Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

三浦大知、大森靖子、小松未可子……アーティストの“新たな表情”が感じられる新作

リアルサウンド

18/7/10(火) 8:00

 活動を続けるなかで、音楽性、ビジュアルなど含め、変わっていくアーティストは少なくない。その変化によって新しいスタイルを打ち出し、それまでとは違うリスナーを獲得できるかどうかが、キャリアを上手く重ねていくうえでのポイントだろう。そこで今回はアーティストの新たな表情が感じられる新作を紹介したい。

(関連:小松未可子×田淵智也(Q-MHz)特別対談 “ポップスシンガー”としての充実を支えるチームワーク

 今年3月に発表したベストアルバム『BEST』で自身初となるオリコン週間アルバムランキング初登場1位を獲得した三浦大知。名実ともに日本のエンターテインメントを象徴する存在となった三浦大知の新たなアクションは、『球体』とタイトルされた未体験のプロジェクトだった。これまでも三浦大知の楽曲(「Inside Your Head」「Anchor」「Unlock」など)を手掛けてきたNao’ymtの全面プロデュースによる本作には、寓話的、神話的なイメージを持つ17曲を収録。The Chainsmokers、フランク・オーシャンあたりのオルタナR&B系のアーティストともリンクするトラック、自然、文明、環境、命の連鎖などテーマを散りばめた歌詞の世界は、これまでの彼のスタイルとは明らかに異なる。それはまさに表現者・三浦大知の新たな挑戦と言えるだろう。

 2013年から毎年夏の時期にソロ活動を行い、一貫してポップなアイドル像を体現してきたJUNHO(From 2PM)の7作目のミニアルバム『想像』は、これまでのイメージとは真逆の、シックでダークな楽曲が中心となった。ディープかつアンビエントな音像のトラックと気になる女性に向けられた“想像”が渦巻く歌詞がひとつになった「想像」、歪んだエレクトロトラックのなかで、刹那的な快楽を求め合う男女の姿を描いた「FLASHLIGHT」。ソウルミュージック、AORのテイストを取り込んだ大人のラブソング「どうせ忘れるだろう」。憂いと色気をたっぷり含んだ歌声からは、シンガーとしてのJUNHOの成長が感じられる。現行のオルタナR&Bと同期したサウンドメイクも高品質。

 ソロデビュー15周年を記念したニューシングル『真夏の残響 / 今夜、ノスタルジアで』は、“大人のDAIGOを感じられる曲”をテーマにTAKURO(GLAY)が描き下ろした2曲を収録した両A面。「真夏の残響」はゆったりと流れるオーガニックなバンドサウンドと“どうしても忘れらない大切な人”を思い描く歌が溶け合うミディアムチューン。あえて声を張らず、一つひとつのフレーズを丁寧に紡ぎ出すボーカルが印象的だ。ブルースロックのテイストを取り入れた「今夜、ノスタルジア」の主人公は、若いときの夢を半ば諦め、自分の限界に直面しつつある男性。DAIGOと同じアラフォー世代の男性に響く楽曲に仕上がっている。MVにはTAKUROも出演。下北沢の路上で歌う2人のシーンも話題を集めそうだ。

 「今私のなりたいもの、私が本当は一番触れられたい私、どうせ誰もここまで来れねーんだろと思っている最高位の孤独に君臨している恥ずかしい私そのままを歌ったアルバム」(ニューアルバム『クソカワPARTY』資料の“COMMENT”より)のために大森靖子は、“クソカワジョーカーがクソカワPARTYを主催する”というコンセプトを用意した。根底にあるのは現代人が抱えざるを得ない深刻な生きづらさなのだが、それをそのまま表現するのではなく、ファンタジーな世界を作り上げることで幅広い層のリスナーが入りやすいエンターテインメントにつなげているのだ。ゲーム音楽、アニメ音楽、アイドルシーンで活躍するクリエイター・ANCHORを起用するなど、アレンジャー、ミュージシャンの配置も絶妙。本当にセルフプロデュース能力に長けた女性だと思う。

 前作『Blooming Maps』に続き、Q-MHzの全面プロデュースによるニューアルバム。これまでは凛とした女性像を軸にしてきた小松未可子だが、ジャズワルツ的なアプローチの「Maybe the next waltz」、ピアノロックナンバー「Swing heart direction」(末光篤がアレンジとピアノで参加)などのシングル曲を含む本作は、『Personal Terminal』というタイトル通り、彼女自身のパーソナルな表情が多彩なサウンドのなかで描き出された作品となった。アーティストしてのキャラを絞り込むのではなく、時と場合によって人格が少しずつ変わるという当たり前のことをナチュラルに表現した本作をもっともわかりやすく示しているのは、〈今日も境界線があやふやで 自分が消えてしまう〉(「カオティック・ラッシュ・ナイト」/作詞には小松未可子も参加)という歌詞だろう。

■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。

新着エッセイ

新着クリエイター人生

水先案内

アプリで読む