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いま、最高の一本に出会える

lecca、“アーティスト兼政治家”として目指す場所「音楽と政治の活動をもう少し繋げていきたい」

リアルサウンド

19/9/18(水) 12:00

 leccaが2017年3月に発表したアルバム『High Street』以来となる新曲「team try」をリリースした。今回の楽曲は、今年日本でワールドカップが開催されるラグビーから着想を得て制作。ラグビーが盛んな岩手県釜石市の観光親善大使を2014年から務める彼女が、現地の思いやラグビー関係者の声に耳を傾けるなかで長年温めてきたテーマだという。ラグビーというスポーツを通して今回leccaが伝えたかったことは何か。多くのアスリートから楽曲が絶大な支持を受けるleccaだが、その秘密はどこにあるのか。また、議員活動を続ける彼女は今、政治家と音楽家という二足のわらじをどう捉えているのか。leccaの今の思いをたっぷりと語ってもらった。(猪又孝)

参考:Little Glee Monster、B’z、嵐……ラグビーワールドカップを盛り上げる応援ソングの魅力 

■曲を1曲つくりあげるのに必死だった

ーー久々に新曲を出す今の心境から教えてください。

lecca:『High Street』の制作は2016年12月くらいが最後だと思うので、3年近く空くんですが、正直に言うと議員活動が忙しくて、曲を1曲つくりあげるのに必死だったんです。今年1月に離党してからは少人数会派のため、さらに忙しくなって。少し時間が取れるようになった今年6月から、子どもが寝静まったあとの30分とか1時間とかを使って、ようやく1曲分のデモができたんです。だけど、それじゃ思いを伝えられていない気がすると思って、3~4パターン作ったものを組み合わせて1曲にしました。

ーー3年のブランクがあったことになりますが、音楽活動に焦りはありませんでしたか?

lecca:焦りはないですけど、引け目はあります。これまでだったら朝から晩までいろんな人の曲を聴いてインプットして、何かを感じて感動して涙して、「よし、自分もこんな曲をつくるぞ」といって曲作りに向かうんですが、その向き合い方がまったくできていなかったので。なので、本当にプロデューサーのAILIに助けてもらいました。今回は自分が作っていないメロディを歌うということも初めてしているんです。テクニカルな部分も含めて助けてもらったし、いつもとはイレギュラーな作り方をしました。

ーー新曲「team try」の制作は、どのような経緯で始まったんですか?

lecca:釜石市の観光親善大使を2014年から務めさせていただいているんですが、釜石に行ってイベントで歌うたびに、現地の方やラグビーOBの方に、釜石がラグビーにどれだけ助けられているかというお話をいろいろ伺っていたんです。「ラグビーがこの街にはあるぞ」という思いが復興のモチベーションに繋がっていたし、今年のワールドカップに向けてその気持ちを高めて繋いできたと。釜石市に住んでいるウチのバンドメンバーのKUUBO(ベーシスト・大久保晋)さんからもお願いをされていたし、なんとか釜石のための曲を作れないかと2、3年前から思っていたんです。

ーーもともとラグビーというスポーツに興味はあったんですか?

lecca:いえ。よく観に行くのは野球とサッカーで、自分でやっていたのは陸上なんです。なので、釜石の方たちからお話を聞いたのがラグビーとの最初の出会いでした。釜石市はラグビーが盛んなのでラグビーOBが議員を務めていたりするんです。そのあとは息子のママ友で、旦那さんがラグビーの元フランス代表という方がいたり、ラグビーの山田(章仁)選手が私の曲を好きと言ってくれていたこともあって、彼とラジオで対談したこともありました。

ーー今回の曲作りに向かう大きなきっかけになったことは?

lecca:同じ会派の森澤恭子都議を通じて、今年6月に、ラグビーの元日本代表で、今はユースのコーチを務めている野澤武史さんにお会いしたことが大きいです。釜石の方から聞く話だけでは、ラグビーの魅力をそこまでイメージ出来ていなかった部分も正直あったんです。ところが、野澤さんからお話を伺って「あ、そういうことなんですか」とわかって。

ーーラグビーにどのような魅力を感じたんですか?

lecca:女性は特にラグビーを誤解している人が多いんです。「正直、ラグビーの魅力わからないんです」とこっそりおっしゃってくる方も女性に多い。そういう方に改めて伺ってみると、ラグビーはちょっと危険な感じがすると。ぶつかり合うし、子どもにやらせたら怪我をするんじゃないか。ラグビーは野蛮なスポーツなんじゃないかって……。

ーー格闘技のような荒々しいイメージがありますよね。

lecca:私も10年前はそう思っていたようなところがあるんですけど、野澤さんと話して、それって誤解だなと。野澤さんいわく、ラグビーは野蛮とは掛け離れた利他の精神だと。ラグビーの場合は自分が目立とうとか、自分が点を取ろうとか、そういうことは一切考えないって言うんです。自分がどうこうではなく、手元にあるボールが繋がって、繋がって、ゴールに届いてくれればいいんだと。そのために1対1でぶつかったら命を落とすんじゃないかっていうくらいの巨大な相手にチームで向かって行く。それがラグビーなんです、というふうに伺って。野澤さんから聞いたんですが、ラグビー選手は試合直前に控え室で何をしてると思います?

