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カーリングシトーンズ、本気の遊びを追求した“大人のロック” アルバム『氷上のならず者』に感じる音楽への姿勢

リアルサウンド

19/11/27(水) 18:00

 日本一豪華なロックンロールバンド、カーリングシトーンズがいよいよ本格的に動き始めた。彼らがお笑い芸人さながら抱腹絶倒の記者会見を行い、バンドの活動を発表したのが昨年7月のこと。9月23日にZepp Tokyoでデビューライブを行い、12月にオリジナルナンバー「スベり知らずシラズ」をデジタルで配信していたが、その後はしばらく目立った動きはなかった。しかし、この10月に突如1stアルバム『氷上のならず者』(11月27日発売)とツアー『カーリングシトーンズTOUR 2019-2020「やったぁ!明日はシトーンズだ!」』(12月23日〜1月28日)が発表され、再び大きな話題を呼んだ。

 カーリングシトーンズは、日本を代表するミュージシャンが集まったいわゆるスーパーバンドだ。寺岡シトーン(寺岡呼人)、奥田シトーン(奥田民生)、斉藤シトーン(斉藤和義)、浜崎シトーン(浜崎貴司)、キングシトーン(YO-KING)、トータスシトーン(トータス松本)という名だたる6人によって構成されている。もともと仲の良かったこのメンバー間でLINEグループを作ったのがきっかけだったが、寺岡シトーンのソロデビュー25周年を記念してバンドをやろうと盛り上がり、一気に話が進んだそうだ。しかし、これだけの多忙なメンバーでバンドを組むというのは通常は考えられない。所属事務所もレコード会社もバラバラなわけだし、そこには障害になってもおかしくない、いわゆる“大人の事情”もあったはずだ。それでも、結成にこぎつけ、アルバム制作やツアーまで実現できたのは、彼らの強い意志や本気度があったからに違いない。

 そう思えるのは、この度リリースされるアルバム『氷上のならず者』があまりにも楽しく、ワクワクさせられるからだ。バンドとしての初アルバムは、当然のようにメンバー全員で制作されている。詞曲はすべてオリジナルで、メンバー各自が持ち寄ったものと、共作したものが混在している。アレンジも基本的にはバンド名義でクレジットされている。全体的に過度なダビングなどはなく、シンプルなアレンジになっているのも、おそらくメンバーそれぞれがすべての楽器を担当しているからだろう。なかにはデモテープの延長のようなラフな演奏もあるが、センス良くマルチな才能を持つアーティストばかりなので、そのあたりはなんら遜色ない。

 サウンド面に関しては、ゴキゲンなロックンロールが詰まっている。先行で発表されていた冒頭の「スベり知らずシラズ」は、The Rolling Stonesのようなギターのフレーズが聞こえてきて思わずニヤリとさせられるし、「俺たちのトラベリン」では60年代のフォークロックグループのThe Byrdsを彷彿とさせる。軽快なロックンロールやレイジーなブルースなど、このメンバーの嗜好性がよくわかるルーツロック的な曲調が中心で、ボーカルやコーラスを交互に取ることによってグループとしての個性が浮き上がってくる。なかにはラップ風の「B地区」なんていうナンバーもアクセントで入っているが、基本的にはメンバーそれぞれが思いのたけ楽しんで歌い演奏し、音を作ったロックという印象が強い。

 加えて、ユニークなのはそれぞれの楽曲で歌われる歌詞だ。基本的には、「何しとん?」や「夢見心地あとの祭り」のようなメンバーの個性や名前を織り込んだ内輪ネタ、「タイムテーブル」に見られるようなミュージシャンあるある的なもの、そして「出会いたい」や「Oh! Shirry」といったエロネタも豊富。どう考えてもおふざけとしか思えないものも多いが、このメンバーだから当然といえば当然。逆に言えば、真剣にこういったコミカルな歌詞を歌ったりコーラスしている様子は微笑ましくもあるし、キャラクターの濃い彼らだからこそクオリティ高く作れたといってもいいだろう。中にはシリアスでちょっと切ない楽曲もあるが、基本的には笑いながら楽しく聴ける大人のロックンロール。そして最後に「涙はふかない」という寺岡シトーンの持ち味が出た温かな名曲で大団円を迎えるのだ。

