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松井玲奈、二階堂ふみ、森七菜による関内三姉妹の変化 『エール』三者三様の“戦下”

リアルサウンド

20/10/3(土) 6:00

 ずっと誰よりもそばでお互いを見てきた姉妹でさえ、立場が変わればその関係に歪みが生じる。『エール』(NHK総合)第16週「不協和音」では、音(二階堂ふみ)と吟(松井玲奈)、梅(森七菜)の関係に変化が現れる。

 戦時下においての音たちの生活は大きく変化した。特に長女である吟は軍人の家に嫁いだため戦争というものに対してより敏感になっていた。婦人会にも積極的に参加し、妹の音の生活態度にまで「しっかりしろ」と発破をかけ、軍人の妻の立場を懸命に全うしようとしていたのだ。

 責任感が強く、幼い頃からの夢は“お嫁さん”。婿をもらって関内家を継いでもらうという使命感で見合いをするなど、いつでも「誰かのため」に生きてきた吟だが、徐々に不満は募る。音の「好きなことで誰かの助けになるなら、向いていないことを無理してやるよりいいと思う」という言葉に対して、「あんたって時々、とんでもなく残酷なことを言うわ。自分には音楽があるけど私には何もないって、そう言いたいわけ?」とシビアな意見が飛び出すようになる。

 吟を演じた松井はしっかり者で協調性を持つ吟を熱演する。夫や婦人会からの目と、音の奔放な生活に板挟みになりながらも長女として関内家をまとめようと力を注ぐ。夫が戦地に行くときでさえ、「世話になった」と言う言葉に対して「いってらっしゃいませ。どうぞご無事で」と返すだけで「軍人の妻は無事など願うな」と一蹴されてしまう吟。夫の無事を願うことさえ叶わない吟の心の内を、下げた頭の角度や指先だけで強く表現していた。


 一方で音は、相変わらず音楽に夢中。音楽挺身隊として歌を歌うものの、「戦争のため」「お国のため」に歌うという考えにはなかなか馴染めずにいた。吟に何度婦人会への参加を促されてもほとんど顔を出さず、自分の考えで行動することの方を大切にしてきた。国ためと尽くす姉の吟とは徐々にすれ違うようになり音自身もそのことについて悩むようになる。二階堂は、どんな時も信念を曲げない音の姿を力強く演じる。

 さらに梅はというと、音に輪をかけて幼い頃からの夢を追い続ける。文学を続けることが難しい時代に、キリスト教徒として国から監視されて暮らしながらも新たな執筆活動に燃えていた。監視されていることを知られたために、編集者からは付き合いを絶たれてしまうが、ここでへこたれる梅ではないだろう。東京で出会った五郎(岡部大)を関内家の後継にと、ちゃっかり連れて豊橋へ帰り、さらに自分の夢も追い続ける梅は誰よりもアグレッシブだ。


 3姉妹はこれまでずっとささいな仲違いこそあれ、協力し合って生きてきた。しかし、戦争で環境が変わったことで、自らの立場のために妹に説教をしたりとお互いに対して過干渉気味になりつつある。さらに、いくら夢や才能があったとしても、変わりつつある世の中に対して、「私は私」のままで済まされる状況ではなくなってきている。第16週「不協和音」の最後にはついに裕一(窪田正孝)にも“赤紙“”が届く。音にとって「戦争」に対する意識が変わるときが来るのかもしれない。

■Nana Numoto
日本大学芸術学部映画学科卒。映画・ファッション系ライター。映像の美術等も手がける。批評同人誌『ヱクリヲ』などに寄稿。Twitter

■放送情報
連続テレビ小説『エール』
2020年3月30日(月)~11月28日(土)予定(全120回)
※9月14日(月)より放送再開
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:窪田正孝、二階堂ふみ、中村蒼、山崎育三郎、松井玲奈、奥野瑛太、森七菜、岡部大、薬師丸ひろ子ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/yell/

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