ーーお互いを励まし合ったりとか?

lecca:泣いてるんですって。みんな怖くて泣いてるそうなんです。

ーー自分より大きな体格の相手にぶつかっていく恐怖心から?

lecca:そう。怖くて震えて泣いていると。けれども、1対1じゃ負ける可能性がある相手でもチームだったら勝てる、というところまで僕たちは技術を磨いてきたし、相手を調べてきたし、ここまで努力をしてきたんだっていう自信と自負がある。それを以て「よし! 自分たちはこの恐怖を乗り越えられた」っていうところまで精神を高めて試合に臨むそうなんです。それを聞いて、すごい精神状態だなと。

ーーまさにチーム一丸となって闘うわけですね。

lecca:これまでやってきたleccaとしての仕事もチームでやってきたし、今やっている議員活動も地域の方々やスタッフ、秘書、全部含めてチームとして考えているんです。自分のためではなく、チームだからこそ高尚な目標のためにどんな成果が出せるか、どれほどの結果を残すことができるかっていうことを考えて動いている。その「チームに自分を捧げる」っていうことをラグビーからすごく教えられたところがあるんです。

ーーそれが今回の曲で伝えたいことに繋がってくると。

lecca:そうなんです。ラグビーに限らず、チームプレイをしている人はたくさんいると思うんです。でも、チームプレイの拠り所でもあるし、理想でもある部分を忘れがちになってしまうところがあるんじゃないかなって。スポーツに限らず、会社でも、学校でも、部活でもそうだと思うんですけど、「そもそも、なんでこれをやってるんだっけ?」とか「これで自分は何を果たしたいんだっけ?」とか。たぶんチームでやっていることって、単なる自分のことじゃないはずなんですよ。もっと大きな何かをやるためにチームがあるはずなので。そこを忘れてしまうと人はチームと言いながら利己的になってしまう。

ーー自分本位というか。

lecca:自分だけ得していればいいとか、そういうことってあると思うんです。でも、ラグビーってそれをやってる人はバレるらしいんです。みんなでスクラムを組んだ瞬間に腰が引けてる人がいたら、その人は“小さな巨人”の逆で“大きい小人だ”と笑われることがあると。結局そういう人は一線を任せられなくなってしまうそうなんです。そういう局面を迎えたときにチームのために自分の持っているものを全部出せるか。そこを乗り越えられてきた人たちがチームに残るらしくて。その話を聞いていると、チームでやっている意義や、チームでめざしている高みをいかに忘れないでいられるか。それがすごく大事だし、自分自身も持っていたいものだなと思ったんです。

■leccaの楽曲がアスリートに支持される理由

ーーサウンド面では、今回どのような音作りをめざしましたか?

lecca:AILIにトラックを作ってもらうときに、いくつかAILIと一緒に参考曲を出し合ったんです。ビートはこんな感じだけど、コードはこんな感じがいいとか。そのときにビートは前に向かってみんな一緒に揃って動いていく雰囲気が出るような力強いものがいいと注文しました。チーム感とか駆け出す強さ。あと、コードは世界が上向き、前向きに広がるようなものがいいとお願いしました。

ーー今回は応援歌ですが、テンポが遅いことが特徴だと思います。そこにもこだわりを感じました。

lecca:早過ぎないっていうのはちょっと意識したと思います。ただアゲればいいっていうことじゃないだろうと。苦しさだったり、苦しい中でも足を前に出す重厚さが欲しいと。

ーースクラムを組んで食いしばってる感じ。

lecca:まさに。スクラムを組んで踏ん張ってる時間って苦しいじゃないですか。押し戻されるし、前にばかり進めるわけじゃない。そのときにどうするか、どう反応するかって真価が問われるところでもあって。スピードだけじゃない、俊敏さだけじゃないスポーツなので、そこはサウンドも寄り添わないといけないなっていう思いはありました。

ーーあと、間奏でビートレスになりますよね。激しく体をぶつけ合うラグビーは試合中に脳しんとうなどで倒れる選手もいますが、あの展開は、そういうときの時間が一瞬止まるような場面を思い浮かべたんです。

lecca:私も映画のスローモーションになるような場面が浮かびました。あの間奏を聞いたときに「よくぞAILI、この部分を作ってくれたな」って思いました。おそらく試合でもそうだし、仕事でも、緩急の「緩」の時間って誰にでもあると思うんです。他人から見てると、たった3秒とか5秒とか10秒かもしれないけど、一瞬動きが止まって、その人の中で分岐点を迎えている瞬間があると思うんです。一度立ち止まって「自分が向かう道はここでいいんだろうか?」「自分はここですべて出し尽くしていいんだろうか?」って悩んでる時間、考えてる時間、そして決意をする時間っていうのが、あの間奏に詰まっていると思います。そのわずかな時間での反芻を通して、「やはりここだ」と自信を持つ。確かなものを見つける。そして足を踏み出す。その一拍があの間奏にあるんですよね。

