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DEATHSTARSからGHOSTEMANEまで マリリン・マンソンに通ずる“ゴス”な世界観の海外アーティスト

リアルサウンド

20/2/28(金) 6:00

 メイクをしたミュージシャンと聞いて思い浮かべるのはどんなアーティストだろうか。今やその華麗な見た目だけでなく音楽性も認められる存在となったヴィジュアル系か、はたまたKISSの鮮烈なフェイスペイントだろうか。日本のヴィジュアル系とKISSのようなバンドは実は遠いようで近い。なぜなら、日本のヴィジュアル系がジャパニーズメタルから派生したようなかたちで生まれているからだ。例えば、XやDEAD ENDのようなヴィジュアル系の始祖が元はジャパニーズメタルのシーンに分類されていたことや、LUNA SEAやLa’cryma ChristiがAIONや44 MAGNUMといったジャパニーズメタルのバンド群からの影響を公言していることからもその密接さはわかるだろう。いわばヴィジュアル系とヘヴィメタルは近親関係にあるのである。

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 海外に目を向けると、華やかな衣装を纏い中性的ともいえる容貌でハードロックを奏でるHANOI ROCKSのようなグラムメタルバンドや、けばけばしいメイクとド派手なヘアスタイルで他のシーンを圧倒するMÖTLEY CRÜEを始めとするLAメタル勢など、メタルと奇抜で美麗な装いの系譜は枚挙にいとまがない。

 80年代に活躍した彼らは、ヘヴィメタル全盛期の輝きのなかにあった。特にLAメタルの世界では、メイクは世界観の構築如何というよりも男性的な魅力の増幅装置であった。しかし、オルタナティブロックがシーンに介入した90年代以降、メイクとヘヴィミュージックの関係性は変化をみせる。マリリン・マンソンを代表とするインダストリアル/ニューメタル勢が、スプーキーで退廃的かつ厭世的な雰囲気と同時に、どこか耽美なレイヤーを纏いながら登場したのだ。そうした世界観は今日、ゴス(“ゴシック”から派生した語)と呼ばれ、ヘヴィミュージックのアーティスト群にも継承されている。

 先述したマリリン・マンソンと時期を近くして現れたのが2000年結成のスウェーデン出身インダストリアルメタルバンド・DEATHSTARSだ。ヴィジュアル系における‟白塗り系”に近い見た目で、全員が長めの黒髪に白塗り、目の周りを黒く囲うメイクに軍服のような揃いのコスチュームでドレスアップするという点まで似ている。しかし音楽性は‟白塗り系”に多い歌謡曲路線とは異なり、ポストパンクを彷彿とさせる平淡なメロディをおどろおどろしく歌う背後でシンセサイザーが鳴り響くというもの。日本における軍服は過ぎたる昔のものとして昭和、あるいはそれ以前の時代の世界観と結びつけられる存在だが、他国では現在進行形どころか近未来的な音像と結びつくのだから面白い。2014年以来アルバムを発表していない彼らだが、新たな作品が望まれる。

 他方、80年代グラムメタルの血をひくバンドも現れている。2006年にアメリカで結成されたBLACK VEIL BRIDESは、レザーのジャケットにスタッズの打たれたベルトといった前時代のメタル的な衣装に、ゼロ年代に流行したエモボーイのスタイルーー目が隠れるほどの前髪を9:1の分量で分けた髪型と、目の下を黒く染めるメイクを併せたものーーが融合したビジュアルを打ち出した。楽曲も往年のスタジアムロックのスケール感を受け継いだキャッチーでアンセム的なサビに、デスボイスや低音弦の刻みを混ぜ込んだ新旧の融合型。近年は端正なイメージから脱皮しつつあり、骨太のギターに速弾きを導入したハードロック的なサウンドへと変化している。

 同じくアメリカ出身のMOTIONLESS IN WHITEは昨年5枚目のフルアルバム『Disguise』をリリースしたばかり。ブレイクダウンの多用やダウンチューニングのインフレーションなど、ジャンルの類型を追究しがちなメタルコアシーンにおいて独自の路線をひた走る稀有な存在だ。例に漏れずゴスなメイクを施した姿で活動している。初期から用いられているシンセサイザーによるメランコリックなアレンジは、楽曲をダークでコンセプチュアルなものに方向付けているし、生きることの息苦しさについて歌っていることで内向性に拍車をかけている。最新作ではよりヘヴィなサウンドへと舵が取られているものの、自己の苦悩の烈しさがありありと描かれた詞はかえって鬱屈とした世界へと籠る。ヘヴィネスが諸刃の剣に思えるほどの危うさは、ヴィジュアル系の持つ破滅的で儚いアジテーションに近い。

 そして、今最もポスト・マリリン・マンソンに近い位置にいるのが、ヘヴィメタル/ハードコアパンクをバックボーンに持つ米国のラッパー・GHOSTEMANEだと言っていいだろう。主要な音楽フェスにヒップホップアーティストとして出演するのみならず、フランスの大規模メタルフェス『HELLFEST』への出演も果たしている。こうしたジャンル横断型の活動がマンソンを思わせるのだが、白く塗られた血色のない肌に黒と赤のシャドウで縁どられた目元といったビジュアルもまたその系譜にある。楽曲ではトラップメタルと呼ばれる、重低音の強調されたビートにエクストリームミュージックのスクリームに通ずるボーカルが乗った、流行のスタイルを展開。一方で注目すべきはその‟ゴス”ぶりがサブカルチャー的な上辺だけのものではなく、「Nihil」では〈Cut me up to little pieces like you’re Ed Poe〉とゴシック小説の代表的作家エドガー・アラン・ポーを比喩に用いるなどリリックに正統な文脈を感じさせることである。

 マンソンのデビューから約25年、薄れつつあるゴスとヘヴィミュージックの融合の衝撃は、しかし今だにアンダーグラウンドで更新され続けている。様々な要素が合流し、絡み合い、編み出されていくヘヴィミュージックのテキスタイルは、今後どのような様相を呈していくのだろうか。(清家咲乃)

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