「暗数」とは発生した犯罪のうち、統計として把握されない犯罪数のことだ。警察に届けられなかったり発覚しないままになっている犯罪の数は、どの国も計り知れない。 本作は韓国で実際に起きた事件をベースに、連続殺人犯の容疑者と、その容疑者の言葉に翻弄される刑事の攻防を描いたサスペンスミステリー。 サスペンスといえば韓国の十八番だが、それにしてもチュ・ジフンが最近ノりにノッている。昨年の『神と共に』を皮切りに、日本では立て続けに出演作が公開され、現在はNetflixオリジナルのテレビシリーズ『キングダム』にも出演。そんなチュ・ジフンが本作で演じるのは実在の連続殺人犯だ。不気味で狡猾なつかみどころのない男を好演している。キム・ユンソク演じるはみ出し者の刑事との作中でのマウントの取り合いは、演技対決さながらだ。 本当に事件はあったのか。記憶は確かか。証言は確かか。誰もが「暗数は必ず存在する」と言うのに、存在を証明する手立てがない。暗数が暗数たるゆえんだ。今も“暗数の人々”は闇に葬られたまま、いつか明るみに出るのを待ちわびているだろう。