ーー今回の「team try」はチームで頑張る人をエンパワーする歌ですし、過去の楽曲もたくさんのアスリートから支持を得てきました。leccaさんの曲がアスリートから支持される理由はどこにあると自己分析しますか? 

lecca:自分はもともと才能がある人間だとは思えないんです。自己評価もそんなに高くないですし、とにかく私は努力をしなければ人に曲を聞いてもらえるような立場にならなかった。その「とにかく努力をしなければ」っていう状況でやってきた自分の精神状態が、常に結果を出さなければならないところで闘っているアスリートの方たちにリンクしたのかなって思います。お会いしたアスリートのみなさんからお話を伺っていると、意外と自信ないのかなって思うところがあって。私の曲も自信家の曲ではないんですよ。ものすごく苦しい闘いをギリギリのところでして、どれも結局、「俺、最高」で終わっていなくて「マジ苦しい」で終わってるんです。

ーーハッピーエンディングな曲は確かにあまりないですね。

lecca:そう。でも、なんとか前を向いていくにはこうするしかないっていう。最後に残された選択になんとかしがみついてるっていう状況の曲が多いんです。サッカーの宇佐美(貴史)選手や野球の阿部(慎之助)選手に「聞いてます」って言われるのは意外だったんですけど、お話を伺うと、彼らは決して生まれながらの天才じゃないんだなって。みなさん、ものすごく努力していて、ひとりで闘っている。ひとつを得るために他のすべてを捨ててきたとか、犠牲にしてきたみたいな人生を選んできた人たちだと思うんです。そこに強さを見るところもあって、むしろ、私の曲を聞いてくれていることが自分の勇気になっていますね。

■leccaと斉藤れいなが目指すところは違う場所ではない

ーー今年で40歳を迎えましたが、誰かを応援するという心の持ち方や、応援の仕方、メッセージの伝え方に変化はありますか?

lecca:そこに関しては変化しちゃいけないなと思ってます。というのは、30代のときからですけど、上から目線になろうと思えばいくらでもなれると思うんですよ。言い切り型、説教型、「これこれ、こうした方がいいんだから、こうしなさいよ」っていう言い方をすることはできるんですけど、そうじゃなくて、常に当事者の目線で歌ってきたので。今回の曲も特にサビのところは自分もその立場や状況にいる気持ちで歌ってるんです。そうすることで共感してもらえた方がいいと思っているので、そこは変えない方がいいというか、変えたくないと思っています。

ーー最後に「team try」というタイトルにかけて、今後トライしたいものはありますか?

lecca:これまでは音楽活動と議員活動をリンクさせることはタブーだと、なんとなく思っていたんです。なぜなら、私は音楽で自分の政治的な意見を発信してきたわけではないし、自分の音楽を聞くファンの方にはいろいろなイデオロギーを持つ方がいらっしゃるので。だけど、離党して自分の発信がより自由になっているところがあるし、leccaとしてめざしてきた社会と、自分が今、議員をやっている中でめざしている社会は決して離れていないんです。なので、leccaとしての音楽活動と、今やってる議員としての政治活動をもう少し繋げていきたいなと思ってるところが正直あります。

ーー端的に言えば、ポリティカルな意見を歌ってもいいんじゃないかと。

lecca:それもあるかもしれないし、たとえば先日、議員仲間とラグビー関連のイベントをやったのですが、そういうことは今の私にとってはすごくリンクしやすいんです。ラグビーの良さを教えてもらえたことを伝えたい、そこからもらえた勇気をみんなに知ってもらいたいと思って、今回の「team try」を作った流れもあるので、そのイベントにleccaとして参加させてもらったんです。

ーー斉藤れいなではなく、leccaとして参加することに意義がある。

lecca:そう。leccaがやっていることと斉藤れいながやっていることはまったく違うことなんだと思っている方もファンの中にはいらっしゃるんです。SNSなどで「政治家になっちゃったからファンがつきまとっちゃダメかな」っていうコメントが来たりとか。でも、leccaがめざすところと斉藤れいながめざしてるところは違う場所ではないので、何とかそこをわかっていただけたらなって。leccaファンの人に「選挙は行こうよ」「投票はしようよ」って言いたいですしね。任期前半は音楽活動と政治活動の間にバリアを張っていたところがあるんですが、それをなるべくなくしていくことに挑戦していきたいと思ってます。(猪又孝)

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