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『おっさんずラブ』主題歌のsumika「願い」、すべての恋愛に重ねられる秀逸なラブソングに

リアルサウンド

19/11/23(土) 8:00

 深夜ドラマ帯で放送され、熱烈なファンが多い土曜ナイトドラマ『おっさんずラブ』の新シリーズ『おっさんずラブ -in the sky-』(共にテレビ朝日系)が話題沸騰中だ。本シリーズは、主演・田中圭、ヒロイン・吉田鋼太郎というセンセーショナルな見出しで注目を集めるが、内容の濃さ、人間関係の描き方の巧さであっという間に多くのファンを獲得した人気シリーズ。さらに『劇場版 おっさんずラブ ~LOVE or DEAD~』として放映された劇場版に続き、2019年に秋ドラマとして連続ドラマに帰ってきた本作は、キャスト・キャラクターを一部引き継ぎ、舞台を空に変更。ピーチエアラインの全面協力のもと、Peachをモデルにした架空の航空会社「天空ピーチエアライン」の中で起こる、春田創一(田中圭)を中心としたドタバタ恋愛劇が持ち味の作品だ。

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 男女問わず、性別の垣根を超えて春田に向かう恋の矢印に毎回ハラハラドキドキする本作の恋愛模様だが、sumikaが書き下ろした主題歌の「願い」はまさにそんな愛にうずまく物語を秀逸に表している。ちょうど第3話では、黒澤武蔵(吉田鋼太郎)が、春田と自身の娘である橘緋夏(佐津川愛美)の関係にモヤモヤとしている姿が描かれ、「願い」の中の〈あなたはきっと恋をしている〉という歌詞が黒澤の気持ちを代弁しているかのような印象を受けた。一方で、成瀬竜(千葉雄大)を抱きしめる春田を見てしまった四宮要(戸次重幸)もまた、この歌詞に当てはまるモヤモヤを感じているだろう。このように、恋の入り乱れる『おっさんずラブ -in the sky-』の世界では、誰の目線に立つかで主題歌の捉え方も大きく変わってくる。応援しているキャラクターを重ねて聴くことで、今まで以上に楽曲の持つ魅力が発揮され、より「願い」の世界を深く楽しめるようになっているのだ。

 さらに〈あなたの瞳に映って 「うれしい」「たのしい」と言い合って 絵空に見ていた儚い夢だ〉という部分では好きな人に好かれたいのに叶わないもどかしさを歌っている。これも同じようにドラマの中のキャラクター同士の恋として受け取ることができ、それは橘から春田への気持ちでも、黒澤から春田への気持ちでも、四宮から春田への気持ちだとしても成立する。楽曲が『おっさんずラブ -in the sky-』の世界と重なることで、より多角的な視点で楽しめるラブソングになるのだ。この作品の主題歌として起用されることで「願い」という楽曲の解釈は無意識に広げられる。実際にMVもキラキラと輝く雪が舞うセットの中で懸命に歌うバンドメンバーの姿が中心に描かれている。本楽曲が、どんな見た目でどんな性別の人が、どんな年齢でどんな風貌の相手に恋をしていることを描いているのかは映像では特定できないようになっているのだ。sumikaのMV自体がバンドメンバーを生き生きと描写したものが多いが、中には男女の恋愛を思わせる演出によるMVもある。しかし「願い」では女性が登場しない演出で、従来の恋愛における先入観が取り払われたようにも思える。もちろん、男性同士の恋愛だという演出もない。楽曲を聴いた人は『おっさんずラブ -in the sky-』の作品と重ねることもできるし、もちろん自分の恋愛と重ねても良い。誰がどんな恋に重ねても、この楽曲の奥深さを味わえるのだ。

 そんな切ない恋を歌い上げるボーカルの片岡健太(Vo/Gt)は、優しい声で包み込むように歌詞を紡ぐ。その声色からは、この恋が胸をキュっと掴むような恋であることがわかる。力強く切実でありながら、どこか恋が叶わない悲しさや悔しさを感じさせるのだ。しかし悲しいだけを伝えているわけではない。楽曲を聴いていると、自然とその声に背中を押されるような気持ちにもなる。そんな優しさが楽曲の端々から感じられるのは、sumikaが愛を持ってこの作品に取り組んでいるからだろう。sumikaは「願い」のリリースのタイミングでダウンロード&音楽サブスクリプションサービスを解禁。「願い」を含む全楽曲が11月16日から音楽サブスクリプションサービスで聴けるようになった。配信解禁でバンドとしてもますます勢いを増している。

 本楽曲が主題歌を務める『おっさんずラブ -in the sky-』を観れば、楽曲の中で描かれる恋がより身近に感じられるだろう。すべての恋する人にこの「願い」が届くことを祈っている。(Nana Numoto)

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