カーリングシトーンズ 「涙はふかない」MV

 カーリングシトーンズは、54歳の奥田シトーンから51歳の寺岡シトーンまで、50代前半の同世代メンバーが集まったバンドだ。それぞれ輝かしいキャリアを持ち、日本のロックシーンを形作ってきたともいえるだろう。そんな彼らが、本気で遊びやバカバカしさを追求して一枚のアルバムに作り上げたというのは本当に素晴らしいし、歴史に残るといってもいい。このアルバムを聴くと、「ビッグアーティストなのに、何やってんだよ」とあきれつつニヤリとしながらも、“音楽を楽しむ”という基本的なことを痛いほど実感させてくれる。きっと貴重な公演となるツアーでも同じような体験をさせてくれることだろう。もしも今後、「大人のロックってどんなの?」って聞かれることがあるならば、真面目な顔でそっとカーリングシトーンズの『氷上のならず者』を差し出してみたいと思うのだ。

■栗本 斉
旅&音楽ライターとして活躍するかたわら、選曲家やDJ、ビルボードライブのブッキング・プランナーとしても活躍。著書に『アルゼンチン音楽手帖』(DU BOOKS)、共著に『Light Mellow 和モノ Special -more 160 item-』(ラトルズ)がある。
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■リリース情報
『氷上のならず者』
発売:2019年11月27日(水)
・通常盤(CD)
価格:¥3,000(税抜)
・初回限定盤紙/ジャケット仕様(CD+DVD)
価格:¥4,500(税抜)
・収録楽曲
CD
01.スベり知らずシラズ
02.何しとん?
03.俺たちのトラベリン
04.わかってさえいれば
05.マホーのペン
06.キャラバン
07.タイムテーブル
08.B地区
09.出会いたい
10.Oh! Shirry
11.夢見心地あとの祭り
12.涙はふかない

DVD(総再生時間:50分)
01. 2018年カーリングシトーンズ デビューライブ記者会見 映像
02. オリジナル映像『カーリング場にシトーンズがやって来るワァ!ワァ!ワァ!』
03. Music Video『涙はふかない』
04. 特別メイキング映像

寺岡呼人
『NO GUARD』
発売:2019年11月27日(水)
価格:¥3,300(税抜)

■ライブ情報
カーリングシトーンズTOUR 2019-2020『やったぁ!明日はシトーンズだ!』
東京公演
日程:12月23日(月)
会場:東京国際フォーラムホールA
17:30開場/18:30開演
INFO:ホットスタッフ・プロモーション 
03-5720-9999

熊本公演
日程:1月11日(土)
会場:熊本城ホール メインホール
17:15開場/18:00開演
INFO:BEA 
092-712-4221

大阪公演
日程:1月13日(月・祝)
会場:大阪・オリックス劇場
17:15開場/18:00開演
INFO:キョードーインフォメーション
0570-200-888

広島公演
日程:1月14日(火)
会場:広島文化学園HBGホール
17:45開場/18:30開演
INFO:YUMEBANCHI(広島)
082-249-3571

名古屋公演
日程:1月28日(火)
会場:名古屋国際会議場センチュリーホール
17:45開場/18:30開演
INFO:ジェイルハウス 
052-936-6041

*全公演:
全席指定 8,000円(税込) 
(年齢制限:3歳以下入場不可、4歳以上チケット必要)
PG発売日:11月23日(土) ※一人4枚まで
企画・制作:カーリングシトーンズ製作委員会
協力:ドリーミュージック

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