度を上げていき、本オーディションでは3位に滑り込む快挙を成し遂げた。

 早い段階からグランプリ候補として頭角を現したのが、グローバルライブ配信サービス「Uplive」で43万人以上ものフォロワーを持つ葉山柚子。葉山はオーディション中に日本47都道府県(+台湾)を回り、各県のファンに感謝と歌を届ける旅に挑戦。同時にゼロからギターの弾き語りにもチャレンジし、旅の後半では富士山頂でのライブも行った。今回バンド編成でステージに臨み、多くの観客が見守る中、「誰ですか」で旅の集大成を披露すると、ステージ横のスクリーンには「かわいい」の反応が溢れかえっていた。観客の中には都外からかけつけたファンもいたようで、オーディションでは見事2位に輝く。彼女のチャレンジが早くも実を結んでいることが伝わってきた。

 そしてこの日の最後を飾ったのが、クリエイティブアーティストのあさぎーにょ。“着る音楽”としてMVで試着した楽曲ダウンロード付きパジャマの販売、“食べる音楽”として楽曲ダウンロード付きスイーツのポップアップショップの展開と、新しい音楽の届け方を模索してきたあさぎーにょ。彼女が最後のステージで披露したのは“読む音楽”というテーマのもと、自分で物語を考えた絵本「Sleeoy Dog」の朗読。ステージ上には家具やドアなどを配置してひとつの部屋を演出し、その中で少女と愛犬の心温まるストーリーを観客に届けた。もちろん、絵本はそのままグッズとして販売し、そこにも音楽ダウンロードのQRコードが付きだ。モノ消費とコト消費の両方を満たす上、最終的な商品化も視野に入れたコンテンツを生み出し、それをバズにまでつなげる見事な手腕で本オーディションのグランプリを獲得した。

 オリコンやレコチョクなどのランキング以上に、SNSやネットニュースのバズが“トレンド”の指標となりつつある昨今。音楽制作の力とその作品を広める発信力、そしてトータルで戦略を組み立てる自己プロデュース力は、今の音楽シーンのキーワードと言えるだろう。オーディションの発起人であるソニー・ミュージックレーベルズの梶 望氏がインタビューで「アーティストとレーベルの関係も、昔のような上下関係ではなく、パートナーというか、フラットな関係になっているのではないかと思うんです」と変化を指摘していたように、時代の風を受けて誕生した『Feat.ソニーミュージックオーディション』は、新しいオーディションのモデルケースを作ったのではないだろうか。(泉夏音)

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